なす味噌
なす祭り楽しい。なすはいいぞ。
今日は強盗団の捕縛の依頼を受けた。随分と大きな組織らしい。一網打尽にするには骨が折れるからと、かなりの依頼料が発生するらしい。
私は依頼を受け、強盗団のアジトがある山全体に睡眠魔法をかける。他の人が居たらごめんなさい。かなりの魔力を使ったので魔力回復ポーションを飲み干す。その後風魔法で空を飛びアジトに潜入。また光魔法で山にいる強盗団の人間を一箇所に集めて拘束魔法で捉える。全員いるか人数を確認すると一人いない。光魔法で運ばれてこないということは、相当魔法が得意なんだろう。厄介だ。
アジトの奥から人が出てきた。手にはナイフ。でも、意外なことに彼は子供だった。そして、震えていた。
「…それを捨ててこちらへ来なさい。拘束はするけど、酷い扱いはしないわ。…依頼主がどう判断するかはわからないけど」
「…ぼ、僕は奴隷印を付けられているから、逆らえません。何かあればご主人様を守れと命じられています」
「貴方、魔法が得意なんでしょう?それでなんとかならないの?」
「奴隷印は永続魔法です。僕の力では無理です」
「でも、今も命令に抗っているんでしょう?」
「はい。だから、今のうちに逃げてください」
「奴隷印を見せて」
大人しく足裏の奴隷印を見せる少年に、光魔法を掛ける。奴隷印は私の魔力と引き換えに消えた。私は少年がどう出るかわからないから、魔力回復ポーションを速攻で飲み干した。
「…奴隷印が消えた?」
「ええ。ねえ、貴方。これで強盗団の人間は全員?」
「はい」
「貴方も拘束するけど良い?」
「…はい」
その後、風魔法で全員を運びつつ風魔法で下山した。
少年も含めて全員を依頼主に引き渡したが、その際に少年の奴隷印のことを伝えておいた。彼の罪が少しでも軽くなると良い。彼は毒気の抜かれたような表情で私に頭を下げて去っていった。彼は幸せになれるだろうか。
宿に戻ると、マジックボックスからなすを三本取り出して宿屋の主人に渡した。
「これでなす料理を作って欲しいの。お願い出来る?」
「もちろんいいぜぇ。任せな!」
「ありがとう。よろしくね」
「おうよー!」
宿の部屋で待つリオルは笑顔で出迎えてくれる。その笑顔に癒されて、一緒にベッドで二人並んでお昼寝してゆっくりと過ごして、駄菓子屋に行ったりのんびり買い物を済ませて宿に戻るとちょうど料理を作ってくれているところらしかった。宿の部屋で待っていると料理が運ばれてくる。
「お待たせしましたー!」
若い新入りっぽいお兄さんが料理を運んできてくれた。美味しそうななす味噌とライス、豆腐の味噌スープにお新香、焼き魚のセット。最高。
「ありがとう、そこのテーブルにお願い」
「はいよー」
お兄さんが下がると、リオルと一緒に手を合わせた。
「いただきます」
「いただきますなのじゃー!」
まずは焼き魚を一口。身が柔らかく大根おろしと醤油で食べると優しい味が口いっぱいに広がる。
「この魚、美味しいわね。大根おろしが良い仕事をしているわ」
「大根おろし、美味しいのじゃー!」
小骨を器用に避けつつ食べるリオル。器用ね。綺麗に魚を食べるから、感心する。私も器用に食べる方だと思うんだけど。
「なすも美味しいのじゃー!」
リオルの言葉になす味噌も食べてみる。美味しい。
「噛むとじゅわっと旨味が広がるわね」
「とろとろになっていて美味しいのじゃー!」
「お味噌が最高に合うわ」
「味噌スープとお新香も美味しいのじゃー!」
食器を下げにきたお兄さんにお礼を言うと嬉しそうに笑う。お兄さんも料理に参加したらしい。宿屋の主人は料理の腕が有名で、修行させてもらいつつ働いているとか。大変なのね。
翌日の朝、宿を出る際にお代を払うとご飯代は割高だったがその分宿代が安くとんとんだった。ご飯が有名なお店だもの、仕方がないわね。むしろ宿代が安すぎるし、良いお店だったわ。
なす祭り、次回で最後になりますがリオル達の旅はまだまだ続きますのでご安心下さい。




