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海と想いと君と  作者: coyuki
第3章 片想いの日々
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第62話 灰色の空

「本番では、テノールはシ♭の発音、メッゾソプラノはオクターブの変化を意識して、ソプラノはメロディが大きくなりすぎないように。以上」

文化祭2日目。リハが済み、恒例の感想タイム。

……いや、ただひとつ恒例じゃないのは私のアドバイスが1分とかからなかったこと。

1分以下で欠点を言えるほど、かなりよくなった。

「54小節目のこのフレーズ、結構歌い方が平坦に聴こえるので、このフレーズが持つ意味をしっかり理解して歌ったらよくなるかなーと思います」

シメは蒼井君。アドバイスもうまくなっていた。


私たち水ブロックは、所定の位置に座った。

「杉浦先輩」

「ん?」

「本番での配列、もう一度確認したいんだけど……これでいいんだよね?」

そう言い、蒼井君が見せてきた1枚の紙。

武田先輩が前回の話し合いのときに見せてきた、雑な配置図を彼が綺麗に書き写したものだった。

「テノールが右、メッゾソプラノが真ん中、ソプラノが左、前から学年が若い順……うん、バッチリ」

「ありがと。これでちゃんと誘導できる」

そう言って、可愛い笑顔を見せた。

「あ、そういえば、昨日2-Dのカフェ行って……すっごい男前な人に注文とってもらったんだけど、あの人なんて名前?」

「え?なんでまた……」

「シゲオがすっごい知りたがってんだ。「俺より注目される奴の名を是非知りたい」って」

……シゲオ君、なんて無駄なことを考えて……

その人、実在しないのに……なんて言えない。

「え、えと……その人、モデルやっててすっごく忙しいんだぁ!だから名前知っても顔は見れないと思うよ?」

「へぇ、モデル……どうりで……」

納得したように頷く蒼井君。

な、なんか悪いなぁ……

「じゃあ、せめて名前だけでも」

「い、いや~……その子、芸名で活動してるから……本名がクラスメイト以外にバレたら、ちょっと……って言ってたから……ごめんね」

「……そっか、残念」

ああ、もう、ほんとごめん!蒼井君、シゲオ君……

その人、モデルなんてやってないし、第一私の男装なんで実在しませんので……

心の中で深々と謝ってると、開始のブザーが鳴った。


―――……


文化祭の2日目の大種目、合唱コンクールが幕を閉じた。

「メグゥ!やったね!2位だよぉ」

私たちが所属する風ブロックは、惜しくも2位。

ちなみに1位は水ブロックだった。……蒼井のブロック。

「うん、結構頑張ったよね」

速見ハヤミが単独で思いっきり音程ハズしたからなぁ~……多分、あれがいちばんこたえたね」

美来と歩海。2人で感想を言い合いながら、教室に戻ってSHRを済ませた。


「私たちは帰るけど……メグは片付けだっけ?」

「うん、いろいろね。先帰ってて」

「頑張れ~実行委員!じゃあね」

2人を先に帰し、私は実行委員のみで行う場内片付けに。

まず、およそ500脚並んでいるイスの収納だ。


合コン(合唱コンクール)会場であった体育館に入ると、数人の人が早くも収納を始めていた。

収納に携わるのは、約3人×6ブロックの18人。1人30脚前後収納しなければならない。「

「あ、窪田惠夢ちゃんだ」

数人のうちの1人……杉浦先輩が、私に気づいて声をかけた。

……てか、先輩すごっ!片手5脚ずつ持ってるし……

「あの、重くないですか?手伝いましょうか?」

「ううん、全然平気。それより、そこの塊崩してくれる?」

「あ、はい……」

数10脚イスが集結しているところが塊らしい。

にしても杉浦先輩、すっごい美人なのにとんでもない力の持ち主なんだなぁ。

イス10脚を収納した先輩は、森ブロックの1年生男子の手助けをしている。そして、1年女子にも。

……いけない。感心してる場合じゃない。

とりあえず、力も平均的な私は片手2脚ずつ、計4脚のイスを持って収納場所に向かった。


15分後、見事にイスは全部片付いた。

「つっかれたぁ。絶対100脚は片付けたなぁ……」

偶然隣にいた杉浦先輩がそう呟く。

「え、100脚もですか?」

「あ、うん。うちのブロックの1年と3年、外の方にまわってるから」

外の方、というのは、外に出された看板だとかポスターとかの片付けのこと。

教職員も手伝うから、実行委員は5人ぐらいで足りるらしい。

「3年の武田先輩には「俺らの分も片付けヨロシク!」って言って……1年の蒼井君は体育館の方にまわるって言ったけど、武田先輩に連れてかれちゃって」

ハハッと笑う杉浦先輩。

……うん、モテるだけある。少なくとも1年生の中で50人ぐらい(女子も含む)は杉浦先輩を想ってる。

「杉浦ぁ!ちょっといいかぁ?」

「あ、はい。じゃあね、惠夢ちゃん」

数学の巨島先生に呼ばれた杉浦先輩は体育館から姿を消した。

「さてと。私は荷物でも取りに行こっかな」

HR棟へと、足先を向けた。


―――……


職員室に入った私は、巨大先生から1枚のプリントを渡された。

「……あと、蒼井と武田にも渡しといてくれ!」

と言って、追加で渡された2枚のプリント。

廊下に出て、目を通した。

「実行委員同士の打ち上げ会について……幹事・巨島文男キョジマフミオ

巨島文男、というのは巨大先生の本名。知る者は少ない。

打ち上げ……か。

とりあえず、外に出よう。


校門を丁度出るところだった武田先輩を呼び止めた。

「おー沙彩ちゃん。どうしたの?」

横の金パのギャルが軽く睨んでるけど……まぁいいや。

「これ、巨だ……いや、巨島先生が武田先輩に、って」

「へぇ、打ち上げか。サンキュー沙彩ちゃん」

渡したプリントを、先輩はポケットに突っ込んだ。

「あの、蒼井君はどこにいるか知ってますか?」

「大翔君?……ああ、ヒロ君らが担当するところ今終わったとこだろうから荷物でも取りにあがったんじゃない?」

「そうですか。ありがとうございます」

手短にお礼を言って、すぐ校内に戻った。

てか先輩、蒼井君のことヒロ君って呼ぶんだ。初めて知った。


1-Dに行ってみたけど、蒼井君の姿はなかった。

「帰っちゃったのかな……」

……って呟き、気づいた。

そうだ、実行委員はそれぞれの会議教室に荷物置いたんだったっけ……

すぐさま踵を返し、3-Aに向かう。

ふと窓の外を見ると……雨だった。

「折りたたみ、持ってたっけ……」

なんて思いながら、3-Aへ向かう足をどんどん進める。

……なぜか、雨音がだんだん大きく聞こえた。

やだな。なんか気色悪い。……悪い予感がする。


ようやく、3-Aという札が見えた。

「なんか長く感じたな……」

いつもなら、どうってことない3年生のHR棟までの距離。

今日は果てしなく遠く感じた……

ドアを開けると、そこには……


「あ……」


キスをしている、男女2人。

男子の方の髪は……黒。

私が、見間違えなんかしない。……蒼井君だった。


とんでもなく、大きい雷の音が聞こえる。

気がついたら、その場から逃げ出していた。


……空は……全部、灰色に染められている。灰色に支配されている。

まるで、私の心を丸映しにしたようだ。




3-Aでの3人の位置関係を示すと、北にドアがあって沙彩がいるとすると、南にある窓に、北向きに大翔が立っていて、大翔の目の前に女の子がいる模様。

今のところ、沙彩は女の子の顔は見てません。

文章だけで位置関係を示すとなると難しいですね(^^;)

さて、次回は打ち上げ編!

……絶対何かありますが(^^;)

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