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海と想いと君と  作者: coyuki
第2章 優しい人
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第42話 真の姿

……気づかなかった。

忘れなきゃ、と想うほど……忘れれないこと。

より一層、想いがどんどんどんどん、強く、濃く、はっきりとなってくこと……

……私の気づかないうちに。


学校に着いて、なるべく唯に気づかれないように、目を合わせないように席に着いた。

カバンをしまって、頬杖をついて窓の外を眺める。

……結構寒くなってきた、10月下旬。

けど冬生まれの私にとっちゃあ、結構平気。まだ夏服だ。

……冬生まれ関係ないか。

「さーやっ!」

窓の外に広がる、ハゲたおっさんみたいな中途半端に葉っぱをつけてる木々の中に、肌が黒い人が映る。

「……あ、桃花か」

「ボーっとしちゃってぇ!!!体育祭冷めぇ?」

私を覗き込むようにしていた桃花は、鈴木さん(沙彩の前の席の人)のイスに勝手に座り、回転させて私の方を見る。

「何かあったの?」

私を捉える、アイラインくっきり&つけまつげがバサバサ&マスカラバリバリ&アイシャドウはっきり……な桃花の目。

「……何もないよ」

「ウソだぁ!人生見失った顔してんよ!!!」

「そ、そこまで?」

……確かに、見失う寸前だけど。

「桃、言ったよね?確か……高杉君以外に好きな人とか気になっている人がいたら、ソッコー別れるのがオススメって」

「……うん」

「高杉君、苦しむだけだって……」

そう言い、桃花は廊下側の席を指差す。

その方向を見ると……友達と何かしゃべりあってる唯の姿があった。

「ほら、苦しんでるっしょ?」

「……そうには見えないけど……」

たまに会話してる内容が面白いのか、笑顔を見せる唯。

……前の晩、私にあんな電話してきたのが嘘みたいな……

「い~や!オーラがさーやと一緒だもん。桃には分かる!」

「そう……」

唯から視線を逸らせた。

「……桃花は引かないの?」

「え?何がぁ?」

「その、なんていうか……私のオーラ?に」

実際、この期間に何があったかって桃花には分かるはずがない。

でも……なんとなく、桃花には、桃花にだけは見透かされてる気がした。

「引かないよ~?さーやも恋に悩む乙女なんだなぁ~って思う!」

「……はい?」

「ま、頑張んなよぉ!もしどっちかに決められなかったらライガンでもいーし!」

……ライガンって……ブリ語?(ライガン=来世頑張る)

「でも……もう答えは見えてる気がするなぁ」

「答え?」

「いや、なんでもなぁい!そんじゃクラス戻るね~!」

答えって……何の答え?

何故かスキップしながら自分のクラスに帰っていく桃花の後姿を見送った。


「い、今のって誰?」

さっきまで唯と話していた、隣の席の中島が席に着いて私に聞く。

「桃花だよ。林桃花」

「はぁ!?林って……清楚な感じだったよなぁ!?」

中島は1年の時も同じクラス。

「先輩に漂黒されたんだって」

「うへ~……漂黒って……」

……桃花。たったいま、中島の中での桃花のイメージが清楚から黒ギャルに変わってしまったよ……

「ところでさ、さっきも唯……むっちゃ無理してる感じだった」

「……というと?」

「なんか……無理に笑ってるっつか。笑いが引きつってるんだよ。1年の時から見てるけどさ……さーやと付き合い始めて、変わったな~って。妙に口数少なくなったっていうか……なんかひっかかってるみてーな表情カオだし。あ、別にゲイとかじゃねーから俺!」

「分かってる」

……やっぱり、周りの人も気づいている。

唯の表情の変化に……

「よかった……てか、周りの奴等みんなさーやと唯のこと高杉夫婦って呼んでからかってるけど……無理に付き合うのはよくねーぞ?」

「……中島も高杉夫婦って呼んでんじゃん」

「あ、そっか!そうだったなぁ……じゃなく!恋人同士で大事なんは、気遣いとかそういうのナシでお互い自然体でいられるよーな関係でいることだと思うなぁ、俺は」

……お互い、自然体で……

「おーい、HR始めるぞ~!」

担任が教室に入ってきて、話すのをやめた。


私が、自然体で接せられる人……

私が、本当の笑顔になれる人……

……私の、好きな人。


罪悪感とか、劣等感とか。

そういうのなしで、接せられる人は……


唯の方をチラッと見ていた。

頬杖をついて、配られたプリントを見る視線。

そこには、悲しさも見えた気がして……

……真の、唯の姿が見えた気がした。


きっと私が……そんな、真の唯の姿を作ってしまった。

……ごめんね、唯。

これ以上、私といたら……きっと、あなたがダメになってしまう。


私と付き合って、明るさが少なくなった唯。

真の唯の姿が、暗くなってしまった。

きっと唯は……私に、自然体で接していない。

そして、私も……


ワカレル。


これが、私たちにとって最良の選択なのかもしれない。

……これが、私が出した答えなんだ。




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