死体の謎と成仏する条件
日記から現れたのは、小学生低学年くらいの
両側を三つ編みにした可愛らしい少女だった。
「本当にマコちゃんを助けてくれる?」
目をウルウルさせながら見上げてくる少女
筆は膝をつき少女と同じ目線に立つ
「おうよ、マコちゃんに会いに行こう!
大丈夫だから俺に任せてρ(・ω・、)」
「うっ、うっ、エ~ン(>_<)」
少女は泣き出した。
筆は少女を抱きしめ頭を撫でる。
しばらくして少女はやっと落ち着いたようで
笑顔で微笑みかけている。良かった。
「うぅぅ~しくしく」
あれ?ここでも一人泣いてる人が、
「なんで一花さんまで泣いてるんですか?」
「え!、分かんないけどリコちゃんが
可愛そうだなって思ったら悲しくなっちゃって
良いじゃない別に!私は感情移入しやすいの!」
ふんと顔を背けて恥ずかしがる一花
「本当に一花さんは可愛い人ですね!」
一花さんの顔がみるみる赤くなり
「大人をバカなするんじゃないはよ!バカ~」
俺とリコちゃんは一花さんを
見て笑ってしまった。
その後、頭にたんこぶが出来てしまった。
痛いです。(/´△`\)
「おにちゃん大丈夫?」
リコちゃんが下から覗き込んで心配そうにしている。
「アハハ、大丈夫、大丈夫」
少し一花さんが
ばつがわるそうな顔をしていた。
「リコちゃん教えて欲しいんだ
ここで起きたことを
マコちゃんを助けて
リコちゃんも救う為にね!」
リコちゃんは大きく首を振り頷いてくれた。
それからリコちゃんはここで起きたことを
話してくれた。
「うわーん、えーん、えーん~~」
一花さんがギャン泣きである。
正直どうして良いかわらかない。
今はリコちゃんを抱きしめて、
よしよし撫でまくっている。
リコちゃんも困惑顔をしている。
「リコちゃんいい子やねホントに……うっ、えーん」
しばらくしてやっと一花さんが
落ち着き、今度は
「筆くん!
リコちゃんとマコちゃんを助けるわよ~」
「よっしゃ~」
燃えている。気合いが入りまくっている。
この人、感情豊かだな~
「ほら行くわよ!!」
俺はぐいぐいと引っ張られていく。
『4階 日曜食品』
「筆君、勝手にどこ行ってたのよ!」
さくらさんが頬を膨らませて怒っている。
「そうだぞ!心配したんだからな!」
湊斗が腰に手を当てこちらもお怒りだ!
「皆、ごめんな!ちょっと色々あってさ!」
「それで、なんか分かったの!」
陽菜乃さんが腕を組んで難しい顔で
こちらを見ている。
「おいおい!見つけたのかよ!その子」
拓海がリコちゃんに気づいたようだ。
……………気づいた?
「拓海見えるのか?」
恐る恐る聞いてみると
「ホントだ~可愛い子がいる!」
さくらさんがリコちゃんに近づいて行く。
あ~完全に見えているじゃん
恐らくここの特殊な空間がそうさせるんだな!
「その子が見つかったってことは、
脱出する手立てが見つかったの?」
陽菜乃はさっきのまま難しい顔をしている。
「状況は少し分かったかな!でもまだ脱出方法は
わからない。けど必ずなんとかする」
今度はキョトンとした顔に変わり
「へ~なんか変わったねさっきまでと意気込みが
違う感じがする」
「ま~ちょっと気合い入ったから………
俺ってそんなに顔に出てます」
「フフッ結構出てるよ!」
俺はついつい顔をさわって確認してしまった。
「でも見つかって良かったぜ!
なんにしても一歩前進だな!」
「あ、拓海確かに一歩前進はしたけど、
この子は違うんだよ。俺達が捜してるのは、
妹のマコちゃんだ!ちなみにこの子は
リコちゃんだよ」
「え、違うのかよ!がっかりだぜ!」
頭に手を当ててがっかりする拓海
「ちょっとあんたはデリカシーってものがないの、
そんな言い方したらリコちゃんに悪いでしょ!」
「あ、いやそう言う意味じゃ無いんだよ。
悪いなリコちゃん許してくれ!」
拓海はリコに頭を下げると
リコは「良いよ」と返事をした。
さくらさんはリコちゃんは良い子だねと
声をかけ頭をなでなでしている。
一花さんに似ている。
「そう言うことならマコちゃんを捜さないと
いけないわけね!どこにいけば良いのかしら?」
「リコ、マコちゃんがいるところ分かるよ!」
「え、ホント!みんなリコちゃんがマコちゃんの
いる場所分かるって~」
みんなはそれを聞き大喜び、希望が少し見えてきた。
「ね~筆くん!」
「どうしたんですか?一花さん」
何故か難しい顔をしている。
「私はどうして見えないの?」
「え!?いやだって幽霊だし!」
「そんなこと分かってるわよ!私はどうして
リコちゃんが見えて私が見えないのって
聞いているの!」
「あ~そう言うことですね。なるほど確かに、
はっきりとした理由は分からないですけど
たぶん、リコちゃんは長くこの空間にいるから
結びつきが強く出て周りにも反応が強く出る
もしくはリコちゃんがこの空間を形成をする
重要な一部だからですかね!」
「なんか良く分かんないけど、私は見えないわけ?」
「ま~端的に言えばそう言うことです」
「がーん」と音が聞こえそうなくらい
落ち込んでいる一花さん、
たぶん娘さんに会いたかったんだろうな!
「お兄ちゃん、なんでお姉ちゃん元気ないの?」
「リコちゃん、一花さんはちょっと
ショックなことがあってね大丈夫すぐ
元気になるよ!」
「元気になると良いね」
「そうだ話の続きなんだけど、マコちゃんは
今どこにいるの?」
「えっとね3階オモチャが沢山あるところ」
「オモチャ?」
…………▽
『3階 ハッピーメーカーズ』
なるほどオモチャの会社も入っていたんだ。
ここでマコちゃんは遊んでいるんだな!
「お兄ちゃん、私ここで待ってるね!」
「うん?どうしてマコちゃんここにいるんでしょ?」
「うん、でもリコが行くとマコちゃん逃げちゃうの
たからいかない方が良いの」
悲しそうに顔をうつ向かせて必死に
耐えているようだ
「う~ん………そっか分かったよ!
俺がマコちゃんを説得して連れてくるから
リコちゃんはここでちょっと待ってて」
筆は優しい声で言った。
「うん(>д<)」
リコちゃんは嬉しそうに返事をした。
「ここにマコちゃんがいるのか~」
湊斗 恐る恐るドアを開けて入る。
「そう、マコちゃんを絶対に見つけるんだから」
さくらさんは怖がっていた感じがなくなり、
なんとしてもマコちゃんとリコちゃんを助けると
強い思いで気合いが入りまくりだ。
本当に親子だね~一花さんにそっくりだ
筆はついつい笑ってしまった。
「ん?筆くん、何か私の顔見て笑わなかった」
「へ、いやそんなことないぞ!」
「本当に~何か目をそらされた気がするんだけど!」
「あれ、君達もここにいたんだね」
「真司さん達もここにいたんですね
もしかしてマコちゃん見つかりましたか?」
「マコちゃん?例の女の子の名前かい」
陽菜乃はハッとした。
そう言えば真司さん達は知らないんだっけ
「そうです。マコちゃんを捜す前に真司さん達に
説明した方がよさそうだな!」
湊斗は説明を始めた。
…………▽
「ふ~ん、例の子がマコちゃんって言う名前で
ここにいる可能性が高いわけね!」
「へ、やっとかよ。歩き疲れたが
あと少し我慢するか」
美樹さんは思ったよりタフなのかな
疲れてないみたいだ。
逆に勝也さんは気だるそうに
歩いて疲れが見える。
「おい!さっさと見つけて帰るぞ!言いな!」
勝也さんが全員に強めの口調で言う。
この一言で周りの空気が一気に悪くなる。
しかしなにか言っても面倒になると思ったのか
誰もなにも言わない。
中を捜し始めた。
これだけ人数がいるからある程度離れて
みんなで捜すことにした。
「筆ここにいると思うか?マコちゃん」
「なんだ、リコちゃんが嘘をついているとでも」
俺はちょっとムッとして答えてしまった。
「あ、いや勘違いしないでくれ、そうじゃなくて
あんまり静かだからホントにいるのか不安でさ」
「そう言うことね。急にリコちゃんを
疑うようなこと言うから怒っちゃうとこだったよ」
「へ!!さくら、そんな訳ないだろ」
突如さくらさんが話に入ってきた。
リコちゃんのことを悪く言われたと思い
ムッとした顔をしており、あわてて湊斗が
弁解している。
それにしても確かに静かすぎる本当にいるのか
疑いたくもなるか、周りにはオモチャや
設計図などの紙で一杯だ。もうちょっと
片付けておいて欲しかったな。
オモチャを持ってはどかして捜す。
その繰り返しを俺達はしていた。
さくらと陽菜乃がこちらに歩いて来る。
「筆くんちょっと聞きたいんだけどさ~
リコちゃんってもしかして幽霊?」
横で聞いていた。さくらがビクッとして
「陽菜乃なに言ってるの!」
「そうだぞ陽菜乃、お前がオカルト好き
なのは分かるけど今はそんなこと言ってる
場合じゃないぞ!」
2人をよそに真剣な目で見つめて来る陽菜乃
何かあるのか?
「は~そんなに真剣な目で見られると、黙ってるのは
難しいな、言わない方が良いと思ったんだけど
そうだよリコちゃんはもう死んでいる!」
「え!?………………」
「マジかよ!」
「やっぱりそうなんだ!すごい!」
「先に言っておくが陽菜乃さん今は楽しんで
いる場合じゃないぞ」
「分かってる。ま~ちょっとワクワクしてるけど
私達の命がかかってるんだから、変なことは
しないよ」
「それなら良いけど。俺もここまでの規模の
異界には囚われたことはない。
出られる保障は無いんだからな!」
「異界(* ゜∀゜)、ね~何々異界ってなに~」
「おい、言ってるそばから、そんなにワクワク
した顔するなよ!
真面目にしろって言ってるんだけど!」
「でもよ!それって知っておいた方が
良いんじゃないのか?」
ハ~とタメ息をついてから説明を始める、
「異界には必ず核となる存在がある。
その存在が俺はマコちゃんだと思ってる」
「その核を何とかすれば異界から
脱出できるってことね!」
「そうだ、マコちゃんは今闇に囚われているはず
だから正気に戻せばもとの世界に戻れるん
じゃないかと思ってる」
「筆くんはマコちゃんを救おうと
しているんだね!」
さくらさんの質問に俺は頷いた。
リコちゃんが幽霊だとショックを受けていたが
今の話を聞いて立ち直ったみたいだ。
「キャー」
「この声美紀さんだよな!
なんかあったんじゃねのか!」
拓海がみんなに声をかけ
全員で声の聞こえた場所に走って向かう。
…………▽
「どうしたんですか!」
扉を開けると、どうやらオモチャをしまっている
倉庫みたいだ、そこらじゅうにオモチャが
転がっている。
美紀さんは腰を抜かして倒れているが
怪我とかはしていない。
さらに奥を見ると、勝也さんが
オモチャをどかして何かを見つけたみたい
すごく驚いた顔をしている。
「勝也さんどうしたんですか?」
湊斗が覗き込むように声をかけると
「うわ~」
湊斗もそばで膝をついて驚く。
「し、死体だ、死体がある!!」
指をさして俺達に訴える。
俺達は気合いをいれて見ると
膝を抱えて縮こまって隠れるように
亡くなっている死体があった。
「マジかよチクショウまたかよ!」
湊斗は悔しそうに小声で言った。
「どう思う。筆くん、この死体」
陽菜乃さんはこちらを見て小声で
聞いてきたが、もしかしたら何か引っ掛かることが
あったんだろか?
死体を見てみると
今までで一番損傷が少ない。
隠れていたからだろうか?
派手なネックレスをつけて派手めな金髪
身長は結構高くてガタイもよさそうだな!
「は~陽菜乃さん、君が思ってること
俺も考えていた。実はみんなから離れた時に
死体を見つけている。女性の遺体で見覚えがある
ネイルをしていた」
小声で陽菜乃に話していたが、
さくらさんが気になって来た。
「それってどういう意味なの筆くん」
「う~ん」と唸りすぐには答えず
俺は周りを見渡す。
そして、勝也さんを見て
「やっぱりそうなのか!」
筆は少し残念な顔をして立ち上がる。
「筆くん?」
「どうした!怖い顔してるぞ」
全員が俺を見ている。
いや、未だに一人だけ立ち直れず
こちらを見ていない人がいる。
勝也さんだ!
「勝也大丈夫ですか?」
筆が声をかけても反応がない。
「どうしたの勝也?」
「勝也大丈夫か?」
真司さんと美紀さんが
心配になり声をかけると
「な~美紀、真司、お前達さ
ここに来た覚えないか?」
「は~なに言ってるのボケたの」
「僕は来た覚えはないけど、それに来てたら
この遺体に気づいているんじゃないかな!」
「俺はさ~ここに来た気がするんだよ。
なんでかよくは覚えていないけど、
絶対にここに来たことがある………気がする」
美紀さんと真司さんが困惑な顔をしている。
「は~ふ~」
俺は心を落ち着かせる為、深呼吸をする。
何回やっても慣れないや、こんなんだから
じいちゃんに叱られるんだよな~
「人は亡くなって成仏するのに必ずしないと
いけないことがあります」
「筆突然どうし………」
真剣な顔で陽菜乃が湊斗を止める。
「それは、自分が死んだことを認識、
認めることです。普通は死ぬ瞬間を
覚えていることが多いので自然と成仏します。
しかし、事故等で自分が突然亡くなったり、
自分の遺体を見なかった場合、すぐには
認識できず彷徨うことがあります」
「何が言いてんだ~」
勝也さんが怒りの形相で立ち上がる。
しかし、顔色は悪く冷や汗をかいている。
美紀さんと真司さんもなにか引っ掛かる
顔をしていた。
筆は死体に指をさして、
「この死体に見覚えがありませんか!」
「そんなやつ知らね~よ!」
「そうですか!このネックレス、今あなたが
付けているのと良く似てますね!」
「そんなの良くあるやつじゃないか!
それにそれがなんだって言うんだ!」
「この服装も良く似ていますよ。勝也さんに」
「だ・か・らそれがなんだって言うんだ!」
俺はポケットからタバコとライターを取り出すと
勝也さんの顔色がさらに悪くなる。
「さっきチラッと見たんですけど、
このライターかなりゴツくて特殊な作りですね
これに見覚えは?」
「そ、それは………」
「おい、それって勝也のじゃ……」
「私も何度か見たことあるって言うか
自慢げに見せてたやつだよ。なんでそれを
こいつが持ってるの?」
「ライターに名前が掘ってありますよ。勝也って!」
「そ、そ、そ、それが………」
「覚えてるんだろ!これあんただよ!」
「アガッガ、オエ~」
勝也は驚き、耐えられず吐いた。
「お、おれは死んでね~」
「いや、あんただ!否定しようとしているが
これを見てから色々と思い出したんじゃないか」
勝也は死体を見てからずっと
何かを思い出しそうででも怖くて拒否し続けていた
しかし、こいつは俺のライターを持っていた。
これが切っ掛けとなり鮮明にあの日を思い出す。
俺達はあの時、肝試しにここに入った。
しかし、何故かどうやっても出ることが出来ないし
黒い男がウロウロと歩いていやがる。
俺達はだんだんイライラとして些細なことで喧嘩
俺は一人出ていった。歩いているうちに
だんだん心細くなり、俺は2人のもとに帰ることに、
しかし、2人は居なかった。俺は怖くなり
黒い男とか関係なく叫ぶように2人を呼んだ、
しかし、一向に出てくる気配がない。
そして、とうとう見付かってしまった。
黒い男にあいつはゆっくりとこちらに歩いてくる。
俺は無我夢中で走って逃げた。
何とかオモチャが沢山ある倉庫に逃げ込み
隠れた。怖くて身体がガタガタ震える。
大丈夫だあいつは遅かったしきっと見失っている。
ここに隠れていれば見付からない。頭の中で
ぐるぐると感情が交錯した。
どれだけ時間が経ったのだろうか、わからない!
ふと、隠れているオモチャの隙間から
一人の少女が見えた。なんでこんなところにと
思っていると、その子は隙間から勝也を
覗き込んだのだ。
「ヒッー」と怖くて声が漏れる。
その女の子は一言言った。「怖い」と
その女の子は黒い男に変わり、俺から何かを
吸い取っていった。なにか分からないが
もうどうでも言い、なにも考えたくない。
そして、俺は知らないうちにまた彷徨っていた。
その内、美紀と真司を見つけて
出口を探した。
「お、おれは」
身体をガクガクさせながらこちらを見て
「死んだって言うのか!」
「残念なからそうです。死体に外傷はなさそう
ですので、死因は餓死ですかね!
ここを長く彷徨っていたみたいですね。
貴方達が入ったのはもう何ヵ月も前では?
ちなみに今日は8月3日です」
「嘘だろ!俺達が入ったのは5月だ!
3ヶ月もここにいるって言うのか!
生きているはずがね~!」
勝也はガクガクと身体を動かし
目は白目になり口からはよだれを垂らしていた。
「ウガ、ガ、ウガ、ガ~~」
突如暴れだし筆に襲いかかる。
咄嗟のことで、判断が遅れ首を絞められる。
「グッ苦し~」
湊斗達が助けに入ろうとするが
美紀さんと真司さんも
狂ったように暴れだした。
「筆くんから離れて!」
さくらさんだけが何とか2人から逃れ
勝也さんを止めようとするが、
暴走した勝也さんは止められず、
腕を振ってさくらさんを吹き飛ばす。
「キャー」
「さぐらさん」
すごい力で締め上げられる筆
「ハァーン」
その時ドスの効いた声が響き渡る。