第17話 最後
Rip Sl○meの「太陽とビ○ニ」……?
「……ん……?」
Eメール着信音に設定してるその音楽によって、起こされた。
しかも立て続けに鳴ってるし……
ディスプレイを見ると、10時半……
「ヤバ、学校……」
支度しようとするけど……唯や蒼井君、咲良ちゃんのいる学校を思い浮かべると、手が止まる。
……おかしいな。支度を進めようとする手が、微動たりともできない。
「……ムリだ」
再度、ベッドに寝転んだ。
仕事中であるお母さんにメールを打つ。
『学校、行けない。
気持ちが整理つくまで休んでいい?』
すると、意外にも早く返信がきた。
『いいけど、1週間前後で整理つけなさい。
あと、勉強と彼氏や恋は別。しっかり区別つけること。
あ、学校には風邪欠席だって言っておくからね』
……いつも彼氏いないかどうか、興味半分で聞いてくるお母さんとは違うお母さんの心が、文に表れてた。
「てか、返信しないと……」
私のケータイにメールを送り込んできたのは……10人。
全員、同じクラスの子。
『さーや大丈夫?』
『風邪でもひいた?』
ほとんど、そんな内容。
なんか、ホッとした。
そんな中、唯と夏姫だけは違う文章だった。
『ごめん』
唯は……何を悟ったのか分からないけど、その3文字だった。
『まだ頭痛い?大丈夫?』
嘘を信じてくれてる、夏姫からの言葉。
……ごめんね、夏姫。痛いのは頭じゃなくて多分、心なんだ。
『唯が謝ることないよ』
3時限目の休み時間にあたる時間帯に、唯に返信する。
『しばらく、学校行かないかも。復帰したらノート見せて!(・人・)』
夏姫には、しばらく休むことを伝えた。
そしてクラスの子たちには、『大丈夫。心配しないで!』と8人同時に送った。
一通りのことが済んだので、パチンとケータイを閉じる。
改めて、考えた。
……しばらくって、いつまで……?
どうやったら、蒼井君を忘れられる……?
いつになったら、忘れられるのかな……
……しばらく考えて、答えが出た。
「唯を好きになる……」
それしか、方法はない。
……もし、その方法が成功すれば……蒼井君への想いは消えてしまうわけで。
……寂しさからか、静かに涙が頬を伝い、手に流れ落ちた。
次第にその涙は数を増す。
……この涙は、無駄なんだ。
想いから逃げたくて。でも逃げたくなくて……
そんな、曖昧な涙、何の意味も持たない。
……私がいくら泣こうと、蒼井君はもう、咲良ちゃんっていう彼女がいる。
咲良ちゃんっていう、好きな子がいる。
それは、変わりようのない真実……
……私は、傍にあったタオルで目を押さえた。
「……本当、泣き虫になったな」
自嘲的な笑いがこみあげてくる。と同時に、涙も零れてゆく。
……こんな泣き虫でも、決心した。
蒼井君を想っての涙は、これで最後にしよう、と……