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海と想いと君と  作者: coyuki
第2章 優しい人
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第19話 ブロック

……6時限目。たいへん重要な集会がある。

そう、体育祭のブロック決め。

この海宮高校では、10月半ばに体育祭がある。

1ヵ月前の今日、ブロック決めが行われる……

ちなみに文化祭は1月。とはいえ、体育祭と修学旅行がブッキングしている2年生の2学期は特に忙しい……


「まず、1年生からくじを引いてもらいましょう!」

1年A組からF組の代表が、箱の中に手を入れる。

ブロックは全部で6ブロックある。

風・火・水・地・空・森。この6ブロック…

なぜ“海宮”高校なのに“海”がないんだ?と、1年の頃から思ってる。

まぁ、海は水の中に入るんだろうけど…水と海水は塩分濃度が極端に違うぞ?

そんなくだらないことを考えてる間に、1年生はくじを引き終えたみたいだった。

……そういえば蒼井君、何組なのかな……?

って、何考えてんの私!

……無意識に蒼井君の組を知りたがる私は……まだ、完全に“恋心”を捨てきれてない。

「は〜……」

大きく溜息を吐いた。

「どしたのさーや?疲れた?まだ頭痛い?」

隣の夏姫が、心配そうに私を覗き込んだ。

「いや、なんでもないよ」

「そっかぁ!ところでさ、何ブロックになると思う?私、空がいい!」

「……私は風……かな」

ポツリと呟くと、夏姫は「なんで?」と聞いてくる。

「風に吹かれてる時って、気持ちいいじゃん。黒い心を吹き飛ばしてくれる感じだし」

「……さすがさーや。爽やかだねぇ……」

「それギャグ?」

……なんて話してる間に、最早2年生がくじを引き終えていた。

えっと、私の組は……水。

夏姫や私の希望を裏切っての“水”だった。

「水かぁ〜!残念っ!でも色は空とあんま変わんないよね!」

……そう。それぞれのブロックには、イメージカラーというものがある。

風は白色。火は赤色。水は青色。地は黄色(茶色だと地味なので)

空は透き通るような水色で、森は緑だ。

ちなみに水ブロックの1年は……D組。

「ねぇねぇっ!1−Dってかなりのイケメン揃いのクラスらしーよぉ?」

隣の河野コウノさんが興奮状態で私たちに話を振る。

「転入生らしい、超肌キレーで白い子と、ゴリマッチョ系と細マッチョ系とモデル系の子!その他の子も端整な顔立ちしてるって噂だし!でも、中でもその4人がダントツ!1−Dイケメン四天王ってもっぱらの噂!!!あ〜!会ってみたいぃ!」

河野さんはもう、誰にも止められない……

……そういえばこの人、専らのジャニーズ好きだって聞いたっけ。

「……って、待てよ?細マッチョ系って……カイジ君?」

夏姫が呟く。

カイジ……?聞いたことあるような……

あ、蒼井君の友だちだ。

「じゃ、じゃあ、転入生らしい超肌キレーで色白い子って……蒼井君?」

「モデル系って、ユウヤ君……だったような。」

「ゴリマッチョ系って、シゲオ君!」

私たちは、顔を見合わせた。

……マジですか……


3年生がくじを引き終わり、結団式が始まった。

水ブロックの3年生は、A組。

A組のリーダーらしき人が、1・2年生に向かって手招きをしてる。

その人たちのところへと駆け寄った。

「え〜っと!私が団長の小原優羽コハラユウ!女だけど、男より声デカいから安心してね〜!」

……そう言う小原先輩の高い声は、体育館中を響き渡らしている。

他のブロックの男子団長の声なんか、蚊の羽音ぐらいに聞こえた。


結団式が終わり、ブロック交流会が始まる。

「小原先ぱ〜い!先輩と同じブロックになれて超嬉しいで〜す!」

夏姫が小原先輩めがけて飛びつく。

…あ、小原先輩ってバレー部のキャプテンだったっけ。

同じバレー部の夏姫にとっちゃあ、もう顔見知りの先輩なんだろうなぁ。

「も〜夏姫ぃ!超かわい〜い!」

夏姫の頭を撫でる小原先輩。たっくんと負けないぐらいのラブラブっぷりだ。

「拓海とはどう?うまくいってる?アイツ、ああ見えて感情表現ドヘタだし……」

「そんなぁ、そんなことないですよぉ!超順調です!」

……そして、夏姫の彼氏・たっくんこと拓海のお姉さんでもある小原先輩。

「ところで、その子誰?夏姫の友だち~?」

小原先輩に目を向けられ、ビクッてなる。

……やっぱ、先輩っていう人間は苦手です。

「えと……杉浦沙彩……です……」

「怖がらなくていいんだよ〜?私、団長の小原優羽!って聞いたか〜!とりあえずヨロシクね、沙彩ちゃん!」

そう言い、小原先輩はニカッと笑った。

「杉浦先ぱ〜い!」

「うおっ」

いきなり何かがぶつかってきて、大げさにのけぞる。

「久しぶりです!」

「あ……優希ちゃん、李流ちゃん」

この2人もD組だったか……

たしか、咲良ちゃんもこの2人と同じクラスだったような気がする。

「咲良ちゃんは?」

「あ〜、大翔君とラブってます!」

「ほら、あそこ!」

2人が指差す先を見る。

……できれば、見たくなかった。

けど、優希ちゃんや李流ちゃんには……気づいてほしくなかった。

「…わ〜、ほんと」


視線の先には、笑顔で話す咲良ちゃんの姿があった。

その姿の正面には、蒼井君。同じように、笑顔を見せていた。


蒼井君の手は、咲良ちゃんの頭へとのびる。

……これ以上、見たくない。

2人から目を離し、夏姫や小原先輩、優希ちゃんや李流ちゃんと話した。

「なんか最近咲良、大翔君にべったり〜……」

「復縁したのはいいけどね〜」

2人は寂し顔。

咲良ちゃんは……友だちより、彼氏……なのかな。


すぐ後ろにいた人が、咲良ちゃんと話してる蒼井君に大声を張り上げる。

「大翔――っ!イチャついてないでこっちこ〜いっ!!!」

この声……水○ヒロじゃん。

振り返ると……色黒で、筋肉ついてて、めっちゃ色っぽい男の子が蒼井君を見てた。

その傍には、美少年。その傍にはファッションモデルでもやってそうな男の子。

……なるほど。この3人がシゲオ・カイジ・ユウヤ……か。

「お〜、今行く!」

蒼井君も負けじと大声を上げる。

って、今行くって……必然的に擦れ違うし!

心臓が、ドキドキする。

……まるで、蒼井君と初めて喋った補習の時のように。

「沙彩ちゃんってどこ中出身〜?」

小原先輩が聞いてきて、慌てて小原先輩の方を向く。

「えっと、A市の……」

「あ、そーなんだぁ!私、海宮中学校!」

小原先輩は、海宮中学校での出来事を話し出す。

その間にも……蒼井君は、どんどん近づいてくる。

そして、擦れ違った。


……何も、声はかけられなかった。かけてくれなかった。

まるで、通行人同士が擦れ違ったような……

蒼井君が残した風を腕で感じながら、固まった。


「……沙彩ちゃん?どした?」

「え?……あ、なんでもないです。」

無理して笑う。

……本当は、笑えないのに。


忘れたはずなのに、声をかけてくれなかったことだけで、こんなにも悲しくなる。

忘れようとしてるのに、心臓は高鳴る。

……矛盾した、感覚。

矛盾の先には……何があるんだろう。


「杉浦せ〜んぱいっ」

可愛い声に呼ばれ、振り返ると、手を後ろにして私を見上げてる……咲良ちゃんがいた。

「ちょっとお時間いいですか?」

そう言い、にっこり微笑む顔は……海宮花火を見に行ったときとは、打って変わってて。

相変わらず、頭に乗ってるリボン。

それを見ながら、

「…いいよ」

そう答えた。




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