マコちゃんとリコちゃん
「うわ~…………あっぶね~」
意気込みは良かったが今の俺にはそれほど何か
出来るわけではなく。ひたすらバドリーと言う
悪魔の攻撃を何とか躱している。
「ニゲロニゲロ、ムシケラハジメンニハイツク
バッテイレバイイ」
この野郎~腹立つな!
しかし、怒るなむしろ冷静に行動しないと
あっという間に殺される。
「オリャーオリャー」
その辺の物を投げ牽制
「ニゲロニゲロ!」
「えへ」俺はニヤリと笑う。
「何だこれは!?」
身体に大量のお札が付いていた。
「ハッハッハ~油断大敵だ~
休み時間にこそこそと作っておいたお札だ~
動けまい!」
バドリーは完全には止まっていないが
かなり動きにくそうにしている。
※このお札はじいちゃんに頼まれている。
売り物のため後日必死に書く羽目になる。
何にしてもこれで時間が稼げる。
良しこのまま逃げてしまおう!
俺はドアに向かって走ると突如足に
負荷がかかり転倒。
「痛ったーなんだよ」
足を見ると手が足を掴んでいた。
悪魔は影のように腕が伸び、足を掴んだのだ。
「アッアアアーー」
すごい勢いで引っ張られる。
滑るように俺はあいつ目の前はまで連れていかれた。
「ハ~ハ~ニガサナイヨ~」
「わ~助けてくれ~~~なんちゃって、ペシ」
悪魔の額にお札を貼ると
「アガ~~~」
苦しみ出す悪魔
「取って置きのお札だ、俺が書いたのとは
比べ物にならないだろう」
「クソガキガ~」
黒い弾丸となりやつの腕が俺の腹に直撃
「ガハッ~」さっきのと違いかなり重い一撃
そのままドアまで吹っ飛んでいった。
「ゴホゴホ」
ヤベ~今ので肋骨がいったかも
動くと激痛が走る。
それでも、俺は部屋の外に何とかはいでて
歩き出す。
…………▽
その頃、湊斗達は
2F 山田不動産に逃げ込んだ。
「一旦ここに隠れよう」
湊斗はしゃがみ人から見えないよう
机の影に隠れる。
最初は会議室みたいな小部屋に隠れようと思ったが
もしも見つかったら逃げ場がないから
見つかりやすいが事務所の一番奥の机の裏に
隠れた。
「リコちゃん、大丈夫疲れてない。
あ!でも幽霊だから疲れないのかな?」
「さくら、変なとこで疑問を持たなくて良いわよ」
「うん!大丈夫だよ。疲れてない。
それよりもお兄ちゃんは?」
「筆くんは………その」
さくらはうまく話すことが出来ない
「リコちゃん、お兄ちゃんはね!今マコちゃんを
助けようと頑張っているの!………残念だけど
私達は邪魔になっちゃって離れたんだ、でも
大丈夫だよ。お兄ちゃんが助けるって
言ってたでしょ!」
「うん、でも心配なの」
「それで、どうするしばらくは隠れるか?」
拓海は疲れたのか動きたくないと
顔に出ている。
「は~そうだな、何にしても今は動くのは
得策じゃないだろう。見つかるのはヤバイからな」
みんなもそう思ったのか無言で頷いた。
「お姉ちゃん達はマコちゃんと会ったですよね?」
「うん、マコちゃんスッゴくいい子だったよ
リコちゃんに会いたいって言ってた」
そう言ってさくらは暗い顔に
「マコちゃんに会いたいな~」
リコちゃんからこの一言が出たことで
さくらの涙腺が爆発リコちゃんを抱き締めて
「絶対に会わせてあげる」と何度も言う。
「さくらって自分が辛いことがあっても
泣かないけど、悲しい話とか聞くと
すぐ共感して泣くからな~」
陽菜乃がしみじみと言うとさくらが照れて、
「そんなこと言わないでよ!」と一言
「カタカタカタカタ」
「!? 何か音しなかったか?」
「あ~俺にも聞こえた。近くになんかいるか?」
拓海と湊斗が周りを見回す。
「どうしたの!」
「お前達はなにも聞こえなかったのかよ
音だよ音、何かカタカタ言ってなかったか」
「ごめん、気づかなかった」
「カタカタカタカタ」
「………………………………」
全員が目を合わせ静かに頷く。
おかしい誰もいないんだけどな~
「キャー」さくらの叫び声がこだまする。
「な、何よこれー」
陽菜乃がさくらの足を見ると
さくらの足クビを手が握りしめている。
陽菜乃は咄嗟にその手を掴み、ぶん投げる。
「ガタンコト」手が棚に当たり落ちる音がした。
「さくらだいじょ………」
「カタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカ
タカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタ
カタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタ」
そこら中から音がしだした。
「何、何が起こるのよ」
日頃から冷静な陽菜乃が
パニックになっている。
さくらは陽菜乃の手を握ると
それに気づきさくらと目を合わせると、
『落ち着いて、大丈夫だから』と
訴えかけているように陽菜乃は感じた。
さくらに促されるように陽菜乃は立ち上がった。
周りを見ると手や足がトコトコ歩き回っている。
「ウワァ~」気が付いた拓海が叫び
走って逃げようとするが、即座に湊斗が
腕を掴み止める。
「はなせ、はなせ、はなせ」
「拓海良く見ろ。あそこに突っ込む
つもりか~」
大声で叫ぶと、拓海は改めて
行き先を確認すると
「おい、なんだよあれ」
拓海は顔をこわばらせる。
手から腕、腕から肩と徐々に身体が現れる。
「クルシイ」「タスケテ」「コロシテヤル」
様々な声が飛び交い、不協和音となって
聞いているだけで気が可笑しくなりそうだ!
「どうしよう!逃げ場がない」
さくら達の周りには肌が朽ち骨が剥き出しに
なっている亡霊が10人以上
ゆっくり一歩二歩と近づいてくる。
さくらは覚悟を決める。
「みんな私が突っ込むから
タイミングを見て逃げて!」
「なに言ってるのよ!」
陽菜乃は即座に止めにはいるが、
それを振り切りさくらは走っていた。
『お母さん私に力を貸して…………』
胸に付けているペンダントが
少し光ったように見えた。
さくらに亡霊が襲いかかる。
「うちの む・す・めに~ なにするのよー」
突如乱入、一花さんの飛び蹴りで
亡霊が3人転倒、隙間が出きる。
「さくらーみんな~走れ」
俺は部屋の入り口から大声で声をかける。
さくらはそのまま入口に走り続くように
みんなも走る。しかし
「うわぁー助けてくれ~」
一番最後に走っていた拓海の足が
掴まれていた。
「ウワァ~放せ放せ放せ~」
亡霊の腕を蹴るが離れない。
俺は半べそ状態の拓海の前に立ち
「放せや~」亡霊の腕に印刻むと腕が溶け
掴んでいる腕が緩む。
拓海の手を掴み走って逃げる。
…………▽
5階 階段踊り場
「みんな良かったよ。なんとか無事そうだね」
俺はみんなの姿を見て大きな怪我をしていないことを
確認してホッとしていると、
「なに言ってるのよ!筆くんが
怪我だらけじゃないの」
さくらさんが心配な顔で怒鳴るように言われる。
「うん?そう言えば結構ボロボロにされたな!
でもこのくらい大丈夫だよ!」
額からタラ~と血が垂れる。
「どこがよ! ちょっと待ってなさい!」
さくらは鞄から包帯や絆創膏等を出し
テキパキと応急処置をする。
「さくらさん、うまいね」
「私子供の頃から良く擦り傷とかちょっとした
怪我をしょっちゅうしていたから、このくらいなら
なれてるの」
「…………ありがとう!」
「それはこっちの台詞だよ~」
さくらが治療してくれているのを見ていると
トコトコトコとリコちゃんがやって来た。
「お兄ちゃん………マコちゃんは?」
「リコちゃん、ごめん!まだマコちゃんを
助けることが出来ていないんだ」
リコちゃんは首を横に振り
「お兄ちゃん、ありがとう!リコとマコちゃんの
為に、一杯頑張ってくれたんだね!」
リコちゃんは笑顔で俺に対応してくれたけど、
正直自分の不甲斐なさに怒りを覚えていた。
でも、今俺がやるできことは
「リコちゃん、マコちゃんを助ける。
だからもうちょっと待ってくれ!」
そう言って俺は笑うのだ!
リコちゃんはキョトンとした表情のあと
満面の笑みを返してくれた。
「筆どうすれば良い、このままじゃ
俺達がもたないぞ!」
湊斗はどうやらさっきのことで
だいぶ参っているみたいだ。
いつもの冷静さが欠けている。
「うん、みんなも疲れているよな!
正直俺も早く寝たいわ。でもまずはここを
出ないと話しにならんからね。
取り敢えず任せてくれ、布石は打ってある」
「布石?なんか策があるの?」
陽菜乃が期待の目を向ける。
「ま~そんなところ、ただ直ぐには無理かな
取り敢えず待ちだ!」
「おいおい、待ってくれよ。ここに居たら
いつあいつらがくるか分かったもんじゃねいぞ!」
拓海のイライラも限界にきているのか、
怒った表情で俺に突っかかってきた。
「おい、やめろ拓海今は争ってる時
じゃね~ぞ。止まれ!」
「でもよ!俺はもう限界なんだよ!
何が幽霊に会えるかな~だ。
ばかみたいじゃねいか」
陽菜乃は拓海を睨み付けるが
即座にさくらさんが間に入り止める。
「拓海悪いな。俺も直ぐに出たいんだけど
出口がはっきりしない。今探してるから
もうちょっと待ってくれ」
「筆そんなことは分かってるんだよ。
それをどうやって探すかって言ってるんだ!」
「まこちゃんに発振器みたいなものを着けておいた
恐らく暫く待てばそこに行くはずだ!
奴にとってはその場所がこの世に止まる為の
契約の間だ。必ずそこに行く。それに
そこがもとに戻るための出口があると思う。
だから待ってくれ拓海」
「マジかよ!出口があるのか?よっしゃー」
「拓海って本当に単純ね!」
ボソッと陽菜乃は愚痴を言った。
「何にしても待つしかないならここで休憩しよう。
もちろん警戒はしながらね!」
俺はみんなから少しはなれた位置で腰を下ろした。
「ずいぶん疲れてそうね!」
「一花さん。それはそうですよ。
今までこんなに連続で霊やら悪魔なんかと
闘ったことないですから疲れました」
「まったくダラシないわね!」
「一花さんは何でそんなに
元気なんですか?普通あれだけ動き回ってたら
疲れるはずですよ!」
「それは私では死んでるし霊だから
疲れないでしょ」
「確かに霊は身体がないから疲れないけど
一花さんみたいに他の霊に接触できない
もしもそれをすれば魂の力を消費するから
疲れるはずなんだ」
「ふーんそうなんだ、でもどちらかと言うと
力が漲るんだけど!」
「え!?そうなんですか!」
どうしてだろう。正直皆目検討もつかないや、
ま~一花には何度も助けて貰ったし
良い方向で考えるか
「それじゃ何かあったら宜しくお願いします」
「ふっふ、任せなさい!」
腕を胸の前に組嬉しそうにしている一花さん
本当に死んでいる何て思えないや!
「一花さんすいませんが周りの確認を
お願いします。ちょっと寝ますね!」
「はいは~い。任されました!」
少しでも回復に努めないとな、俺は目を瞑った。
…………▽
「う~ん………」
起きると目の前に一花さんが居た。
「一花さんあんまり見ないで下さい
なんか恥ずかしんですけど」
一花は眉を細める。
「私、さくらだけど?」
「……………( ・◇・)?」
わーヤベー寝ぼけて見間違えた~
さくらさんと一花さんにそっくりだから
勘違いした~どうしようどうしよう
いやまてここは冷静に冷静にだ!
「あ!おはようさくらさんなんか寝ぼけちゃって」
「一花って呼んでたよ!
私のお母さんの名前なんだけど?」
「…………」ヤベーがっつり変な目で見られている。
「それはですな~」
なんか言い訳しようと考えていると
「大変だ!亡者が階段を昇ってくるわ
どこかに逃げないと!」
陽菜乃が気がつきみんなに
逃げるよう促す。
「とにかく俺は逃げる!」
拓海は階段を昇っていった。
「おい待て、どこに行くつもりだ拓海~」
湊斗は声をあげ止めるが
拓海はそれを無視して階段を昇っていった。
「あのアホがー」
湊斗が追いかけようとすると、
陽菜乃が手を掴み止めた。
「たぶん戻ってくるから待ってましょ」
拓海を階段を昇る途中違和感に気づいた。
おかしいさっき5階に居たんだから登っても
屋上しかないはずなのに俺はまだ昇り続けている。
「あーそうだここの階段はループしているから」
拓海は上を見上げると亡霊が
わらわらと居た。
「ぎゃー助けてくれ」
拓海は再び降りて行くのだ
「ほ~ら戻ってきた」
「は~は~は~」と息を切らせて降りてきた拓海
「あんたね~勝手な行動をしないでよね
纏まって行動しないと危ないでしょ!」
「ゴメンゴメン」と拓海は陽菜乃さんに謝る。
「でもどうするんだよ!ゆっくりだけどあいつら
登って来てるんだぞ!」
「あれだけ遅いなら大丈夫!慌てちゃダメだよ!」
さくらさんも陽菜乃さんと一緒に説得するが
「タッタッタッ」
さっきより軽快な足取りで階段を昇る音が聞こえる。
「うそ…………」陽菜乃さんが驚く
みんなはその目線の先を見ると美樹さん達が
昇ってきているのだ。
「美樹さん……」
少し見ない間に美樹さん達は
まるでゾンビのように変わり果てていた。
「マアテ~ヨ」
「イヤダ~シニタクナイ」
「オマエラモシネ~」
彼らの姿はまさに恐怖しかない、
みんなが動揺している中
「見つけたかもしれない」
「筆くん?」
「みんな~着いてきてくれ出口が
見つかったかもしれない」
「筆それ本当か?」
「絶対じゃないけど!もう待ってられない!
奴の動きが完全に止まった。まずはそこに行く」
筆は5階のフロアの中へ走る。
みんなも筆について行った。
「ここら辺だ」
「ここって更衣室?」
周りにはロッカーが並んでいる。
「筆ここで良いんだよな?」
やや不安な気持ちで声をかける湊斗
「うん、どうやらこの壁の裏に空間があるみたい
みんな手伝ってこのロッカーを退けるよ!」
急いでみんなとロッカーを退けると
そこにはしゃがまないと入れない位
小さな扉があった。
「ホントだぜ、あったあったぞ!」
拓海が喜ぶなか、みんなはあまり
うれしくなさそうだった。何故かそれは、
扉には不気味な模様が描かれていたからだ。
その扉は血のように赤く、蛇のような模様が描かれ、
さらに中央にドクロが飾ってあった。
「なにこれ気持ち悪い………」
さくらの顔色が悪くなり、陽菜乃が
抱き締めて落ち着かせる。
「よっしゃー早く出ようぜ」
拓海がドアに手をかけ開けると
「うわぁー」なんだこれはくっさー
みんな鼻を摘まんで匂いに耐える。
「死臭だね。ここで人が亡くなっている」
そうこの中でマコちゃんとリコちゃんが………
匂いを何とか我慢して扉を潜り部屋に入る。
そこは15畳程の広さの部屋に祭壇とベットが
置いてあった。
ベットにはマコちゃんが寝ていた。
「マコちゃん!!」
リコちゃんは走って行く。
「マコちゃん!マコちゃん!起きて」
マコちゃんの身体を揺らして起こす。
「う~ん………お・ね・え・ちゃ・ん?」
「そうだよマコちゃん、お姉ちゃんだよ」
「エ~ンお姉ちゃん会いたかったよ」
涙を流し感動の再開を果たし、
みんなもその姿を見て思い思いの表情をする。
俺も凄く嬉しく感じているが、
だからこそあいつは邪魔しに来る。
「マコちゃん良く頑張ったね。偉いよマコちゃん!」
頭を優しく撫でなから褒める。
マコちゃんは笑顔で嬉しそうだ!
……………来る!
突然マコちゃんの顔が豹変、陰湿なニヤリとした
笑顔に変わりリコちゃんの首に手を当て絞める。
「だんて……でごちゃん」
首を絞められさらに持ち上げられ
苦しそうにもがくリコちゃん。
『邪魔すんな』
僕は筆を手に持ち、あるだけ全ての力を使い
『喝!」大きく筆を水平に横に振る。
「ナンダト!!」
リコちゃんがまるで引っ張られるように動き、
叫びと共にリコちゃんの背中から黒い物体が
飛び出て壁に張り付く。
「リコちゃん聞こえたら返事をしてくれ
大丈夫か?」
「お兄ちゃん?私は大丈夫だよ?」
「マコちゃんが正気に戻った」
勢い良くマコちゃんを抱き締める。
リコちゃん、マコちゃんはまだ良く分かって
ないみたい。その方が良い。
突如祭壇から強い光と地面がガタガタと揺れ始める。
「異界が壊れ始めたか!………脱出するなら今だな!」
「みんな今から全力で1階に降りて外に出ろ
今なら出られるはずだ」
「分かった!みんな急げ」
湊斗が先導して走る。
「ちょっと待って筆くんは?」
「う~んお相手しないといけないみたいなんで
さくらさんは先に行ってくれる」
黒い塊が徐々に形をなしていく。
「ダメだよ筆くんも逃げよう!」
「さくら!筆くんなら大丈夫だよ!
だから………行こ!」
陽菜乃がさくらの手を取り
説得してくれている。
「さくらさん大丈夫だよ!俺には秘策あるから
先に行ってて!」
「ほら行くよ!さくら」
引っ張られるようにさくらも離れていった。
「本当に秘策あるんでしょうね!」
「一花さん今回はさくらさんのところに
行って下さい。もしかしたら亡霊が居るかも
知れない。分かりますね!」
「いーいーわね!絶対に生きて戻って来なさいよ!」
一花さんは納得できないけど
娘さんが心配なんだろう。今回は言うことを
聞いてくれた。
「ふ~お前は諦めてくれないのか悪魔」
「オマエヲクッテヤル」