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50 壁画は語る

じれて、わかれて、つながって…メビウスの輪?

っとは、違うか。

タクは壁画をながめて関心していた。


「まぁ、大概たいがい歴史だな」


武将の絵に付されている名前らしき文字を指でなぞる。


「平将門かよ…それで、新皇国って安直だろ」

「えっと、ごめん。日本史は苦手」


ミュ・クーはミクの記憶を共有しているが、どうもこの手の知識はないに等しいらしい。


「日本が天皇を元首にして、ずーっと歴史をつないでるのはわかる?」

「それくらいは知ってるわよ」

「平安時代に何度か反乱が起きてるんだ」

「反乱?」

「そうそう。教科書的に言うと武士の台頭ってところかな」

「今でいう愛知県より東、特に伊豆から関東、東北は蝦夷えみしって言われた原日本人げんにほんじんがいたんだ」

「??日本人って単一民族じゃなかった?」

「あーー、そう言われてるけど、実際は結構大陸からの流入が多かったみたい」

「そうなんだ」

「俺の知識レベルだから正確ではないけど、ね」


ミュ・クーは面白そうに聞いている。

そこへ顔を見せた彩姫とナゴン、桜太夫、君乃、リュウ、雪村。


「タクの国の歴史かいな」

「うん。そうなんだけど、この壁画を見る限りつながってる感じがするんだよな」

「つながってるて、どういうこっちゃ?」


ミュ・クーがポンと両手を合わせる。


「確かに、この壁画が新皇国建国を絵にしたモノなら、その解釈が一番無理ないか」

「だろ?」

「時間だけの転移、跳躍と考えれば、その方が現実的ね」


ナゴンもうなずく。


「時間と空間、世界の理、因果律…それらを制御できたとしても、こんなに大勢を一気に転移させるのはもの凄い魔力が必要だものね」

「と思います」


そこに君乃が入ってきた。


「ドーマは?」

「ドーマの場合、自分だけいれば問題ないだろ。行った先で魔人なり魔獣なりを召喚すればいい」

「その魔人や魔獣はどこから湧いて出るんですか?」


ミュ・クーが解説する。


「あれは黒禁魔術。ドーマ自身の影から生み出すんだと思う」

「あんな数を?」

鼠算ねずみざんだね」

「??」

「影から大元になる魔獣、魔人を生み出す。出てきた魔獣とかの影からまた生み出して、それを延々続ける感じね」

「他の空間とか世界から呼び出してるわけじゃないんだ」

「私の知ってる黒禁魔術では、そんなこと出来ないわ」

「知られていない魔術があるってことは?」

「可能性はないではないけど、黒魔術そのものが失われた魔術だから、ドーマが知っていたかどうかは、ね」

「…成程」


タクが脱線を苦笑いしながら修正した。


「えっと、日本の天皇家は、もともとはバラバラだった原住民の部族?村?を長い年月かけて統一したんだけど、統一したのは大陸から来た渡来民族という説があるんだ」

「どうして?」

「まず日本は島国で、その狭い国土の中で原住民が部族単位で争っていたわけだけど、それより文化・文明で優位性のある渡来民族との間で主導権の奪い合いをしたみたいだな」


彼はう~んと知識を記憶からひねりだす。

そして紙を出してきて、ザックリと日本地図を描く。

京都を中心とする近畿―畿内きだい―と関東・東北の地域を丸囲いした。


「天津神と国津神の伝説ってのがあって、天津神は天皇の始祖で国津神はそれに敗北したって伝えてる。

 で、その天皇家を中心にした統治組織を朝廷って呼称するんだけど、彼らは島国全土に影響力を及ぼそうとするわけだ」

「ほうほう」

「で、その一環で蝦夷達はどんどん彼らの支配領域を朝廷に奪われて行く」

「そうなるやろな」

「とはいえ、原住民は土地についているから、朝廷の支配下に付く者も出てくるわけ」

「せやなぁ、長いものに巻かれるのも処世術やし」

「その中に朝廷の直属家臣や蝦夷と戦った連中が土着したりして、地方豪族…武家ってのが生まれたわけだ」

「畿内の朝廷にいるもんは文官、地方にいるんが武官…単純に言うたら、そんな色分けでええんかな」

「まぁ、そんな感じだね」

「その東国に土着した勢力の中に平将門ってのがいて、乱暴な言い方をすると、朝廷に反乱を起こして天皇に対して自分を新皇と名乗ったわけだ」

「ちょいまち、その朝廷ってのは日本に渡来した民族で、原住民の種族を従えた…ってことは、征服したっちゅうことやんな」

「まぁな、歴史なんて勝者の記録だからwww」

「ちゅうことは、反乱いうのも厳密には朝廷側からしたら、ちゅうことやね」

「だね」

「どこでも、いつでも、人間って生き物は難儀なもんやな」

「そゆこと(笑)で、その反乱の結末で将門は、この白い集団と一緒にこっちへ来たらしく見えるね」

「あの絵やな」


彩姫は壁画の一部を見た。

明らかに魔法陣の上に、将門らしき武将とその家族や近しい家臣らしき人々と白装束の一団が乗っている。


「とすると、建国に向けての試練は彼らをドーマが追いかけてきて、決戦したということですわね」

「あの絵からすると、そんな感じだね」


タクはふと思いついたように思い出し笑い?した。

ミュ・クーがそれを見て尋ねた。


「何笑ってるの?」

「ああ、んとな、新皇国所縁のメンバーの名前なんだけどさ」

「名前?」

「ああ、ショーモンという新皇国王族の姓は「将門」の音読み、クニカは国香で将門の叔父と、瀧夜叉は将門の娘の名前、君乃は将門の奥さん君の御前と似てるなって」


桜太夫が笑う。


「成程、今言った名前は新皇国で割と多く使われているものですわ」

「太夫は?」

「わたくしの母は新皇国ではなく、南部の出身ですの」

「そか、りょーかい」


タクは壁画に描かれた、新皇国建国の戦いに想いを馳せた。






【続】

伏線回収?

てか、前回でネタバレしてましたかね(笑)

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