表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
海と想いと君と  作者: coyuki
第5章 今までとは違う日々
89/124

第88話 Gメンの追跡

数メートル間隔をおいて、斉藤美希と男の後をつける。

男の年齢は20代前後……あの日、沙彩先輩を袋叩き(?)にしようとした連中とは歳が少し離れていそうだ。

「ねぇ快斗くん、綾子が何かやったの?」

「え?アヤコ?」

イモト……ではないよな。いくらなんでも話がズレまくる。

菅原綾子スガワラアヤコ。文学部の2年生よ」

誰だそれ……今尾行しているのは斉藤美希とは別人か?

……あ、そっか。指名手配されてるから偽名使ってる場合もあるのか。

「友だちなんですか?」

「ううん。同じ講義受けたりするときもあるけどさ、ウチらとはタイプ違うもん。なんていうか……マジメでガリ勉系?」

斉藤美希は、黒縁の目がねをかけている。

……犯罪者をマジメでガリ勉系と印象づけるメガネ、恐るべし。

「……詳しくは内部秘密なので教えられませんが……何かやったのは確かです」

「ふーん。じゃあ、あとはケーサツに任せていい加減遊びに行こーよ」

「リナ、尾行もう飽きたんですけどー」

そんなに遊びに行きたいのか、しびれを切らしたように2人は言う。

んなのに関わらず、見張りを続ける。

……今思えば、こっちは名乗ったのに名前さえ聞いてなかったな。どーでもいいけど。

「ほら早くケータイで~」

「あ、ちょっと何すん……」

いきなりバッグをとられ、ケータイを取り出すために漁る。

ほんと礼儀ねーなこの2人……マジで天下の高偏差値大の学生かよ。

取り返そうと手を伸ばしたとき……

「あのー、ヘタにケーサツ呼んでくれたら困るんですよー」

どっからか声がして、バッグを漁る2つの手を掴んだ。

「こっちはこっちでちゃんと策あんだよ。邪魔すんだったらとっとと消えな」

「痛っ……な、何よあんたたち……リナ、行こ行こっ!」

「他にもっといい子いるもんねーっだ!」

意味分からん捨て台詞を吐いて、掴んだ手を振り解いてその2人はどこかへ去っていった。

手をパンパンと払って、素早く俺と同じ場所にもぐりこむ……小原先輩と東郷先輩。

「蒼井ー、お前バッグぐらいちゃんと持っとけよ」

「すんません……見張りに集中してたから、つい」

「んま、斉藤美希を監視するのに集中力使うのはしょうがないから、そんな怒んなくてよくない?たっくん」

「……へーへー。夏姫がそう言うんなら分かったよ」

相変わらず、仲良しカップルの2人……って、今それどこじゃない。

「さ……いや、杉浦先輩は?」

「あ、さーや?さーやなら、いきなり……」

「ト、トイレ行くって言ってたぞ!なぁ!?夏姫!」

「え?そ……あ、うん、そうそう!メイク崩れたー……とか言って?」

「あ、そうなんですか……」

……おかしいなぁ。2人のテンパりよう……

それに、沙彩先輩はこんな事態に化粧なんか直すタイプの人じゃない。

……まぁいっか。沙彩先輩なりに考えがあるのかもしれないし……


にしても……あれから約2時間。男と何か話しているだけで、一向に動く気配ナシ。

「もう、ボス呼んで強行突破しちゃう?」

「いや、他にも客いるし、この商店街、結構こみ始めたし野次馬増えるだろうし厄介だし……」

とりあえず、この喫茶店と商店街を出るまで粘るか……

……と思った瞬間、

「あっ、席立った……出口行く」

時刻を確認……午後6時30分。通学通勤ラッシュで人が多い……見失わないようにしないと。

「よっしゃ。追跡開始……でいいんだよな?」

「もちろん!さて、血反吐出るまで吐かせるぞー!」

……東郷先輩、言ってること怖いです。


しばらく進むと……斉藤と男は手を振り合う。どうやら別れるらしい。

「1人になったみたい……このまま強行突破する?」

「いや、もう少し様子を見ましょう。まだ人も多いし……」

俺がそんな暢気なことを言っている間……

「……あっ!!!」

いきなり、斉藤が猛ダッシュした!そして一気にくる黒い人ごみ……夕方着の電車に乗っていた学生の波だ。

「バレてたか……」

「ちょ、どーしよー!たっくん、大翔くん!」

素早く、念のため渡されていた“秘密兵器”を小原先輩に渡す。

「蒼井、これ……」

「GPSを俺が装着してるんで、それで俺の居場所が分かります。可能な限り追っかけますんで、早急にボスへの連絡お願いします!」

返事を聞かずに、素早く2人の元から去った。

ちなみに、小原先輩に渡したのはGPS本体。画面に地図が出てて、今俺が装着しているGPSが発信している電波で居場所が分かるようになっている……追跡の必需品。

追っかけてる側が追跡の必需品を装着しているなんて、変な話……でも、今はそんなこと気にしている場合じゃない。


人ごみなんか気にせず、走りに走りまくった。

いつの間にか、学生はおろか人の姿さえ点々とし始めた場所に辿り着いた。

足は速いほうだから、徐々に斉藤の後姿が見えてきて……

「あれ……消えた……?」

人気のない、真っ暗な河川敷。忽然と、やつの姿は消えた。

「逃がしたか……」

それか、初っ端から違う人物を追いかけていた……いや、そんなはずはないだろう。だとしたらメチャクチャ悔しい。

軽く舌打ちして、振り返ると……

「逃がしてないわ。お見事ね」

腕組した、斉藤が立っていた。




評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ