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海と想いと君と  作者: coyuki
第5章 今までとは違う日々
88/124

第87話 Gメンの捜索

上り線普通列車、2両目。6番目の席。

そこで、必死に思い出そうとしている。斉藤美希と俺との因果関係。

沙彩先輩が1年生のとき3年生だったから……俺とは丁度入れ違いになる。まず、学校内で知り合ったということはない。

3W……「いつ、どこで、なぜ」関係が成立したのかが全く掴めない。まぁ、記憶がないから当然かもしんないけど……

「……おい……蒼井様、蒼井様!」

「え……?」

「どうしたんですか?ボーっとして」

「いえ、なんでも……すみません、河原さん」

……と言ったところで、ヤバいと思った。

この人の名前、うろ覚え……間違ってたらどうしよう。

彼女はクスッと笑い、

「河野杏里です。人の名前覚えるのが極端に苦手だって噂、ほんとだったんですねー」

怒っている様子は全くなく、とりあえずホッとした。

「因果関係を、頑張って思い出そうとしてたんですが……ダメでした。全然無理です」

「そうなんですか……私が思うに、完璧に蒼井様の昔の彼女さんだったのだと思いますよ」

昔の……彼女?

ていうか……

「……話変わりますけど、普通に呼び捨てでいいですよ。年下だし、神でもないし様づけっておかしくありません?」

「いえいえ、様づけは私のポリシーなので!」

……あまりにも必死そうだったから、「そうですか……」で終わらせた。

「まぁとりあえず、蒼井様の卓越した千里眼でとっとと見つけちゃって成敗しちゃいましょう!」

「ハハ……千里眼って……」

……おかしいな。すんごい眠い。

まさか、向精神薬……って、そりゃないか。朝飯の後何も飲んだり食べたりしてないし。

「ちょっと眠くなったので、1駅前ぐらいになったら起こしてください」

「いーですよ。おやすみなさい」

窓に頭を預け、ゆっくり目を閉じた。


―――……


ここ……どこだ?

……あぁ、知ってる。ファストフード店。名前は確か……マクド○ルド。

って、これは夢か。今電車の中だから、いきなりマクド○ルドにループするわけない。

その店の一角で、仲睦まじくイチャついているカップルが一組……人が見てるのに、大胆なもんだ。

「ねぇ、私たちこれからもずーっと一緒だよね~?」

「あぁ、もちろん……」

男の方は、そう言って目を閉じる。

女の方は、キス待ちかなんか悟ったらしく、ゆっくりと唇を近づけていっていた。

「……もちろん、ずっと一緒になんかいるわけねーだろ。いーかげん飽きた。別れよ」

……は!?そこまでいってそれ!?

同じ男として、それはどーよ……

「え……嘘でしょ?どういう意味!?ねぇ!!!」

「……だから、失せろって意味だよ。分かんねーの?」

うわ、ヒド……

ここはひとつ、傍観者ながら意見させてもらおう。

「お前、別れるにしても言い方ってもんがあんだろ……」

……って言い、肩に手を置くが……目の前にいる男は、全然気づかない。

女の方も、全然俺に気づいている気配がない。

どうやら、俺はこの世界ユメでは幽霊と同然の存在らしい。

「……もういい。さよなら」

そう言い、女の姿は消えた。

目の前の男は、溜息をついて頬杖をつく。

ケータイを開き、なんかの画像を見ながら……

「……名前、なんていうのかな……」

と、呟いていた。

……よし。幽霊の特権として盗み見てやる。

男のすぐ後ろにまわり、ケータイを見てみた。

そこには……黒髪の女の人の画像があった。

……どこかで見たような気がする……という、妙な予感はさて置き。

コイツ……彼女と付き合っているさながら(もう別れたが)他の人を狙ってんのか!?

「ほんっと、サイテーなやつだな……」

夢の管理人(?)は、恋愛関係における最低なパターンを再現させているのか……

……なぜ再現させているのか?予知夢か?いや、絶対ない。

とかなんとか考えていると……

「ねぇ、今彼女さんと別れたの?」

ひょこっと、1人の女が姿を現した。

白とマテリアルを重視したその服は……

「私、斉藤美希。海宮高等学校2年よ。あなたは?」

やっぱり……斉藤美希。

目の前の男は、ケータイをパチンと閉じて、こう言った。

「俺は……東野中2年。蒼井大翔」

ふーん。東野中っていったら、俺の出身中で……

……って……俺かよ!

「んじゃあ、大翔……私を、次の彼女にしてくれない?それとも、予約待ちがいるかしら?」

「……まぁいるけど、あんたみたいな女、珍しいな。おもしろい。付き合おーぜ」

ってことは、この男……3年前の俺、ってことか。

そんでこの夢は、斉藤美希と俺が知り合ったきっかけ……


―――……


「あと一駅ですよー」

河野先輩に声をかけられ、すっと目を覚ました。

3Wの真実……

「俺が中2のとき……マクド○ルドで、軽いノリ……」

「どうしたんですか?」

「やっぱり、斉藤美希とは昔、付き合ってたみたいです」

冷静になってみれば、夢をアテにするなんてバカげている。

でも、この夢が……真実を伝えているように思えてならなかった。

『まもなく石之ヶ里、石之ヶ里に着きます。お降りのお客様は……』

「……降りましょう」

列車から降りて、東ノ橋大学に向かう。

にしても……どんだけ軽いんだ、昔の俺。

しかも予約待ちがいるって……どうやら相当モテていたらしい。

今と違って表現力や話術に長けていたのか……

そういえば、芸人は表現力や話術ともに最高ランクだから、ルックスは多少悪くてもモテるっていう話をどこかで聞いたことがある。

ということは……昔は芸人みたいだったのか!?俺!いつも半裸で黒いタイツを履いていたのか!?

「蒼井様?どうしたんですか?」

「あ、いえ……」

……とりあえず、バカなことを考えるのは今はそう。


東ノ橋大学に着いた。

丁度オープンキャンパス期間で、生徒証明カードを受付に見せたら難なく入ること……いや、侵入することができた。

現在9時45分。タイムリミットは終電まで。

「それじゃあ河野先輩はあちらの西校舎の方をお願いします」

「はい。万一これらの写真に似た人物を見かけたら電話いれますね!」

これらの写真……というのは、斉藤美希の写真。

沙彩先輩が斉藤美希の卒業アルバムからプリントアウトしてきたもの。

それと、斉藤美希の指名手配書の写真。それから、沙彩先輩と斉藤美希が一緒に映っているプリクラ。他数枚。

女の人というものは髪や化粧でガラリと印象が違ってくるから、なるべく多くの写真があるといい、という沙彩先輩の考慮から、手がかりを多く作ってきてくれた。

でも、やっぱり有力なのは俺と沙彩先輩。なぜなら、実物を見て会話をし、声も記憶しているから。

見逃すわけにはいかない……そんな、妙だけど重大な責任感が手伝い、闘志が燃えてきた。


―――……


昼もとっくに過ぎて、午後4時。

『どう?さーや、いた?』

「ううん、全然。においすらしない」

海宮大学内を三手に分かれて捜索している私たち。

夏姫との電話連絡で、手がかりナシを確認しあい、落胆しあった。

この大学……広い上に生徒数も教授数も多い。

蒼井君や河野さんからの連絡もないし……やっぱ、別の大学なのかな?

でも、海宮大学と東ノ橋大学のふたつ以外考えられないし……

そんなことをブツブツ考えながら歩いていて……誰かにぶつかった。

いや、正しくはぶつかってきた。ゆえに、相手が謝るのが道理であって、こっちが謝る必要ナシ。

しかし……

「いってーな、ネエちゃん。ぶつかってきて謝りもナシなの?」

……運悪く、タチ悪いヤツ5人組だった。

でも、私から謝る気はさらさらない。

「そっちがぶつかってきたんじゃないですか。大学生ですよね?あなたたちが謝罪を要求するのは間違いだってことぐらい気づかないんですか?」

「……んだとテメェ!可愛い顔して随分とナマイキじゃねーか!」

……うっへぇ、めんどくさっ。胸倉掴んできたよコイツ……

その時、ケータイの着信音が鳴った。電話だ。

「ケータイ鳴ってる。電話出るから離してくれる?」

「ハァ?ふざけ……イダッ!!」

胸倉掴んでいる手を思い切り握りつぶして、ケータイをとった。

ディスプレイには……蒼井大翔、と出ていた。

勢いよく電話に出る。

「蒼井君!?」

『沙彩先輩ですか?蒼井です。今、斉藤美希と思われる人物を追跡しています。確証とるために沙彩先輩も大至急石之ヶ里街に来てください』

石之ヶ里街……石之ヶ里市の中心部にあるでっかい商店街のことだ。

東ノ橋大学にいたはずなのに、なぜ商店街にいるのか、という疑問はさて置き……

「分かった。この時間だと特急があるからそれに乗る。バレないように気をつけてね。あ、ボスに連絡いれた?」

『はい、もちろん。じゃ、また後で』

電話が切れた後、素早くメールを打って夏姫とたっくんに送った。

文面は……「入口に至急集合」の7文字。

ケータイをパチンと閉じると、私も急いで入口へ向かった。

「あ、オイ!」

……という、胸倉を掴んできたA男の呼びかけは完全に無視して。


―――……


午後3時45分。昼飯を食べ終え、捜索を続けていたが、一向に手がかりを見つけられないままだった。

そんな時……

「ねぇ、そこのキミ!」

「はい?」

後ろから声をかけられて、振り向くと……茶髪の女2人が立っていた。

「何年生?1人なの?」

「いえ、俺は……」

といいかけて、ハッと気づいた。

この2人も、斉藤美希のグルかもしれない。本当のことは避けるべきではないか……と。

「……理工学部1年の蒼羽快斗アオバカイトといいます」

……名探偵コ○ンに出てくる怪盗キ○ドの本名を咄嗟にもじってみたら、意外と実名に近いものになって驚いた。

「へぇ!快斗くんって言うんだぁ。カッコいい名前ねー」

「よかったらお茶しない?キャンパス出てさ」

「あ、いえ、今……」

……参ったなぁ。ここで断ったらますますめんどくさいことになるかもしれない。

でも誘いに乗ったらキャンパスを出ることになるし……ていうか、彼女いるのに逆ナンにひっかかるってどうよ。

と、悶々と考えていると……

「あ……」

数メートル手前を、斉藤美希そっくりの女と知らない男が2人寄り添って歩いていた。

2人は、出口に向かっている……どうやら、キャンパスを出るらしい。

「ねー、どーなの?お茶しよーよー」

ヤバッ。このままじゃ見失う……

「……分かりました!ですが、少し頼みがあります」

あの2人の追跡を依頼すると、2人は少々渋そうな顔をしながらもOKした。




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