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海と想いと君と  作者: coyuki
第3章 片想いの日々
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第53話 学年トップ

それから、新年。

一応ちょっとは勉強しつつも、ほぼダラダラした生活を送っていた。

その間にお父さんは海にまた帰った……いや、海に帰ったって死んだみたいだな。

正しくは、仕事に戻ったってとこ。

お母さんもまた刑事の仕事に戻り、私も今日から学校。またいつも通りの生活スタイルに戻った。


「おっはよ~!さーや!」

電車に乗り込むと、まるで「心機一転しました」と言わんばかりにキメてる夏姫が笑顔で手を振ってきた。

「……3学期デビュー?」

「ま、そーいうとこ?コスメも新しくしたし~!」

私はというと……特に何もなく。いつものごとくストレートにマスカラとリップつけたぐらいだ。

大体私に心機一転なんて言葉は不相応だ。

「にしてもさーや……相変わらずスゴイね」

「何が?」

「こんな真冬なのに移行期間服なんて……」

長シャツにセーターかベスト。これが海宮高校の夏服から冬服or冬服から夏服への移行期間の制服だ。

……確かに夏姫の言うとおり、周りで寒々とした感じでブレザーを羽織い直している女子高生数人と比べちゃあ、だいぶ私は変わってるのかもしれないな。

「わぁ、見て見て!イケメン四天王!」

「マジ!?新年早々拝めてラッキー!!」

周りの女子高生が色めく……彼女らの視線の先には、蒼井君にカイジ君、ユウヤ君、シゲオ君。

……うん。女の子が騒ぐだろうな、この4人が一緒にいると……

「ほんっと、新年から超注目の的だよねぇ。1-D四天王メンバーは」

夏姫が「やれやれ」と言った感じでケータイを開けた。

なんか……2学期の最初みたいだ。


電車から降りて、歩く。

珍しく寝坊しなかったためか、だいぶ時間に余裕があった。

「見て見て!これ、たっくんと撮ったプリクラァ!」

と、夏姫は自分のケータイの裏を見せ付ける。

「キスプリじゃん。よくつける勇気あるね」

「あったりまえじゃん!愛の証だよぉ!」

愛の証って……ちょっとサムいぞ。いやサブいぞ。

思えば……唯との思い出の品、って少なかったな。あのミニーのストラップだけ……

と、ぼんやり考えてると……

「おわっ」

背中に何かがゴスッと刺さり、私は訳分かんない声をあげ、ぶつかってきたものは「……あ」って言う。

「すみません、前見てなくって……」

振り返ると……2つ結いの女の子がいた。

……あれ?この子、どっかで……そうだ、1年でトップの窪田惠夢クボタメグムだ。

その子の手には、英単語が書いてある。

「窪田さん、勉強するのはいいけど前見てないと危ないよ?電柱にぶつかって頭おかしくなったら、新学期テストがうまくいかないじゃん?」

「え、なんで私の名字……」

「結構先輩の間でも有名だったりするし?」

「そうそう!私も知ってるよぉ!」

夏姫も知ってるらしく、話に入ってくる。

「よかったら一緒に学校行かない?」

「は、はい」

……ということで、久しぶりに女3人、という形態で学校に向かうことになった。


「へぇ、入学した時からトップかぁ」

「はい。新入生テストからずっと……やっぱ、誰にも譲りたくないんで」

窪田さんの口から、感心する事実が飛び出す。

新入生テスト、1学期中間期末、2学期中間と、ずっとトップを死守してきていること。

「え、じゃあ2学期期末は?」

夏姫が、ふとそう聞く。

窪田さんは「えっと……」と声を詰まらせ、

「……奪われちゃいました」

彼女はヘヘッと笑った。

「奪われちゃった……?」

「え~、誰に?ず~っとトップの天才ちゃんを誰が追い越しちゃったの?」

「さすがにそれは分かんないです。成績は非公開だし……」

そう。海宮高校は成績を貼り出す措置をとってない。

だから、人に教えない限り順位がもれることはないのだ。

「まじない部の1年生に占ってもらったら?」

「その1年生が私の友達なんですけど……出てきませんでした」

……まじない部、しっかり。

「だから新学期テストでは絶対1位を挽回したいんです!」

と言い、窪田さんは意気込む。

「ね~メグちゃん、そんなに勉強しておもしろい?」

夏姫はズバッと聞く。

「おもしろくはないですけど……勉強が唯一の、私が全力で戦えるものなんで。戦うからには、勝ちたいんです」

おぉっ。なんか深イイ発言。

「そっか。頑張ってね」

気がつくと、もう学校に着いていた。


「おっはよぉメグゥ!」

教室に着くなり、原美来ハラミライ……例のまじない部の唯一の1年生部員が私に飛びつく。

「おはよ、美来。歩海は?」

「歩海はまだ朝練だよぉ!」

「へぇ。毎日頑張ってるねぇ」

歩海とは、高倉歩海タカクラアユミのこと。

バスケ部に所属してて、1年生で唯一のレギュラー。チームの一員として強くなる為に毎朝の朝自主練と部活と社会体育への参加と帰宅後トレーニングは最早日課らしい。

「んで、どう?美来のまじない的に……1位っぽいのは」

「う~ん……結局メグ以外見つかんなかった……だってメグ以外に頭いー人なんていないもんっ!!!」

なんて言って、泣き出す美来を宥めた。

……一体、誰なんだろう。

分かったら、実際に会ってどれほどの人なのか確かめたい。

その人を、新しいライバルにするんだ……

私は立ち上がり、職員室に向かった。


HR中、先生から貰った1年生の名簿を眺める。

A組からC組まで見てみたけど……やはり、「この人!」っていう人は見つからなく。

D組に目を向けると……最初に飛び込んできたのは、「蒼井」という文字。

「ああ、例の転入生……」

美来の好きな人……まぁミーハー心かもしんないけど。

どう考えたって、2学期からの転入生に抜かされるわけがない。

現に中間でも1位だったし、私……

「くーぼたっ!どーした?そんな怖い顔しちゃって~」

隣のお調子者の坂村サカムラが私の頬をつつく。

「いや、別に……」

「ふ~ん。ま、いーけどさ。その紙何?」

「1年生の名簿だよ」

へぇ、と言って坂村は私の手からそれを取る。

「おっ、大翔ちゃんと出席番号1番じゃん!2学期中ずっと最後だったもんなぁ。『和田』の次で『蒼井』っておかしくね?と思ってたけど……よかったよかった」

「何、坂村、蒼井っていう人のこと知ってんの?」

「知ってるも何も、家結構近くてチビの頃よく遊んでたかんなぁ。まぁ幼なじみってやつ?」

家結構近いっつっても隣家じゃないんだけどな、と坂村は付け加えた。

「蒼井って、どんな人?」

「おっ、何何?恋しちゃってる系?」

「断じて違う」

そう言うと、坂村はうーんと考えるようにうなった。

「一言で言うと……頭脳明晰、神経抜群、容姿端麗、才色兼備、完璧、ALMIGHTY」

「一言じゃないじゃん……つまり、どういう?」

「つまり……めちゃくちゃ頭いいのは確か!学年で1位取ったし!足も超速ぇんだよ!100M10秒とかで走ってさ!おまけにイケメンだし、常ににこやかで爽やかで……とにかくモテるのなんの!告られた人数、もう50人越えちゃってるしよぉ!ったく、なんであんな完璧な野郎がこの世にいるのか……神に問い質したいぐらいだわ」

へぇ、まるで絵に描いたような完璧少年……それが、夏休みに見た咲良ちゃんと一緒にいた無愛想で取り柄なさそーな男子とは、やっぱり思えない。

足速くって、顔よくって、正確よくって、学年トップだなんてさ。

……ん?

「……学年トップ?」

「そ。中間の時は検査入院してたから受けてないっぽいけど。期末で初登場1位!みてーな。あ、オリコンじゃねーぞ?」

……私はガタッと席を立ち上がり、教室を飛び出した。




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