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海と想いと君と  作者: coyuki
第5章 今までとは違う日々
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第77話 遠足6-男の意地-

「15班、4時55分到着!ギリギリだったわね」

な、なんとか間に合った……

担当の櫻木先生に到着の報告をし、私たち5人は地べたに座り込んだ。(たっくんは班長としてクイズの結果などを提出しに行っている)

ハタから見れば、ガラの悪い高校生集団……もう、どうでもいいわい。

「つ、疲れた……」

「なんとか間に合ってよかったですね」

そう言う水野君の表情は、まるで歩いてきたかのよう……

……蒼井君とキョンと陽香はバスケ部、たっくんと水野君はサッカー部。

文化部なの、私だけじゃん……

3年間のバスケ部ブランクや日頃の運動不足がものを言ったのか……私だけ、物凄く疲れた。

「でも、キョンとたっくんって10メートル間のビーチだったでしょ?よく見つけられたよね、あんな小さい校章」

「・・・」

キョンに話しかけたつもりなんだけど……何故かシカト。

ずーっと一点を見つめている。

「キョーン?」

もう一度呼んでみたけど……反応ナシ。

「杉下さん?」

水野君が呼ぶと、やっとハッとして気づいた。

そして、お決まりのセリフ「杉下じゃないっ!」が耳をつんざく。

「どうしたの?キョン、ボーっとして……話しかけても全然気づかなかったよ?」

「え?そう?ごめん沙彩ちゃんっ!ちょっとキョン、疲れちゃって……」

わざとらしく明るくそう言うキョンを、みんなは心配そうな目で見ていた。


「さーや、たっくん!ギリギリだったねー」

既にゴールしていたのか……夏姫が爽やかな笑顔をふりまきながらこっちへ来た。

「よっ!沙彩、拓海、蒼井!遅かったなー!」

「おっ、唯ちゃん!」

ウィズ、唯。こちらも余裕そうな笑顔。

……てか、唯とたっくんの絡みって初めてじゃない?(一応2人とも海宮人なので同中っぽいので、お互い名前で呼ばせてみました。by作者)

「唯の班は?いつ着いたの?」

「1時間ぐらい前。結構スポットが近場だったからさ!」

へぇ。そりゃあ羨ましいもんでっせ。

「こっちは誰かさんの極悪なクジ運のせいで隣町まで進んだんだよ……」

「うっわ、キツ!ていうかさーやの班って恐怖山行ったんだって?噂で聞いたけど」

「あ、それ私も聞いた!!」

「そうそう。危うく行方不明者出るとこだったよ……」

「つーか、さーやの班じゃねーし……俺が班長で俺の班だし……」

いじけるたっくんを見て、みんなでひとしきり笑った。

「んじゃっ、もう各自解散だし……沙彩、すまんが蒼井借りてくぞ!」

「え?俺?」

唯が、蒼井君を?

「う、うん、いいけど……じゃあ陽香、一緒に帰ろっか」

「は、はい!」

「キョンは疲れたぁー……車で送ってもらうー」

「じゃっ、俺は彼女と待ち合わせてるんで!」

少々ウキウキしている水野君。

夏姫はもちろん、たっくんと遊んで帰るようで……

にしても、唯が蒼井君を借りてって、どうするつもりだろう?


―――……


連れてこられたのは、旧校舎裏。

「ここね、俺と沙彩が別れた場所!……まぁ、途中でお前が入ってきて、俺を突き飛ばして沙彩を連れ去った因縁の場所……って言えばしっくりくるかな?お前にとっちゃ」

「因縁て……」

一応、あの時はすみませんでした、と謝っておいた。俺の勘違いに付き合せちゃったわけだし。

当の本人は、今はあんまり気にしていないらしい。

「沙彩が俺をフッた理由、知ってるか?」

「……知りませんけど」

「アイツね、ずーっとお前のことが好きだったわけ。んで、お前があの西院とか何とかいうお嬢と付き合ってるって知って、弱ってる間につけ込んで……半ば無理矢理みたいな感じで付き合ったけどさ。結局、アイツの目はお前を追ってた。でも、沙彩は俺を好きになるために頑張って……それが、俺にとっちゃ、かなりかわいそうに見えてさ。好きな奴に無理させるよりかは、自分から離れていこうって思って、伶……五十嵐伶っていうダチにも協力してもらって、わざとフるように仕向けたんだ」

……高杉先輩の声が、だんだん暗くなっていくのが分かった。

この人も……俺と同じように、杉浦先輩のことが好きなんだ、きっと。

「にしても、俺も結構未練がましいよなーっ!なんだかんだ言って、まだ沙彩のこと好きなわけだし!でも、別れたことは後悔してないわけ。俺、結構変わったっしょ?」

「えっと……はい」

前の高杉先輩がどんな人で、杉浦先輩と付き合ってどうなって、今はどう変わっているのか……いまいちよく分からないから、曖昧な返事をした。

「なんか、前の俺に戻れたっつーか……やっぱ不安事って処理することに越したことはねーな!」

「不安事……か」

さっき、杉浦先輩、高杉先輩、東郷先輩、小原先輩が談笑していたシーンが、脳裏に浮かぶ。

なんか……杉浦先輩が、どっかの違う人に見えてしまった。

「何何?オールマイティなお前にも不安事とかあんの?」

「オールマイティって……んなことないですよ。全然」

オールマイティ……完全無欠。

そんな人間、この世にいるわけがない。俺だって、まだまだ欠点だらけなんだから。

「なんつーか……やっぱ1年も年が違うと……こう、信頼度的なものが違うんだなって」

「ふーん。俺らの仲良し度に嫉妬しちゃったってわけだ?」

……なんとなく、ムカッと来た。

「そんな顔しねーの!せっかくのイケメンが台無しだぞー?」

「……でも、年の差なんかにへこみませんから、俺。いつか、高杉先輩に絶対追いつくし」

そう言い、高杉先輩の目を見る。

先輩は、フッと微笑んで……

「そうそう、その意気!でないと、俺か誰かに沙彩取られるぞー?あー見えてアイツ、すんげぇモテるんだから!」

「……分かってます。ちゃんと、大事にしますから」

「よし、そうこなくっちゃ!じゃっ、とっとと帰りやがれぃ!」

高杉先輩に背中を押され、旧校舎裏を出た。

日は傾いて、空がオレンジ色になっている。

……今、この綺麗な夕日を一緒に見たいのは……他の誰でもない、杉浦先輩。

「……電車の時間、まだ間に合うかな」

自転車にまたがり、駅のホームを目指してペダルを踏んだ。


―――……


「ゆーいっ!」

「おっ、夏姫、拓海!盗み聞きでもしてたのか?」

茂みから、一組のカップルがひょこっと顔を出した。

「だって大翔君と唯が殴り合いとかし始めたらいけないなーって思って、こっそりついてきたの!」

「ま、俺はそんなことねーだろーとは思ってたけど!」

殴り合いって……

いくら俺でも、後輩を殴ったりはしないでしょ。

「でもさー、私ら4人で話してたりしただけで、あんな風に思ってたとは……大翔君って、意外とさーやに似てるんじゃない?」

「似たもの同士って、やつ……かな」

案外、そのほうがうまくやっていけるだろう。

「でもさー、唯ちゃん、嬉しかったんじゃない?“あの”蒼井大翔に「絶対追いつく」とか言われて」

「別にー?ちょっと不思議に思っただけだよ」

あんなに目標としてきた男に、そう言われたもんだから。

まるで、ライバルに「お前ってスゴいな」って言われたみたいで。


それに……ちょっと勿体ねーなって思ったんだ。

沙彩が、あんな……俺が惚れ直すほどの綺麗な笑顔を見せるのは、蒼井の前だけだってことに、当の本人はちっとも気付いてねーから。

……ま、フラれた男の意地として、絶対教えてやんないけどね。




遠足編、終了しました!

いやー、結構長く続いた遠足編……いろいろなエピソードがありましたねー。

第一目標であった、沙彩と大翔のラブシーン(?)もしっかり書けた(だろう)から、結構自分の中でも達成感があります。

後半の大翔&唯の絡みは、やっぱ頭の中に劇画みたいなのが浮かんできます……

2人とも、なかなかの美少年のはずなのに、なぜ……orz

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