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海と想いと君と  作者: coyuki
第3章 片想いの日々
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第54話 新学期バトル

「おい窪田!まだホームルーム終わってねーぞぉ!!!」

担任の声も気にせず、反対側校舎のD組へ。

走ってる途中にホームルーム終了を告げるチャイムが鳴った。


D組に到着し……

「蒼井大翔はいる!?」

ガラッと戸を開ける。

教室内がシーンと静まり返った。

「委員長なら、さっきダッシュで会議室行ったぞ?」

「ほんと、あのダッシュは風みたいだったし!」

「なぁ!ほんとヤベェ!」

ダッシュのすごさについて、またざわつきを取り戻したD組。

「へ?会議室?」

委員長が集まる会議室。ホームルームの前に集う。

その日の授業について、変更などの伝達事項を教頭から聞き、それをクラスみんなに伝える。

「でも、今更……ホームルーム終わったし」

「あ~あの委員長……」

と、目の前の男子が言いかけたとき……

「今日の5限目の英語、リーディングからライティングに変更!あと選択語学でフランス語とイタリア語とってる人は1-Aに4限目に集合な!」

後ろから、ざわめきをピタッと止ますほどの声が聞こえてきた。

「よっ!ド忘れした委員長、お疲れ!」

「ああ。ほんっと忘れてた……冬休みボケってやつ?」

「授業の伝達ぐらい、浅田ガクタンがやればいーのになぁ?」

私の頭上で交わされる会話……

そりゃあ、私は背がちっちゃいですし……ノープロブレムだろうけど……

「……頭上で会話すんの、やめてくださらないかしら」

わざと“かしら”口調で言って、振り向く。

「あ、ごめん。えっと……誰だっけ」

……ほんと、ありえないぐらいのツケメン……いや、イケメンがそこにいた。


「マジ?中学生からずっとトップ死守って……」

「……随分と疑ってる口調だね」

「そりゃあ」

そのD組委員長に期末のことを聞くと……あっさりと、「うん」って答えられた。

で、私のことを話すと……この反応。

「じゃあ……」

と、私はケータイを開く。

「これでどう?」

と言って見せたのは、中1の1学期中間から高1の2学期中間までの成績表の写メ。

順位欄のところは、常に一桁。総合順位に関しては、1以外をとっていない。

そこを見てほしかった。だが、この“どこかズレたD組委員長”は……

「スゲェ、全教科の平均偏差値85.8じゃん。うわ、90以上とかあるし」

……偏差値に目がいったらしい。

しかも、この10数秒間の間で中1から高1までの全教科の偏差値平均を暗算で編み出してるし……

……うん、帰ってほんとに合ってるか確認してやる。

って……

「いや、本題これじゃないし!」

いつの間にか、自分中心になっている。

委員長の手からケータイを取って、パチンと閉める。

「単刀直入に言うけど……」

「ん?何?」

「勝負しよう、今日明日明後日の新学期テストで」

……案の定、委員長は何も言わない。

でも、ニコリと笑って……

「うん、いーよ」

いともあっさりと承諾した。

よし、あと15分間……みっちり勉強するぞ。


それから、3限目までみっちりテスト。

我ながら、完璧な出来……×をつけるとしたら、どこにつける?と、先生に問い質してもよいぐらいの解答用紙を提出した。

そして、明日明後日。それを繰り返して……

「ふあ~っ!やっと終わったぁ……」

美来が私の机に来てのびる。

「ここ3日間、メグとちょっとしか話せなくてつまんなかったよぉ」

「ごめんごめん」

「ま、メグはテスト前になると、ほんっと“近寄らないでオーラ”をガンガン放出すっからね」

歩海も来て、坂村の席を借りて座る。

「そこんとこは美来も分かってるよ。ね?」

「う~……そうだけどさぁ……」

窓の外を見る。

丁度、反対側の校舎にいる蒼井大翔を見つけた。

「……絶対1位を奪回してやるんだから…………」

そう呟き、拳を握り締めた。


「さーやぁ!どうだった?テスト~」

「あ~、うん。まぁまぁだったよ」

新学期テストが終わり、4限目。

3日間に渡って取り組んだテストが一度にドバッと返却された。

まぁまぁ……とは言いつつも、結構ヤバいかもしれない。

「へ~……どれどれぇ」

「あ、ちょっと夏姫!」

気がつくと、夏姫は私の答案用紙を手に持っていて……

「数学……45……理科の生物……51……」

ズタボロなその紙を、慌てて奪い返した。

「相変わらず、理数系は凄まじいね、さーや」

ニコッと笑う夏姫。

あ~もうっ!このクラスはⅠ型だから理数系はどうでもいーの!(Ⅰ型=文系。ちなみにⅡ型=理系)

って、自分で言って自分で疑心を抱いてるのが否めない……

「大翔君に教えてもらったら?」

「・・・」

夏姫にとって、私の理数技能は蒼井君より下ってことか……

いや、ていうかそれ以前に教えてもらうとか無理。心臓がもたん……(そこか)

「……たっくんってⅡ型だったっけ?」

「Ⅰ型だよ」

「じゃあ、唯って理数の成績よくなかったかなぁ……?」

「2学期の理科と数学の成績、1って言ってたよ?」

「じゃあ、伶君は……」

「そりゃあ、伶君はほとんどオール5に近いって言ってたけど……バカンス中じゃん」

……そう。あのお坊ちゃまは冬休みが終わったにも関わらず、ローマの休日を楽しんでいる。

つまり、イタリアにバカンスに行ってるんだ。

「……もういいよ、数学と理科は。諦めた」

「そういや、さーやの進路ってどこだったっけ?」

「一応、瀬名大島大学」

瀬名大島大学……東京都にある大学。(※架空です)

公立大学の文系の中でも、特にレベルが高い大学だ。

「へぇ、瀬名大島かぁ。私はイザベラ女子大学!」

「イザ大って……私立かぁ。いーなぁ」

夏休み前。第一希望だった私立を断念せざるを得なくなった。

「まぁ、お互い頑張ろう!」

「……うん」

でも、今では瀬名大島もなかなか魅力的に見える。


私の夢は、検察官。

物的証拠を探し出して、法廷でそれを基にして被告人の有罪を主張する。

昔から、お母さんに憧れて夢見てきた職業なんだ。

まぁ、お母さんは刑事なんだけどね。


「え――――――っっっっっ!!!???」

どこからともなく、馬鹿にデカい超大声がきこえてきた。

「誰だろ?」

「さぁ?今、1年のテスト返却と順位表配布の時間長引いてるから……思惑通りの順位じゃなかったんじゃない?」

窓の外を見て、答案用紙を返却している1年E組の教室を覗きながらそう言った。




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