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海と想いと君と  作者: coyuki
第5章 今までとは違う日々
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第70話 行き先

ちなみに、ほとんどメンツは変わらない、って言ったけど……

「唯と離れちゃったねぇ」

「そうだねぇ」

昼食タイムに夏姫と弁当を食べながら、ふと夏姫が呟き私も返した。

私たちが所属する3-Aは文系国公私立大学進学クラス。3-Bは文系就職・専門学校進学クラス。

唯は3-Bに入った。

そして、私と夏姫の他に……

「でもこのクラス、何気にイケメン多くない!?加えて将来有望!ああ最高……っ!!!」

久々の登場、イケメン好きの河野さん。

仲いい子はB組に入ったらしく、よく私たちとつるむようになった。

「河野さんはどこ大志望なの?」

「近江大学(私立)だよ!マネージャーの試験に受かって、イケメン俳優かモデルのマネージャーになって……ウフフ」

さ、最後のウフフはなんでしょう……?

「そういえば、前から気になってたんだけどさ、大翔君って何になりたいって言ってた?」

「え?なんで?」

「あんなに頭いい子が何になりたいか気になっちゃってさ~」

「うーん……なったら教える、って」

そう言うと、夏姫は「え~!意味ないじゃん!」と駄々をこねた。

「じゃあ、蒼井様は何系に進んだの?」

「あ、理系に進んだって言ってた。だからA組かB組かなぁ」

理系かぁ~……と、河野さんは言った。

1年から2年への進級の際は文理選択をするだけで、進学か否かは決めない。

「それよりさ、今日の全校HR(体育館で行う)って遠足の班決めだよね?」

「そうそう!再来週にあるやつ」

海宮高校の遠足とは、まず同学年内の男女で1組のペアをつくる。(クラス解体)

次に他学年のペアと合体し、男子3人女子3人の1班が完成し、その班で遠足を行う。

でも……ただの遠足じゃない。

海宮市市内は、広い故にたくさんの見所スポットがある。(実に100箇所以上)

1班が、そのスポットの名前が書いてある100個のクジから3つを引いて、書かれてあるスポットをまわることになる。

その3つの間を、足だけでまわれるか、電車やバス(運賃自腹)を使わないとまわれないかは……運次第。

でも、そんなことより……

「私、幼なじみとペア組んだんだけど……夏姫ちゃんやさーやは誰と組むの?」

ペアをどうするかが、最大の問題だったりする。

「夏姫はもちろんたっくんとでしょ?」

「あ~……そのことなんだけどさ……ちょっとさーやにお願いがあんの」

「へ?何?」

「たっくんとさーや、組んで欲しいんだぁ……」

……はい?

「え、ケンカでもした?」

「まぁ、そういうとこかな……さーやから言ってね。お願いっ!」

「うん、まぁいーけど……」

どうしたのかなぁ……あんなに仲よかったのに……

「じゃあ、夏姫は誰と組むの?」

まぁ大体予想はつくけど……

「あ、唯だよ!」

……うん。予想通り。


昼休みにたっくんとペアのことを言い、全校HRの時間に一緒に体育館へ。

「何かあったか知らないけどさ、夏姫と早く仲直りしなよ?」

「あ、ああ。うん」

心なしか、たっくんの表情が暗く見えた。


「では、これから1班を作ってその場に腰をおろしなさい」

遠足の担当の先生からの合図で、約540人みんな一斉に立ち上がる。

そういえば……蒼井君は、誰と組んだんだろう。

一緒に登校したときも、特に遠足の話はしなかったからなぁ……

「あ、沙彩ちゃ―――んっっっ!!!一緒に組もぉ―――っっっ!!!」

女子の集団の中から、聞きなれた声がして……

女子の集団をかきわけて、見慣れた姿がやってきて……

「キョン!蒼井君!」

キョンに腕を掴まれて、蒼井君が見えた。


一応デッキ近くに移動した。

「はー……死ぬかと思った……酸欠で……」

蒼井君は、人口密度が高すぎて息苦しかった模様。

「ほんとビックリしたよ!先生の合図があった途端に女の子たちが集まってくるんだもん!このモテ男め!」

キョンは蒼井君の背中をバシッとたたく。

うわー、痛そー……

「とりあえず、2年と3年は決まったな。残りは1年……」

残念ながら、私には1年生で仲良い子はいない。

後輩に対しても友好的なキョン情報からだと、元A中女バス部のメンバーも何人が入学してるらしいけど……前にも言った通り、中学時代は後輩にさんざん恐れられていた。

「あ、小原先輩!」

どこからかたっくんを呼ぶ声がし、見てみると……

うわっ、デカッ……

「久しぶりです、小原先輩!1年生いなかったら組んでもいいですか?」

「ああ、うん。いいよ」

身長推定190cmの小城並みの大男が姿を現した。

しかも、その横には……

「ギャッ!すすす、杉浦先輩っ……」

当時A中1年だった、築島陽香ツキシマハルカがいた。


その場に座り、自己紹介タイム。

「俺、3-Dの小原拓海。このデカい1年とは中学の時の後輩。一応班長なんで、よろしく」

班長は、原則として3年男子らしい。

「3-Aの杉浦沙彩です。よろしく」

「2-Bの蒼井大翔です。よろしく。……あと」

「わっ」

……と言うと、蒼井君はいきなり私の肩に腕をかけた。

「この美人な先輩は彼女なんで手出さないよーに」

「え、マジでー!?」

「やるなぁ蒼井」

「アハハッ!沙彩ちゃん顔赤ーいっ!」

みんながひとしきり反応した後、肩から腕を離す。

あ~……ビックリした……

ほてった頬を冷ましてる間に、自己紹介は続く。

「私、遠藤崎キョン!2-Dだよ!本名は最大のコンプレックスだからキョンって呼んでね!ヨロシクゥッ!」

「俺、1-Eの水野章介ミズノショウスケ。このチビは俺のイトコだったりします。よろしくお願いします」

「わ、私、1-Aの築島陽香です……すす、杉浦先輩は、中学校の時の先輩です……い、色々ご迷惑をおかけすると思いますが、よよ、よろしくです……」

……うーん。私、こんなにも恐れられていたんだなぁ……

「さてと。クジ引いてくるから、待っててな」

たっくんはよいしょと立ち上がり、ステージの方へ向かった。

「杉浦先輩、小原先輩ってたしか、東郷先輩の彼氏じゃなかったっけ?」

「あ、うん。そーだよ。でもケンカしてるらしくってさ……ペア組むのはちょっと気が引けるみたいだよ、お互い」

蒼井君は「ふーん、そっか」と相槌を打った。

ちなみに、桃花とユースケ(ギャルカップル)の仲も只今、相当悪いらしい。

毎日のように、桃花とユースケから愚痴のメールが来る……

「あ、そういえば陽香、部活はどーするの?」

「あっ!バ、ババ、バスケを続けようと思いますっ!」

そう言うと、水野君の後に隠れる。

私は盛大な溜息をついた。

「陽香さぁ、私が怖いのは分かるけど……逆だったらどう思う?後輩に怯えられるなんて嫌じゃん。同じ班だし、仲良くやろーよ。ね?怯えたまんまじゃつまんないじゃん?しかも私、中学の時より何気に(気さくさ度が)進化してるし」

「……ハ、ハイ」

ようやく水野君から離れ、小さく正座をした。


しばらくして、たっくんが戻ってきた。

「よし、じゃー見るか!」

6人の輪の中央に置かれた、3つのクジ。

「俺がこれ裏返すから、さーやはそれ、ショースケがそれを裏っ返してくれ」

「イエッサー」

各々が裏返したクジには……

“海宮テーマパーク”“海宮神社”“海宮海”

「さて、どうするよ?さーやさん」

「私に聞かないでよ。海宮人のたっくんが決めてよ」

「・・・」

……黙り込んでしまった。

「杉下先輩、この3つの間……10キロ近く離れてるんですよ、それぞれ」

「……は!?じゅっきろ!?」

“杉下先輩”をツッコむことを忘れ、派手に叫ぶ。

「あ、この海宮神社って……確か超超超―――――っっっ!!!山奥だよぉ!」←キョン

「この神社がある山って……確か、恐怖山って名前じゃなかったっけ」←蒼井

「海宮テーマパークって、ほぼE市となりまちだったような……前、友達と行ったことあるから」←陽香

「まぁ結論は……小原先輩、クジ運なさすぎってことですかね」←水野

……高校生活、最後の遠足。

なんだか、波乱の予感がしてやまない……




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