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猫被りは恋がしたい  作者: 茶ノ川
6/6

猫被りは学びたい

大人


様々な定義があるだろう。成人になった時から?恋を経験した時から?仕事をし出した時から?老後を考え出したから?


いいや違う


今本屋の前に立つ男が一人


大人になるため、少し遠いところに足を伸ばしやってきた。


彼は決意を固め、ドアの前に立つ


迎え入れられた店内で、ただ一箇所、角の方を目指す


「いらっしゃいませ〜」


挨拶を気にもとめず、どんどん進んでいく。


「これか、、」


八代は真っピンクなコーナーの中から一冊の本を手に取る


「明らか女みたいな顔してんじゃねーか」


そう、彼は前回自分の知らない知識をひけらかしている愛川に負けん気が発揮され、知識を蓄えようと少し離れた本屋にきたのである。


ペラペラとページをめくっていく。


負けず嫌いな八代は恥を忍び、今日、ようやく大人への一歩をーー


「、、いやーえっちだね〜」


「!?」


左耳のそばに息がかかり、八代は弾かれたように距離を取る


見ると、デニムに白シャツをインしたカジュアルの愛川は腕を組み理解を示すようなジェスチャーをとっている


「いや〜この前はそこまで知らないみたいな雰囲気だったからもしかしたらと思ったけど。まぁでもお母さんは寛容だからね!男の子だもんね!」


「ちっっげぇから!」


「はいはい、大声出さないの。」


愛川は一丁前に嗜める口調の後、奪った本をめくりながら八代に近づいていく


「ほらほら〜、こことかヤバくない?見ないの?ホラ。本当は見たいんでしょ?」


やけに艶かしい声が八代の若さを掻き立てるが、、


「見ないから!てか、なんでここにいんだよ。学校からは遠いだろ?」


「別に。ただの買い物。そしたらやけにソワソワして浮いてる人がいたから追ってみたの」


「誰だその不審者」


最近は何かと物騒だからな。と八代は頭をかく


近くの愛川は乾いた笑いをあげながら、


「逆にどうしてここに?ホントにエロ本探し?」


「な訳ないだろ!ただの人生勉強だ。知らないジャンルの学習も欠かさないようにと勉強熱心な俺の意欲からくるもので」


グダグダと言い訳を並べる八代を横目に愛川は人知れず不気味に笑う。伏せた顔を上げると今度はいつもの様子になって言う


「ならさ――!」


「どこにいくんですか?」


急に現れた黒ワンピースの初瀬に二人は呆然としてしまう


「なんで初瀬さんここに、、?」


言われると初瀬は恥ずかしそうに顔を赤め目をふせる


「べ、別に八代くんのスマホとGPS繋いでるとかじゃないですからね!」


「その発想はなかったよ!?」


(本当は愛川さんの方にですけど)


初瀬は愛川の謎の運の良さ(?)を疑った結果、休日の愛川がもしかしたら八代に合うのではないかと、この日のために見張っていたのだ。


(愛川さんがこんなに長く本屋さんにいるわけなんてないと思ってきてみたら、、どこかでお灸を据えないとですね、、)


他人には気づかれないように、けれど内心ではピキりながら初瀬は問いかける


「逆になぜ二人は一緒に?デートですか??」


「嫌だな〜そんな訳ないじゃん。ただ私が買い物してたら蒼生くんを見かけたんだよ。ね?」


「まぁ待ち合わせたわけではないな」


「そもそもエロ本買うところに呼ばないよね!」


「えろ!?」


(え、え、えぇぇ!?ろ本!?つ、つまりそれは八代くんの嗜好がわかるわけで、、!ぐっと距離を詰めることもできる!!でかしましたよ、愛川さん!)


「それはどちらに?」


「これだよ!」


愛川は初瀬に件の本を突き出す


(男の子〜!?!?そこにはどうしても越えられない壁が、、!いや、、最近はやりようによってはどうにでも、、)


まさかの本を目の前に考え込む初瀬に、誤解を解こうと八代は付け加える


「これはあくまでも勉強のためだ。でも、、まぁ理解はできなかったけど」


「過激だったでしょ?」


「まぁ、、そうだな。読んでる人は性欲やばそうだな」


(もうお嫁に行けないッ!!)


「まぁ間違いないだろうね」


(本当にブチますよ?)


互いに心に傷を負った二人が下を向いていると、愛川は閃いたように明るい声を出す


「そうだ!今からみんなでお出かけしよっか!」


(愛川さん、愛してます!!)


二人は愛川に腕を取られ、本屋を後にした。

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