ナポリタン
懐かしの味ですよね!
今日は大型の植物系の魔物、デスウィートの討伐依頼が来た。このデスウィート、身体が小麦で出来ているため討伐すればかなーりの量の小麦粉を生産できるが放置しておくと田畑を荒らして土の中の養分を丸ごとごっそり持っていく農家にとってすごく迷惑な魔物である。
デスウィートを遠視の魔法で捉えて、風魔法で速攻で近付いて畑に入られる前にさくっと拘束魔法で捕まえる。そしてデスウィートの弱点である足の役割を果たす奇妙な根っこを氷魔法でさくっと凍らせた。これでデスウィートは行動を停止。死んでいるのか魔獣と違って確認しづらいのが植物系の魔物の面倒なところ。
依頼主である農家さん達に行動を停止したデスウィートを差し出して、代わりに依頼料を受け取る。幸い今回はまだ少数の田畑にしか被害が出ていないと聞いたが、不憫だしこれも何かの縁だと被害に遭われた田畑に光魔法を掛ける。すっかり弱っていた農家さん達の植物はギリギリ元気を取り戻し、田畑の土そのものにも栄養が戻る。といっても、私が魔力回復ポーションを使って光魔法をかけ続けても商品価値的にはギリギリのラインになってしまったと思うけれども。
その間に農家さん達の手でデスウィートの身体がばらされて小麦が大収穫されたらしい。大半は被害を受けた農家さんに被害額分配られたが、残りはさらにみんなで再分配。被害を受けていない農家さんはほくほくで、被害を受けた農家さんもまあデスウィートから取った小麦のおかげでなんとかなりそう。私としてもほっとした。
被害を受けた農家さん達から、光魔法のお礼だと小麦粉を少し貰った。大して役に立っていないのでご遠慮しようとしたら、逆に謙虚で偉いと褒められ他の農家さん達から小麦粉をさらに貰う結果になった。小麦粉意外と重い。マジックボックスに仕舞うと、農家さん達にお礼を言って宿に戻った。
今日はリオルに何を食べさせようか考えていると、面白いのぼりを発見。材料持ち込みオーケー、どんな珍妙な料理でもおまかせあれ!らしい。特に珍妙な材料はないのが残念だけど、小麦粉を大量に消費して貰おう。パスタとかいいな。…いや、子供向けならナポリタン?ナポリタンならリオルはもっと喜ぶかな?ピザもいいなー。どうしよう。昼はナポリタン、夜はピザにしようか。
リオルは宿の部屋でのんびりとチョコレートを味わっていたようで、私が帰ると笑顔で出迎えてくれる。
「リリアー、おかえりなさいなのじゃー」
「ただいま、リオル。お昼を食べに行こうか」
「まだお昼には早いぞい」
「手打ちパスタを作って貰おうと思うの。早めに行かないとお昼を過ぎちゃうわ」
「そうなのかの?楽しみなのじゃー!」
リオルと手を繋いでしばらく歩いて、先ほどののぼりの店に入った。
「いらっしゃいませー」
「この小麦粉でナポリタンでも作ってちょうだい」
「小麦粉から作るならお時間いただきますが」
「別にいいわ。まだお昼には早いでしょう」
「そうですね。今から作ればお昼にはちょうどいいか…わかりました。お待ちください」
「お願い」
リオルと一緒に、手打ちパスタを作るところを見ながらお話しつつ待つ。その間コーヒーとフルーツサンドを食べながら。
「パスタって時間がかかるのじゃのー」
「その分きっと美味しいわよ」
「お腹すいてきたのじゃー」
「ナポリタン、今から仕上げますのでもうちょっとお待ちくださいね」
「はーいなのじゃー」
そして出来上がったナポリタン。とても美味しそうなその見た目にリオルは飛び付いた。
「おおー!これは美味しそうなのじゃー!」
「いただきます」
「いただきますなのじゃー!」
ナポリタンを一口。美味しい。
「美味しいのじゃー!なんじゃこれ、大好きな味なのじゃー!」
「いいわねこれ。甘ったるい味付けというよりは、他のナポリタンと比べてすっきりした味わいなのね」
「ケチャップとミニトマトを使って味付けしていますから。ケチャップだけのものより食べやすいですよね」
「こだわってるのね」
「お野菜もウィンナーもうまうまなのじゃー!最高なのじゃー!わし、これ大好きなのじゃー!」
「ふふ、それは良かったです」
リオルはあっという間に完食。あまりにも好きになったらしい。私も続いて完食。美味しかった。
「マスター。また夜来るから、この小麦粉で今度はピザを作って欲しいの。お願いできるかしら」
「かしこまりました。お待ちしていますね」
「えー、わしナポリタンがいいのじゃー」
「ナポリタンも美味しいけど、ピザも美味しいのよ。それに毎食食べてたら飽きちゃうわ」
「むー。わかったのじゃー…」
途端に元気ななくなるリオルの頭を優しく撫でて店を出る。マスターは優しく見送ってくれた。
お弁当に入ってると嬉しいやつです




