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海と想いと君と  作者: coyuki
第3章 片想いの日々
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第49話 クリスマス3-元々好きじゃなかった-

愛知県名古屋市……愛知県の県庁所在地。

さっすが、県庁所在地とだけあって……

「人、多っ!!!」

窓の外に映る、異様な人の多さに思わず目を疑った。

さすが12月25日……元々人が多いのに加え、さらに人が多くなったわけかぁ……

私の大声で、膝の上で寝息を立てていた亜珠華ちゃんが目を覚ました。

「沙彩ちゃん、お外キラキラしてるぅ!!」

亜珠華ちゃんには、人の多さよりも煌くイルミネーションが印象的に見えるみたい。

「東郷さん、この後どうするんすか?」

「ああ、予約しておいたホテルに一度行って荷物置いて、外出たい人だけ外出て、休みたい人はそのまま温泉入って就寝かな。夕飯はもう食べたしね」

カイジ君の声に、夏姫父はそう答える。

外……は、勘弁だなぁ。人がうじゃうじゃいるし……

改めて窓の外を見て、そう思った。

「大翔は?どーすんの?」

「俺は……いーや。勉強あるし、寒いのあんま好きじゃないし」

「マジ?お前ほんっと優等生だなぁ。俺はユウヤと河野先輩とでオケるし!」

カイジ君の話によると、ユウヤ君と河野さんはSAに寄る前、カラオケに行く約束をしたらしい。

河野さん……積極的だなぁ。

「あ、そうだ。今のうちに部屋割り決めてくれないかな。ケータイとかで連絡とって」

「部屋割り……?」

「そ。2人部屋2つと3人部屋1つとったから」

亜珠華ちゃんは小学生以下だから各部屋の予備の布団を使ってくださいって言ってた、と夏姫父は続ける。

「まぁ、とりあえず夏姫とたっくんは2人部屋のひとつを使うとして……」

だって、カップルの初(?)旅行だもん。相部屋にしないといけないよね。

「俺と大翔とユウヤで3人部屋?んで、杉浦先輩と河野先輩と亜珠華ちゃんが2人部屋に入ってもらって……」

「亜珠華、嫌だ!あのコウノっていうお姉ちゃん、嫌い!」

部屋相応なメンツを言い上げたカイジ君をキッと睨む亜珠華ちゃん……

「おい亜珠華……嫌いはねーだろ?」

「だって嫌いなんだもんっ!お歌、とってもヘタだもん!」

か、核心にふれた……恐るべし五歳児!

そう……確かに河野さんは歌が激がつくほどヘタ……つまり超がつくほどの音痴だったのだ。

「歌と部屋は関係ないだろ、亜珠華」

「ヤだったらヤだっ!!!」

そう言うと、亜珠華ちゃんは私に抱きついて泣き出した……

「……じゃ、じゃあ、亜珠華ちゃんは誰と同じ部屋になりたいの?」

数分経った後、カイジ君が恐る恐る泣き続ける亜珠華ちゃんに聞く……

なんか異様な光景。(十六歳が五歳に恐る恐ると……)

「亜珠華ね、沙彩お姉ちゃんと大翔お兄ちゃんと一緒の部屋がいいっ!!!」

パッと泣き止み、亜珠華ちゃんが言った言葉は……それ。

な……なんですと?


しばらくの沈黙の後……蒼井君と私が亜珠華ちゃんの考えを覆そうといろいろ言うにも、彼女は「ヤだ」の一点張り。

子供の駄々は数学の東大入試問題よりもはるかに解きにくい、というカイジ君の一言で……

「わ~いっ!沙彩お姉ちゃんと大翔お兄ちゃんと一緒のお部屋だぁ!」

やって来ました、ホテル……つか、温泉つきの旅館。

「ひっろぉい!!!」

すぐ、ドタバタと部屋内を駆け巡る五歳児……今では恐ろしくも見えます。

「ごめん……亜珠華の駄々のせいで……」

「……いやいや、亜珠華ちゃんもきっと寂しいんだよ。蒼井君が別の部屋だったら……」

と言った直後、考えを覆そうと提案した、「3人部屋(1-Dトリオ)と一緒の部屋になるのは?」で「沙彩お姉ちゃんがいないから嫌だ!」と言った亜珠華ちゃんの表情を思い出し、苦笑いを浮かべた。

「と、とにかく荷物置こう!これ、結構重たいんだよねぇ」

キャリーケースを部屋の隅に置こうと、靴を脱いだ。

それに続いて、蒼井君も部屋に入る。

「沙彩ちゃん、お外綺麗!」

でっかい窓……そこから見える、都会離れした壮大な森林を見て、亜珠華ちゃんが飛び跳ねる。

夜とはいえ、ライトアップされてて……

「ほんと、綺麗だね」

思わず、そう言ってしまった。


それから、しばらくくつろいでいると……メールの着信音が鳴る。

同時に蒼井君のケータイの着信音も鳴った。

えっと、何何……「入浴するんで9時にフロントに全員集合!生理の人はDon't come」……幹事である夏姫からだ。

「お兄ちゃん、誰からめーる来たの?」

「カイジから……9時にフロント集合だってよ」

「あ、それ私のとこにも来てるよ」

……シーンと、場が静まる。

「……どーいうことだろうねぇ……」

呼び出すのなら、同性の人だけ呼び出せばいいのに。


「お部屋いかがでしたかぁ~?幹事の夏姫でっす!!」

集まったのは、東郷夫妻を除く高校生メンバー。

亜珠華ちゃんは「そこのお風呂に入ってもう寝る~」って言った。

1人で入れるの?と聞いたら……3歳ぐらいから毎日1人で入ってる、と。恐るべし5歳児……

「さぁ、ここに3つのお風呂に通じる通路があります!女風呂、男風呂、そして3つ目が混浴でぇす!」

混浴って……まさか……

「私とたっくんは混浴するけど、他にしたい人いますかぁ~!?」

「「「いるか!!!」」」

……全員がハモッた。


「だから両方ダンジョ集合させたのかぁ」

湯船につかりながら、真相を初めて知ったかのように河野さんが呟く。

「あそこで「混浴したい」っていう人がいたら……その人の人格疑っちゃうよ」

「だよね~」

大体、恋人とか家族でもないのに混浴とか絶対無理……

夏姫はそんなことさえ分からなかったのか……

「話変わっちゃうけどさ、さーや、高杉君と別れたじゃん?」

「え?なんで知ってんの?」

「噂だよぉ。すっごい出回ってるよ?なんか、すっごい修羅場だったそうじゃん。高杉君がさーやの胸倉掴み上げて……目撃者がいたんだって。たまたま旧校舎裏に用事があった人」

……マジ?恐るべし、噂……

しかも、かなり間違った方向で出回ってんなぁ。

「そこで、彗星のごとく、あの蒼井大翔が現れて……彗星のごとく高杉君をさーやから話、彗星のごとくさーやを連れてどっか行ったと……」

「彗星って……まぁ、確かに」

それから、真相について語った。


「え、それって……マジで“あの”高杉君が総長!?」

河野さんから見たら、唯は結構天真爛漫に見えるだろう。

んで、実際のことを言ったら相当驚かれた……

「私もそれ知ってビックリしたよ……まさか、みたいな」

「へ~……凄いねぇ、それ……」

……あ、そういえば……

「唯、将来プロのカメラマンになりたいって言ってたんだよね」

「あ、それどっかで聞いたことある!」

だったら、族はどうするんだろ……

放置?いや、それとも解散?

いずれにしても、そんな無責任なことしない人だって分かってる。

だったら、プロカメラマンへの夢は正体を隠す為の口実?

「修旅でさーや達の班、テレビ局行ったでしょ?それ、結構珍しいんだって!ほとんどの班は1日中ショップ巡りなのにさぁ」

……まぁ実際、何日目かには1日中ショップ巡りしたけどね。

「ていうか、高杉君のことはさて置き……さーや、どうするの!?」

「え……何が?」

「蒼井様だよぉ!同室なんでしょ?」

蒼井“様”って……結構レベル高し?

「うん。けどまぁ、亜珠華ちゃんいるし」

「あの子ちっちゃいから、もう寝てるでしょ!?部屋帰ったら2人っきりも同然じゃん!」

まぁ、確かにそうだけどさ……

「大体、何かあるわけでもないし……そんな身構えなくっても……」

「あ~も~……なぁんにも分かってないなぁさーやは……」

そう言うと、河野さんはお湯にもぐっていく……

で、ちょっとしたらすぐ水面に上がってきた。

「じゃあ、さーやはどう思ってるの?蒼井様のこと!」

「……え?どうって……前も言ったじゃん。ただの後輩だ。って」

あの時私が言ったあの言葉は……きっと、蒼井君に聞かれていた言葉。

誤解された、って思ったけど……解くことは、できなかった。

「そうかなぁ……私にはそう見えないけどなぁ……」

そう言う河野さんの声は、冷やかしとかじゃなくって本気だった。

「いい加減に素直になんなよ、さーや。ここ何ヶ月間……すっごいオーラがにごってる」

……オーラが?

「2学期始まった頃はすっごいキラキラしてたのになぁ。ありゃ絶対恋してるなぁって思ったもん」

それはきっと、私がメイクとかヘアアレンジとか覚えたわけで……

でも、覚えたきっかけも……蒼井君だった。

「ほんとは、高杉君のこと好きじゃなかったでしょ?」

レンズを隔ててない、まっすぐな瞳が私を捉える。

……初めてだ。こんなにはっきり言われたの……


どうなんだろうなぁ。




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