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海と想いと君と  作者: coyuki
第1章 恋への目覚め
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第2話 出逢い

「あ、さーやだぁ〜!」

補習初日。補習室……となった大ホールに行くと、手を振って黒ギャルが近づく。

えっと……?

「誰だっけ?」

「んなっ!さーやヒドッ!桃だよぉ〜!」

あぁ、思い出した。林桃花ハヤシモモカだ、この子。

あの純白ナチュラルな清楚系……だったけど……

「派手になったねぇ……」

遠い目をして、彼女を見る。

「でしょでしょでしょ〜〜〜??最近ねっ、ギャルメイクに目覚めてー先輩に教えてもらったのぉ!日サロにも行ったんだよぉ!」

嬉しそうに自分の顔を指す桃花。

かつて桃花は、愛され系の真っ白な肌で、ナチュラルメイクだったけど……毒されたか。

喋り方までその先輩に毒されたらしく、甲高い声が耳を貫く。

「てゆーかぁ、なんでさーやがここにぃ?1年の時めっちゃ頭よかったじゃん!」

「めっちゃってこともないけど……こないだのテスト、全教科赤点だったんだ」

「あ、仲間ぁ〜!桃も〜!」

……あまり嬉しくないけど……

「もう、問題の意味が分かんなかったしぃ!」

私が赤点を取った理由は、何ひとつ聞いてこない桃花。

気を遣ってるのか、単にバカなのか……

「おーい、席着けぇ〜!」

と、数学の巨大先生……通称巨人が大ホールに入ってきた。

「席着けって言われてもどこか分かりませぇ〜ん!」

と、どっからか声が飛んできた。


巨人の指定により、席が決まった。

席が1列に4つあって、左端が1年、その隣が2年、その隣が3年、右端も3年という配置に。

「分かんないとこがあったら、1年は隣の2年に、2年は隣の3年に、3年は隣の3年に聞け!それでも分かんなかったら俺を呼べっ!以上!」

……アバウト……アバウトすぎるよ巨人……

「んじゃ、今からプリント配る!」

とどめはプリント……どこまでもアバウトすぎる。

配られたプリントは……世界史。

左半分は内容理解の部分。右半分は問題がズラリと並べられてる。

……とりあえず、解いてみるか。

仕方なくシャーペンを手に取り、解答欄を埋めていく。

「……ん?」

左腕が何かに突付かれたので、横を向いた。


「この日本文を英訳するのって、どうすればいいですか?」


目に映ったのは……肌が白くて、綺麗な目をした男の子。

一瞬にして、その目に吸い込まれていきそうな感覚になった。

「あのー……」

「あ、ゴメン。これ?」

慌てて、その男の子が指す日本文を見る。

「これは、主語をまずHeにして、過去完了形だから……」

……ヤバい。すごい、ドキドキする……ていうか、緊張する。

「あ、なるほど!ありがとうございます」

「いえいえ」

彼が納得したところで、すぐに自分の問題に向き直った。

火照る頬を隠すように頬杖なんかついたりして。


なんなんだろう、この感じは……


3時間の補習が終わり、みんな疲れ顔。

「あ〜、これがあと何回も〜……」

隣の3年生は、大きく溜息をついている。

まぁ3年生はどっちみち夏休み中は勉強する運命なのさ……なんて言ったら、しばかれる程度じゃ済まない。

「さーやー!おつかれ〜いっ」

だが、桃花は至ってピンピンしてる。

「桃花……元気だね」

「だって3時間中ずっと寝てたもん!あ〜!すっきり!今日朝3時ぐらいまで彼氏とメールしてたんだよねー!」

……なるほど。

「だったら、さぞかし疲れが取れ……」

桃花の後ろにいる存在に気づき、語尾が消える。

「ほえ?」

私の目の色に気づいたのか、桃花が振り返る。

「はぁーやぁーしぃー………」

その名も、巨人。ますます巨大に見えるゼ。

すごい形相をして、桃花の襟元をつまみ上げる。

「お前“だけ”午後3時まで補習!」

「えぇ〜〜〜!?それナシっしょぉ!?」

「お前だけ1問も解いてなかっただろ!」

あっちゃー……そりゃバレるわな……

「うぇ〜ん!さーや助けてぇ〜!」

「が、がんばれ桃花」

「そんなぁ〜……」

桃花はこのまま、説教部屋に行くことになるだろう……

「さっきの人、友だちですか?」

声をかけられ、振り向く。

……さっきの、綺麗な男の子だ。

「あ、さっきの………」

「蒼井です。蒼井大翔アオイヒロト

蒼井君はニコッと微笑んだ。

「先輩は?」

「あ、杉浦沙彩……2−Dの」

「えっ、そーなんですか?」

何故か私の名前を聞いて蒼井君は驚く。

「さーやってあの先輩呼んでたから、さやかって名前かと思いました」

「あ、よく言われる。さーやって、さやかっぽいって」

「とにかく、ありがとうございました。教えてもらって……」

「いや、私、1年の時は頭いい方だったし……」

あ……あの時、緊張してよく見れなかったけど……あの英訳問題以外全部埋めてたよね、蒼井君。

「あ、蒼井君って頭いいんじゃない?」

「……中学の時30番ぐらいだったらしいんですが、出席日数が1学期中、0だったんで」

そう言って蒼井君は苦笑した。

ていうか、他人事みたいだなぁ。30番ぐらいだったらしいって……

「……不登校……とか?」

「不登校じゃないけど……内緒です」

出席日数が0の理由……考えてみたけど、不登校しか思い浮かばない。

「……そっか」

根掘り葉掘り聞くのも悪いな、と思ってそう言った。

「それじゃ、僕、帰りますんで……」

「あ、うん。バイバイ。明日もがんばろーね」

そう言って蒼井君は靴箱へと向かう。


太陽が眩く輝き始めた初夏。

私は、ひとつの“出逢い”をした。


それは……後々、未来を変えたかけがいのない“出逢い”となる。




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