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海と想いと君と  作者: coyuki
第1章 恋への目覚め
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第7話 返事

「……彼氏?」

しばし沈黙があった後、硬直してる私に唯が低く問う。

現実に戻され、慌てて否定しようと口を開いた。

「あんた、杉浦先輩の何なんですか?」

だけど、先に声を出したのは蒼井君。

「先輩に向かってあんたとは……1年でしょ?君。礼儀が成ってないね」

「よく言われますよ」

唯の目には、生気がうかがえない。

蒼井君は、なんかいつもの蒼井君の声じゃない……

あの綺麗な笑顔も、邪気みたいな黒いオーラを帯びている。

「あ、蒼井君は補習が一緒の1年生だよ!」

ようやく声を出した。

「……蒼井」

「はい?」

名字を呼び捨てにされてキレたのか、蒼井君の声は低く怖い。

「沙彩には近づくな」

そう言い残し、ペダルに足を置いた唯。

……今しかない。そう思った。

「ちょっと、唯!」

ぐっとペダルに力を入れる直前の唯を呼び止める。

「返事、かなり遅れたけど……唯のこと、友だち以上とは、どうしても思えない!ゴメン!あとさ、そんな風にキレるのって唯らしくないよ!」

ありったけの声。妙に息切れがする。

必死な想いは伝わったのか……唯は、寂しそうに微笑んだ。

「……そっか」

それだけ言って、どこかへと消えていった。

……ゴメン。心の中で、もう一度謝った。


「あの人、高杉唯……って名前ですよね?」

そう聞く蒼井君の顔は、もう普通に戻ってる。

「う、うん」

「あの人、先輩のこと好きなんですか?」

「……前に、告られた」

改めて、告白されたことをまた、思い起こす。

「……なんか、嫌味そーな人ですよね。いきなり俺のこと睨んできて……」

「いや、唯はいい奴だよ!なんか、今日、人が変わったみたいでビックリしたけどっ……」

でも、それも、私のことを好きが故……

うぬぼれかもしれないけど、安易にそう思えるほど今日の唯は変だった。

「いい奴だったら……告白断る理由、どこにあるんですか?」

「友だち以上には思えないし……」

1年の頃から、女友だち同様に唯と遊んでた。

テスト前は一緒に勉強して、休日は夏姫を交えてゲーセン行ったり……

そんなひと時ひと時の間さえも、ずっと唯は私を想ってた……と思うと、なんか複雑な気持ちになる。

「……あ、そうだ。メアド交換しません?」

話題を変えよう、という蒼井君の心遣いからか、そんなことを言ってきた。

「え?あ、うん」

思いもよらない提案に、ケータイを出す。

……って、ちょっと待てよ?

お母さんに勝手に見られるかも……

ケータイ片手に動きが静止した。

「どうしました?」

「……え?あ、なんでもないよ?」

と、ケータイを開く。

赤外線通信で、蒼井君のメアドが届いた。

やっぱり、お母さんに茶化されるかも。

やっと男の子をメアドを……!って。3時間ぐらい。

……でも、ロックかけておいたらバレない……よね?

ていうか、なんでこんなにもバレるのを恐れてる……?

と、そこへ、何かが背中にぶつかった。

「さーやぁっ!おっはよぉ!」

ハイテンションな甲高い声……桃花だ。

「桃花。おはよ」

ケータイをパチンと閉じて振り向く。

「あ、噂の蒼井大翔!」

「……はい?」

いきなり名前で呼び捨てされ、しかも指で指されたので、蒼井君の表情は「イミワカンナイ」って感じだ。

「こんな道中で何してたの〜?」

「んと、メアド交換」

「マジで!?桃花もする〜!さーや、ケータイ出して!」

半ば強引に桃花ともアド交換をした。

『Momoca-s2-Yusuke.is2Darling……』

……長っ!

「桃花、s2って何?」

「ハートマークだよん」

あ、なるほど。

「大翔君も交換しよ〜!」

「いえ、俺は……」

おそらく、蒼井君は交換しないつもりだったんだろう。

だが、桃花が蒼井君の手の中にあるケータイを奪って赤外線通信をした。

「わぁい!フォルダ内の男の子の名前50人目!!!」

ごっ、50!?

ユースケ君もよく嫉妬しないよね……

「桃花、50人はどうかと……」

「いーじゃーん!ブー!」

あらら。拗ねちゃった。

蒼井君は戻されたケータイ片手に苦笑いを浮かべてた。


そして3人で学校へ。

「明日、学年別テストをする!60点以上取れた者は、明後日あさってから補習免除にしよう!」

巨人先生の言葉に、ホール中がざわつく。

隣の3年生は「うそ〜ん」って言って、その隣の3年生と愚痴を言い合ってる。

蒼井君はなんか余裕そうに笑ってる。

「楽しみ?」

そう聞くと、蒼井君はニッコリ笑って頷いた。

「今回は満点取る気、満々ですから」

どうやら、めちゃくちゃ勉強したらしい。

「100点取る気って……」

「1日も出席しなかった分、挽回して先生等を唖然とさせてみせるんですよ」

自信満々の笑顔。

なんでここまで自信に満ち溢れてるんだろう、この人は……

「100点、取れるといーね。私はとりあえず80点ぐらいを目安に頑張る」

ふと、思った。

補習がなくなったら、蒼井君とも会えなくなるんだよね……

それはちょっと、寂しい。素直に。

せっかく仲良くなったのにさ。

「どーしました?」

「……ううん。なんでもないよ」

……まぁ、メールもできるんだし……ずっと会えないってわけじゃないし、いいよね。

そう答えたところで、巨人からの「静かに〜!」の声が響き渡った。


翌日。テストの日。

……ここでですが、私は毎回の定期テストの朝は必ず寝坊をする。

そして、今日も……

「……し、7時50分!?」

寝ぼけ眼で見た時計で、一気に目が覚めた。

ヤバ、あと10分で支度しないと!

8時に特急が来るから……と、時間配分しながら着替えをして、テーブルに並べられた朝ごはんを食べて家を飛び出す。


「な、なんとか間に合った……」

特急に乗り込み、一息つく。

えっと、20分ぐらいで海宮駅に着くから、そこからマジで自転車かっ飛ばして20分ぐらいで学校着くから、10分前ぐらいには間に合う……額から流れる汗を、手で拭った。

……なんか、蒼井君がいない車内は……不思議な感じがする。

こう、何もかもが……

そう思う私は……もう、蒼井君が登校中一緒だ、っていうのが普通となってたのかもしれない。


海宮市駅に着き、久しぶりの自転車にまたいでかっ飛ばす。

「つ、着いた……」

時計は8時40分。なんとか間に合った。

玄関をくぐり、大ホールへと急ぐ。

「あ、さーやーっ!珍しく遅かったね〜!」

ギャルグループと騒いでた桃花が私に手を振る。

「寝坊しちゃって……めっちゃ急いだ……」

桃花以外にも黒ギャルが3人いて……とりあえず笑顔でそう言って、席へと急いだ。

私的に黒ギャルはちょっと拒否感があるんです。

「あ、先輩。どうしたんですか?」

「あ〜、寝坊した。起きたの、7時50分で……」

「そーですか……お疲れさまです」

そう言って微笑む蒼井君。

……ヤバい。マイナスイオンただよいすぎだよ、その笑顔は……

きっと1時間持久走してもその笑顔見たら一発で疲れが和らぐだろうな。

「お〜い、席着け〜!」

巨大先生の合図で、カバンを足元に置く。

「今日は隣の上級生に聞いちゃいかんぞ〜!喋った奴、即延長補習だからな!」

そう言って、前から回されるプリント。

始めは……世界史だ。

「では、始めぃ!」

補習免除か否かを賭けたテストが、今、始まる……




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