オムライス
チキンライスの上にトロプルのオムレツが乗ったオムライスか、チキンライスを卵でとじるタイプのオムライスか。それが問題だ。
今日はドリル鳥の卵の収穫依頼が入った。ドリル鳥は鋭い嘴をドリルのように使い、建物に穴を開けて巣を作ってしまう厄介な魔獣だ。その上繁殖能力が高く、一度に十個もの卵を産む。人間の建物の中に巣を作るので天敵も人間以外は居らず、雛はスクスクと成長するので数が増えるのも早い。
しかし恩恵もある。このドリル鳥の卵、すごく美味しいのだ。なんなら卵一つで巣にするために壊された建物の修繕費を賄えるくらいには高値で取引される。なのであえて駆除はせず、卵だけ貰うという人が意外と多い。
…まあ、卵を毎回全部奪っていたらいつかは絶滅すると思うけど私が考えても仕方ないことだ。魔獣だから一体一体の寿命も繁殖可能期間も長いしなんとかなるんじゃなかろうか。
ということで、ドリルのように使える嘴を持つ怖い魔獣であるドリル鳥に立ち向かい卵を収穫することになった。
といっても、魔力回復ポーションを多用しつつかなり強力な睡眠魔法を巣に掛けてドリル鳥を無理矢理眠らせる。そもそも強い魔獣なのに、その上繁殖期なので眠らせるのも一苦労だ。
そして寝ている隙に卵を十個全てもらう。ちょっと可哀想だけど。そういえば、ドリル鳥の卵って有精卵なんだよなーなんて考えながら撤収。
依頼主である建物の主人にドリル鳥の卵全部を渡す。かなり有り難い依頼料をいただいた。
今日も財布がホクホクなので、リオルになにか奮発して美味しいものをと思いながら宿に戻る。帰り道にドリル鳥の卵を使ったオムライスののぼりを見たので、あそこにしよう。
「ただいま、リオル」
「リリア!おかえりなさいなのじゃー!」
「今日はオムライスを食べに行こうか」
「オムライスかの?美味しそうな名前じゃのー」
「じゃあ行こうか」
「おー!」
リオルと手を繋いでオムライスののぼりのお店に向かう。お店に入ると、結構混んでいる。なんとか一席テーブル席をゲットした。
「いらっしゃいませ」
「果実水二人分とオムライス二人分」
「かしこまりました」
リオルと果実水を飲みながらお話をしていると、店員さんがオムライスを運んできた。
「お待たせしました、オムライスです」
「ありがとう」
「おおー!これがオムライスなのじゃな!美味しそうなのじゃー!」
「いただきます」
「いただきますなのじゃー!」
まずは一口。うん、美味しい。
「ドリル鳥の卵だけあって、すごく美味しいわ。味が濃くてコクがあるのね」
「卵がふわふわで美味しいのじゃー!中には鳥の肉かの?あと豆や野菜の小さいのの入ったライスなのじゃー!ケチャップ味で美味しいのじゃー!」
「チキンライス、いいわよね。私も好きよ。でも、ただのチキンライスよりやっぱりぷるぷるのオムレツを乗せたオムライスの方が好きね」
「ほー、オムレツとチキンライスって言うんじゃのー。だからオムライスなのじゃな。オムライス、わし大好きなのじゃー!」
リオルに新たな大好物が出来た。満腹になりお代を払って店を出る。手を繋いで宿に帰るけれど、リオルはずっとオムライスの話ばかり。そんなリオルは寝るまでオムライスが美味しかったという話を続けていた。
外で食べるならやっぱりチキンライスにトロプルオムレツの乗ったタイプのオムライスかなぁ。




