きのことベーコンの炒め物
きのこって美味しい上に健康的でいいですよね。
今日は財布が潤っているので冒険者業は休暇ということにする。宿の方でリオルと一緒に朝ごはんを用意してもらって、乗り合い馬車で進めるだけ進んで、孤児院を目指す。まだまだ道は遠いけれど。
ということでリオルを起こして歯磨き、洗顔、着替えを済ませて朝ご飯の到着を待つ。
宿屋の看板娘ちゃんがライスと生卵、お吸い物とお新香ときのことベーコンの炒め物、ほうれん草のお浸しを持ってきてくれた。美味しそう。看板娘ちゃんが下がると、私とリオルは手を合わせていただきますをする。
「いただきます」
「いただきますなのじゃー!」
まずは卵を溶いてライスにかける。ライスを齎した国では『卵かけごはん』として有名らしい。なんでも、聖女様とやらがこれによってライスの美味しさを広めたとか。異国の聖女様は随分と余裕があるらしい。でも、彼女の齎した食文化は確実に食の喜びを人に与えたのだからまさに聖女様なのだろう。
「うーん、生卵と醤油をかけるだけでこんなにライスが美味しくなるなんて、異国の聖女様は凄いわねー。卵かけごはん様様だわ。我が国の聖女様はお祈りにポーション作りに浄化にって忙しいからそれどころじゃないみたいだけど、時間に余裕があれば同じようなことをやるのかしら」
「…聖女様のー」
リオルが珍しく低いテンションで、地を這うような低い声で呟いた。でも、それには触れて欲しくないらしくすぐに話題をそらす。
「でも、この卵かけごはん?本当に美味しいのじゃー!」
「…そうね!すごく美味しいわ。お吸い物とも合うわねー」
「お新香もぽりぽり美味しいのじゃー」
「ほうれん草のお浸しもイケるわ。最高」
「じゃが一番はメインのきのことベーコンの炒め物じゃのー。この赤いののおかげでピリ辛なのがたまらないのー」
「鷹の爪よ。ピリ辛で美味しいわよねー」
「鷹の爪?すごい名前なのじゃー」
それも聖女様の齎したものだけど、わざわざ言う必要はないわね。
「でもこれ、バターと醤油とニンニクで炒めてあるのね。美味しいわ」
「ニンニクと鷹の爪でパンチが効いてるのじゃー」
「あー、美味しかった。ご馳走さまでした」
「ご馳走でしたなのじゃー」
まだテンションが低いリオルに戸惑いつつも、看板娘ちゃんに食器を下げてもらって、忘れ物がないかチェックして宿を出る。宿代はそこそこだったが食事が美味しかったので大満足。
リオルと一緒に乗り合い馬車に乗る。リオルはしばらくテンションが低かったけれど、乗り合い馬車の中で私に膝枕を要求してきたりたっぷり甘えん坊を発揮するとお昼までには気分も回復していた。リオル、私と出会う前に何があったんだろう。
母の作ってくれるしいたけの煮付け大好きです。




