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11 反転攻勢開始?

―湾岸エリア ダンジョン ボス部屋前―



曲がり角に全員が辿り着いて、待っていた偵察くんと合流。


「さて、どうするか、な」


なにか嫌な予感がするが、その正体がわからない。

転がっている石を放り投げたが、シン、と何事も起こらない。



どうする、か…

このままここで立ち往生してても、なにも起こらないけど、

これ以上仲間に怪我や死人を出したくないしな。



「床にも壁にも天井にも、罠らしきものはないです」


斥候くんの言葉に留守番偵察くんも頷いて同意した。

少しだけ曲がり角から顔を出して、正面に鎮座した巨大な扉を目視した。


「暗視スコープにも何も見えません。行きましょう!」


斥候くんの提案。



どうする?



ふと思い出してウエストバッグから催涙缶を引っ張り出した。

皆に合図して、ポイっとそれを曲がり角から放り投げる。

盛大に煙を噴射して缶が通路に転がった。



あーーー



煙の中に薄い緑色の線が走っているのが見えた。

あれに触るとなんか罠が発動しそうだ(苦笑)


「うわっ!あんなのあるんだ!」


美玖が少し涙目になりながら悔しそうにつぶやいた。

『タク』は線が走る高さを確認すると、壁面に印をつけて行った。


「匍匐前進…だな」

「すみません」

「謝ることじゃないさ、これは普通じゃわかんない」


斥候くんの謝罪を軽口で受けて、全員匍匐前進を開始した。




その後は順調だった。

扉前3m程度で緑色の警戒線?はなくなり、全員がそこにたどり着く。


それはスライド式の扉で、『タク』はゆっくりと開いていった。


ほんのりと部屋の中は見渡せた。

ホテルのホールほどのスペースに薄暗い照明。

『タク』は扉を半開のまま、見張りをふたり残して奥へ進む。

凸凹のない滑らかな壁面は明らかに人工的なものだった。


「ダンジョンの奥に人工的な部屋ってか」


三方向に扉。


「分散するか、ひとつずつ当たるか…」

「どうするの?」


さて、どうする?

俺の選択はひとつずつを虱潰しだな。


一旦小休止してレーションで軽く腹ごしらえして、右の扉から順に探索することにした。

些か食糧事情は心もとないが、ここは安全策をとりたかった。



長い廊下のようなトンネル。

いくつか扉のない小部屋が点在したが、魔物もいない。

シンっと静まりかえって、『タク』達の足音と衣擦れの音しかしない。

やがて行き止まり。


次に向かった中央の通路も同じ。

そして左の扉を開いた。


「!」


息を飲む。

足元がなかった。

上下に空洞が伸びていた。


「あ、やべっ!」


扉から頭を引っこめると、上方から何かが落ちてきた。


「エレベーターかよ」


扉の前に物体が制止する。

空洞に沿った形で円筒形と思われるそれは、まさにエレベーターだった。


「人数制限あり…か」


『タク』は部屋に四人を残し、自分と美玖のほか三人を連れて乗り込んだ。

制御盤にはボタンが二つしかない。


「上り下りだけか」


上方についているボタンが点灯している。


「ここが上階ってことか」


彼は下方ボタンを押した。

静かに扉が左右から閉じられ、それなりの速度で下降してゆく感覚があった。

十数秒で速度が緩められると停止して扉が開いた。


「おいおい…」

「ちょっと…ここ…」


『タク』も美玖も、一緒のメンバーも眼前の光景に絶句した。

そこにはおよそ想定外の…『異世界』?の街が一望できた。




―セイメイ老師 庵―



「確かに『卓』ね…若いけど」

「う~ん、『ミク』は綺麗くなったな」

「ちょ!」

「あ、そういうところは『ミク』だ」


『卓』がこっちに来ての初対面。

リュウの表情はあまり変わらないが、若干眉が寄っている。


「感想は後にしてもらってええか?」

「そうだった。ごめん」

「ま、しゃーないけどな。で、これからどないする?」

「まぁ、このままでいいんじゃない?」


『卓』はその場の面々を順に見回した。

『卓』側は彩姫、桜太夫、ユミンの四人。

『ミク』側は彼女の背後にリュウと屈強な武人ふたりが控えていた。


「無策?という訳やないやろ?」

「勿論。ていうか、今の状況を利用したほうがいい気がする。根拠ないけど(笑)」

「やっぱりその手が一番ええんやろうな」


彩姫は『卓』の体力が戻り、彼自身の武術を含めてこの世界の知識が蓄えられてから、何回となく話し合っていた。

今日は今後の方針を『ミク』側とすり合わせるため、秘密裏にここへ来てもらっての初会合ということだ。



「けが人や死人が出ない程度に小競り合いを続けてくれるかな?」


『卓』の発言に『ミク』が小さく驚きの表情を見せるのを横目に続ける。


「どこに目があるのかわからない。ただ、大きく俯瞰はできていないと思う。その証拠はここに俺がいても、彩姫たちがちょいちょいここへきても何も起こらない」

「ですので、ちょっと膠着した現状が動くところを、どこからか監視している目に印象付けしようということですわ」

「その間に、『卓』は少人数でドーマ所縁の場所を調査すんねん」


『卓』、桜太夫、彩姫が順に説明する。


「仕掛けはやっぱりドーマなのかな」

「状況はそう言っていると思うな。なにかほかの思惑とか心当たりはある?」


『ミク』の疑問の呟きに彼が尋ねた。


「…ないわね。了解よ」

「ご理解感謝」

「で、誰を連れてゆくの?」

「そこが問題。彩姫やユミン、桜太夫はメインメンバーで連れては行けないだろ?人選に困ってる」

「だよね…そしたらリュウを連れてってくれる?彼なら私の秘書みたいなポジションだし、表にはあんまり顔出してないから」

「ういっす」

「せやったら、ちょっと心当たりあるよって、その子を今度連れてくるわ」

「へぇ、洗脳解いたの?」

「自力で解けたみたいや」

「え?」

「きっかけはわからへんのやけど、えらい戸惑いながら必死で取り繕っとるんや」

「あー気の毒だな」

「しっかりしとるし、行動力もあるし考えもしっかりしとる。立ち位置も大勢に埋もれてるし、今回の任務には適任やね」

「ほう…」


桜太夫を見ると小さく微笑んで頷いた。


「じっくり観察すると、術の深度に濃淡があるのですわ。軍にとって重要な場所に身を置いている方ほど術のかかりは深いのですわ」

「なるほど。んじゃ、その線で行こうか!」


『卓』の明るい顔を、『ミク』は目を細めていた。





【続】

ドーマの狙いは果たしてどこに?

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