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尾行  作者: 道芝
3/11

 見渡してみて客のいない座席は見当たらないくらいに客は入っており、あいつに続いておれがすんなり入れたのは幸いであったし、またあいつが入れたことも幸いであったというのもうおれはあいつが入ったから続いただけであってこの店に入る理由を持ち合わせていないのだしこのように向こう見ずであってはこれまでせっかくあいつをつけてきた苦労が台無しになることも念頭にないわけで、席に入れず店を出ようとするあいつとそいつを知らずに店に入っていくおれとがばったり会うなんてことは当然鉢合わせになっては一番まずいのであるからあってはならないことなのだ。スームズな入店にくわえての幸い続きなのがおれの席からあいつのみえるのもよい、しかしあいつからもおれがみえることにはなりはしないかと思い始めると幸せ続きのツケがはやくも来たようで、やめだやめだ料理の来るまで幸不幸は何もなしだ。

 

 ここはファミレスだから席もボックス席ばかりでこのごろ目立ちだした透明な板はどこにも見当たらないのがまず目にはやさしいところ。透明が目立つのはご法度破りではないかといえども、これまでになかったことへの違和感が目立つことの一要件を満たしているのだし人と人とを区切るという目的からも目立たざるを得ないのであるのは、その人と人とは会話をすることを仮定されているのであってこの会話がいまはご法度なのであるがご法度といえども破られることをも前提にしているのでありほんとうに話さないのであれば区切り板など必要ないのだがあるというからには人と人とは話すのだしこの会話によってとぶ唾や歯糞や歯のつまりもの詰め物ではないのために板はだんだん汚れていくから板は目立つのであるつまり透明板はその透明なるがゆえに目立つといえどもその要件には全然透明であることはなくてよろしくそれが透明でなくなるあるいはそもそも透明でないところが目立ちの由来なのである。


 あいつはテーブルに両手をおいてうつむき加減に微動もしないとしておくから、おれは他の席に目を転じて暇でも潰そう。そういえばだめよだめだめの一時に消費されたコンビのあのネタはたしかこうしてファミレスにおける観察が発見の一番の由来であるところを思い出すと、こう観察することも悪くなく人生模様の一活劇いな小ネタの類くらいはみつかってもよろしいと、目の転じた先には目の転々をそこで実際に打ち止めさせた老人一人とティーネイジャー一人の一組があった。

 

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