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海と想いと君と  作者: coyuki
第1章 恋への目覚め
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第5話 意味

旧校舎裏……夜にユーレーが出る、と噂の旧校舎の裏側。

まぁ、ユーレーは目に見えるものじゃないから別に怖くない。

別に、生きているもの以外のものが存在したっていいじゃない、と思う私。

それはさて置き……唯がさっきから、ずっとソワソワしてる。

「どしたの?唯」

「………」

気づいてないね、これは。

「ゆーいっ!」

わざと唯の目の前に立って、大きく手を打つ。

途端、唯はハッとした表情を浮かべた。

「あ、ゴメン。ボーっとしてた」

「ボーっとしてるなら帰るよ?暑いし」

日陰になってるから、別に暑くないけど……早く帰りたいのは事実。

「だったら呼び出した意味ないし」

「んじゃあ早く用件言ってよ」

「……ったく、かすなよな……」

いきなりキレて頭を掻く唯。意味分からん。

「……沙彩、もうちょっと寄って?」

目の前にいる唯は、更に近づけと手招きする。

疑問符を頭に浮かべる私は2歩ぐらい唯に近づく。

その途端……


……今、おかれてる状況が、分かんない。


2歩近づいた途端、顎を持ち上げられて、口が何かに強く、強く塞がれた。

唯の唇。もしかして……キス?

どうやって回避したらいいのか分からない私はただ、怖い、と思いながら目を強く瞑った。

「……好きだ。1年の頃からずっと」

唇を解放された私の真っ白な頭の中に響いた、言葉。

「返事、待ってる」

その場で返事を求めず、唯は走り去って行った。

唯が角を曲がる時、私の目に映った……唯の真っ赤な頬。

……本気?

口に手を当て、稀に吹いてきた強い風に髪がなびいた。


「あ、さーやーっ!」

駅まで行こうとしたら、桃花が駆け寄ってくる。

あ、桃花って海宮人だったっけ。(海宮人……海宮市に住む人のこと。何故か男女ともに顔立ちが整っている人が多い。)

「桃花。今日はサボんなかったの?」

「そりゃー!1日勉強はキッツいしー」

……確かにね。

「てゆーかぁ、さーやって“あの”蒼井大翔と付き合ってる系?」

「“あの”って……なんで?」

「なんかさぁ、噂してたよぉ?蒼井と2年生の女の先輩が一緒に補習来ていた〜って!」

多分、電車で乗り合わせた人たち……かな。

「へぇ、そーなんだ。残念ながら、付き合ってないよ」

「えぇ!マジで!まぁそれがいいかもね……」

桃花が目を擦る。

それがいいかもね……っていう言葉が、耳に残った。

「んぎゃっ!マスカラ取れたし!」

……うん。そりゃ、目擦っちゃ取れるよ。

「ちょっと公園寄ってもいい〜?」

「うん、いーよ」

……最早、桃花の中で私は「一緒に帰ってる人」らしい。


海宮公園。おっきな噴水があるのが特徴的な公園。

それ以外はほとんど特徴がないという……

ベンチに座り、桃花が手鏡を取り出す。

「あ〜〜〜……」

不快そうに声をあげ、ビューラーとアイラインとマスカラ、アイシャドウ……様々なメイク道具を取り出し、手際よく目に黒色をのせる。

「そういえば、蒼井君って有名なの?」

「1年の河合によるとさぁ〜、中学時代に軽く30人ぐらいと付き合ってたらしーよ??」

「えっ、マジで!?あんな素直そうな子が!?」

ガタッと勢いよく立ち上がった私。

桃花は「おわっ」と声をあげ、メイク落としを取り出した。

「あ、ゴメン。アイメイクずれた?」

「まぁいいさ!なんせ桃、心広いですからっ!」

桃花の言葉に首を捻った。

「あぁっ!首捻ったぁ!」

「アハハ……それより、なんで1学期中、蒼井君学校来なかったか知ってる?」

「なぜかってのは聞いてないけど〜……本人に聞けばいーじゃん!」

「内緒、って言われた」

そこを問い詰めるんだよ!と、マスカラを突き出してきた桃花。

そこまで根掘り葉掘り聞く性分じゃないです……

「てゆーかぁ、さっきからさーや、蒼井君のことばっかり〜!」

「……話の発端は桃花からじゃん」

「あ、そっかぁ!」

……やっぱバカだ、この子。

アイメイクを終えた桃花は、先ほどよりド派手に盛ってる。(ついでに擦ってない方の目もメイク直ししたらしい)

「……浜田ブ○トニー……」

「え〜?何〜?」

「あ、なんでもなーい」

浜田ブ○トニーとは、漫画家兼タレント。

ギャルで背がちっちゃいから、桃花にそっくり。

「てゆーかぁ、さーやって好きな子いないの〜?」

今度はグロスを取り出しながら聞いてきた。

「……いない、なぁ。」

先ほどの唯からの告白を思い出して、眉をひそめた。

「変なカオーッ!桃はいるよぉ!マイ・ダーリンのユースケ!」

あ〜、ハイハイ。あのギャル男ね、なるほど。

「好きな人じゃなくって、彼氏じゃん」

「ムッ!ユースケのこと、大好きだもん!」

どうやら、好きな人=彼氏という方程式が桃花の中で成り立ってるらしい。

「ふーん……」

「さーやも作ったらいいじゃん!楽しいよ〜毎日!」

桃花がニヤリと笑みを見せる。

「へぇー……」

毎日が楽しい……ねぇ。


それから1時間ぐらい桃花と語った。

唯から告白されたことは言わなかったけど……

家に帰ったら、お母さんが仁王立ちしてた。

「沙彩。ケータイ見てみなさい」

「え?なんで?」

「いーから」

言われるがまま、ケータイを開く。

……お父さんからだ。

『補習を1日でもサボったり、次回のテストで赤点取ったら海坊主に食わせるぞ。父。』

う、海ボーズって……いるのか!?

てかお母さん、お父さんにチクったな……

「海坊主に食われないためにも勉強しなさい」

「はい……」

DEAR蒼井君。

勉強する意味分かりました。

私の場合、海坊主に食われないためです。




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