親子丼
親子丼は半熟派ですか?しっかり焼き煮派ですか?
午前中は乗り合い馬車での移動に使い、お昼はタマゴサンドを大量に食べ、夕方に村に着くと宿を確保してリオルにお留守番を頼み冒険者ギルドに依頼を受けに行く。今日の依頼はしばらく分の蓄えはあるので軽いものをさくっとこなそう。
そう思って探し物の依頼を受ける。家の鍵を失くしたという少女。両親に付き添われて、なけなしのお小遣いを依頼料にしたようだ。心当たりがある公園で光魔法を駆使して探してみる。砂場に落ちていたらしい鍵が一瞬で少女の手元に戻ってきた。
少女にもう失くさないように言い含め、依頼料は半分だけ受け取って少女にもう半分は返す。初回割引ということにしておいた。
少女は何度もお礼を言ってくれて、ご両親も頭を下げてくれる。役に立てて良かった。
宿に戻るとリオルは優しい笑顔で出迎えてくれる。そんなリオルに癒されて、二人で手を繋いで外に出てご飯屋さんを探す。小さな村で唯一見つかったご飯屋さんは、親子丼が名物らしい。のぼりに書いてあった。
「いらっしゃい。あらあら、可愛いぼうやねぇ」
「ありがとうございますなのじゃー!」
「果実水だ。二人分無料にしてやる」
「あら、ありがとう」
気の良いご店主と、優しい奥方。良い店を見つけたかもしれない。
「おすすめはやっぱり親子丼?」
「おうよ。食べていくかい?」
「なら二人分お願いするのじゃー!」
「はいよ!」
「うふふ。この人の作る親子丼は絶品よぉ。楽しみにねぇ」
「わーいなのじゃー!」
そして運ばれてきた親子丼。しっかり焼きではなく半熟系の親子丼らしい。美味しそう。
「いただきます」
「いただきますなのじゃー!」
まずは一口。美味しい。
「半熟加減が絶妙ね」
「鶏肉の香ばしさがなんとも言えないのじゃー!」
「味付けも完璧ね。求めていた親子丼の体現者って感じ」
「そこまで褒められると照れるじゃないか」
「褒められたのは親子丼で、貴方ではないわよぉ」
「俺が作ったんだから俺が褒められたようなものだろう!」
ご夫婦のやりとりも面白い。この店に来れて良かった。
「ご店主もすごいんじゃー!こんなに美味しい親子丼作れるなんて天才なのじゃー!」
「だろう?」
「子供に無理矢理言わせるんじゃありませんよぉ。僕ちゃん、うちの人がごめんなさいねぇ。ありがとうねぇ」
「お世辞抜きなのじゃー!」
「坊主はわかってるなぁ」
そっと茶碗蒸しを出してくれるご店主。リオルはそちらも美味しい美味しいと食べ、最後の一口だけ私に分けてくれた。美味しかった。
ご馳走さまをして店を出る。茶碗蒸し代はご店主に奢ってもらった。最高の店なのでまた来たい。リオルと手を繋いで宿に戻る。あのご夫婦のように、リオルとも思い出を積み重ねて行きたい。
私はどちらも好きです!でも家庭で食べるのはしっかり煮。




