第三章 部活動体験
演奏会から数日が経ち、無事に入学式も終了した。あれ以降も演奏会で見た先輩の姿が忘れられない。そんな日々を過ごしていたら冬也からメッセージがきた。
「吹奏楽部が部活動体験をやるらしいんだけど行かない?」
部活動体験。明高には授業開始日から二週間が部活動体験期間となっており、様々な部活が玄関や学校敷地内で宣伝をしている。もしかしたら例の先輩に会えるかもしれない。そう思いながら僕は冬也に「もちろん行く」と返信をした。
「なら明日の放課後結城のクラス行くわ」
「りょ~かい」
冬也の作戦に見事ハマってしまったと思いながらも明日の部活動体験を楽しみにしている自分がいることを自覚し、眠りについた。
翌日の放課後僕らは吹奏楽部が練習しているという場所にやってきた。
「ほんとにここであってるのか冬也」
「あってるよ。ほら楽器の音聴こえてくるでしょ」
「たしかに聴こえてはくるが、普通吹奏楽部って音楽室で練習するものじゃないのか?」
そう僕たちがやってきたのは音楽室ではなく、敷地内の別館であるとある建物にやってきた。どうやら開校五十周年記念事業かなにかで建てられたそうだ。
「まっとにかく入ってみようぜ。」
「そうだな。にしても冬也はやる気満々だな」
「あったりまえよ!久々に楽器が吹けるんだからな!」
そんなことを言いながら入り口に入ると受付と書かれた紙が貼ってある机と部員と思われる人が立っていた。
「こんにちは。部活体験の一年生?」
「はいそうです!よろしくお願いします!!」
「元気があってとてもいいと思うよ。よろしくね。」
そう語りかける受付の先輩は首から下げている名札を見ると【Flパート 中岡美月】と書いてある。
Fl?と思っていた矢先美月先輩が僕らに聞いてきた。
「ちなみに二人とも楽器の経験はある?」
「僕は中学校の頃やってましたが、こっちの友達は未経験です。」
冬也がすかさず答えていた。
なんで冬也は初対面の人とすらすらと会話できるのか疑問を持ちながらも美月先輩は話を続ける。
「じゃあ。二人ともこの紙に名前と出身校と、そっちのえ~と楽器経験のある君は何パートだったか書いてもらっていいかな?」
そういわれ僕たちは紙に記入していくその間美月先輩は「ふ~ん」「ほうほう」「そこの出身かぁ」とか言いながら記入している僕たちを見ている。
「うん。二人ともありがとう!え~と楽器経験がある君が冬也君か。ん!中学校の時はクラリネットをやってたんだ。男の子でクラリネットってなかなか珍しいね。何か理由でもあるの?」
「いとこが吹奏楽部で担当していたのがクラリネットで遊びに行ってた時に吹かせてもらってから好きになりました。」
「なるほどねぇ。周りの人の影響って大きいもんね。ところで結城君はどうする?冬也君と一緒にクラリネットの楽器体験でもしていく?それとも行きたいパートはある?」
急に自分に話を振られた。正直パートといわれても何があるかが分からず困ってしまった。
「あぁ~その顔は何があるのかわからないって顔だな。ゴメンネ質問が悪かった。」
そういうと美月先輩は申し訳なさそうな顔をした。
「それなら...今楽器体験ツアーなんてやってるから二人で回ってみたらどう?一回全パート体験してみると意外と自分にピッタリな楽器がみつかるかもよぉ~」
【楽器体験ツアー】たしかに面白そうだと感じた。吹奏楽について何も知らない自分にはありがたいものかもしれない。
「じゃあ楽器体験ツアーにします。」
「おっそうこなくっちゃ!じゃあこの紙渡すね。」
そう言われ渡された紙はスタンプラリーの台紙だった。
「いろいろな場所に散らばっている楽器を体験するとスタンプが貰えるよ。ちなみになんだけど全部集めると景品があります。」
「勝手に話進めちゃったけど冬也も一緒に回ってくれるか?」
「もちろんいいぜ。友達が吹奏楽部に一緒に入ってくれるかもしれないんだ。そのためだったら努力は惜しまないぜ」
まったくどうしてそこまで友達と一緒に部活に入るのにこだわるのかはしらないが、とにかく一緒に回れるようでよかった。
「じゃあ時間も限られてるし、一番最初はあなたたちから見て右側の部屋でやってるクラリネットの楽器体験からがおすすめかな?いってらっしゃい!」
僕たちは受付の先輩に言わた通りクラリネットの楽器体験の部屋に入っていった。
Flパートの美月先輩の登場です。
結城君はFlがなにを表しているのかわからないまま楽器体験ツアーに挑みます。
ここからは結城君にとって知らない世界が待っています。
果たして演奏会で目を惹かれた先輩には合えるのでしょうか....
お楽しみ
書いていると「この単語は吹奏楽をやっていない人でもわかるのか?いやわからないよな?」と悩んでしまいます。