自立の道へ
お久しぶりです。
またまた間隔が空いてしまいました。
次はあまり空けないようにしたいのですが……。
よろしくお願いします。
「……よし!」
夜が明けて、気合いを入れるようにそう言うと部屋のカーテンを開け放つ。朝の少し冷えた空気が心地いい。ただし、寝ていない体には日差しが少しきつく感じるけれど。
一晩中考えた結果、私は孤児院に行くことにした。お兄様が、お母様が、と言い訳をしたところで、結局決めるのは自分でしかないからだ。決断したことすらも言い訳をして、誰かのせいにする卑怯な自分にはなりたくなかった。
これは私が決めたこと。責任をとるのも自分。
そう何度も自分に暗示をかけた。そうでなければお母様の言葉に私の意思が飲み込まれそうで怖かった──。
◇
「母上がまだお休みでよかったな」
ガタガタと揺れる男爵家の馬車の中、隣に座っているお兄様は口火を切った。今日はお母様のこともあり、お兄様の出廷に合わせて同乗させてもらっている。お兄様に叱られたのは昨日のことで、気まずくて話しかけづらかったことをお兄様は察してくれたのだろう。
「そうですね」
お母様とのことも昨日の今日で、見つかったら大変だったに違いない。だけど、お母様の言う通りにしたところで、行き詰まるのは目に見えている。屋敷の人以外との接触を絶って、屋敷に引き篭もったとしても、お兄様が結婚すればどうなるのか?
結婚相手からしたら、かなり遠縁の、それも平民の娘が、何もせず男爵家の人たちとほぼ待遇を受けていることに、何の違和感も覚えないわけがない。そして秘密を探ろうとして──というのは考え過ぎかもしれないけれども、嫌な想像ばかりが頭の中を駆け巡る。
「……私、男爵家を出た方がいいんじゃないかと思うんです」
無意識に考えていた言葉が口からこぼれ落ちた。しまったという思いと、言えたという思いが半々。どこまでも私は決断できないんだなと自嘲するように笑う。
お兄様はなんとも表現できない表情を浮かべた。
「いや、それは……母上とのことを考えると、その方がお前にとってはいいのか? だが、世間知らずを放り出したところで生きていけるのか……?」
自問しているようだけど、全て私に聞こえている。私のことを思い遣ってくれているのだろう。お母様の言う『あなたのため』よりも余程心に響いた。本当にこれまでの私は見たいものしか見えていなかったようだ。
私は笑顔で首を左右に振る。
「大丈夫です」
大丈夫と言い切る根拠はない。だけど、初めからできないと決めつけてしまえば、また何もしないまま、ただ不安に苛まれるだけの日々に戻ってしまうだけ。
私の返答にもお兄様の表情は曇ったままだった。それはそうだろう。出て行くにしても、住むところ、お金、仕事が必要だ。現実的に難しいのはわかっている。今すぐに決められるような問題じゃないから、少しずつそのために必要なものや知識を蓄えよう。そんなことをぼんやり考えていた──。
◇
孤児院に着くと、いつものように仕事に取り掛かる。まだ完全に流れを把握しているわけではないけれど、自分が何をすればいいのかが少しずつわかってきた。お母様の言葉が心の重石になっていたとしても、ここに来るとその重石が軽くなるのを感じる。
動き回るうちに私は、お母様のことを忘れていた。そんな時に来客があり、院長室へ呼ばれた私の前に現れたのは──お母様だった。
読んでいただき、ありがとうございました。
まだまだ暑い日が続きますが、皆様も体調にはお気をつけください。




