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海と想いと君と  作者: coyuki
第2章 優しい人
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第14話 カミングアウト

「沙彩、早く起きなさい」

布団を剥がされ、目が覚めた。

「……まだ6時じゃん……」

「何言ってんの。9月1日でしょう?今日は」

……あ。そうだった。

今日から新学期だったっけ……

「ご飯できたから、早く食べなさい」

「ふぁい……」

眠たい目をこすりながら、制服を持って1階に下りた。


洗顔して髪を整え、制服に着替える。

そしてかなりの量の朝食をしっかり食べて、歯磨きをしたら……準備は半分終了。

部屋に戻り、買いたてのメイクボックスを開いた。

……新学期からは、ちょっとメイクしてみようかな……と思ったわけで。自分改革?

お母さんにメイク道具一式を買ってもらった。

まずはベース。次にアイメイク、次に眉毛やって、ほおに色のせて、唇に色つけて……

「よし、完成」

うん、練習の甲斐あって10分でできた。7時からの電車には間に合う。

髪は……まぁ、いっか。これで。

いつものロンスト(ロングストレート)スタイルで、お母さんのところへ行った。


「メイクおかしくない?」

「ん〜……アイラインはもうちょっと濃い方がいいかも。でも、上手くなったじゃない。」

「マジで?」

あまり褒めないお母さんの言葉に笑顔になってると、お母さんがバッグを漁る。

「これ、あげる」

と言い、私の手に乗せられたのは、私の好きな青と白の混色シュシュ。

「あ、ありがと。どこで買ったの?」

「ちょっとコンビニ寄って、可愛いなと思って買ってみたの」

コンビニかいっ!ていうツッコミはさて置き。

「んじゃ、ちょっと髪ウザくなったら使うね」

「はいはい。行ってらっしゃい」

お母さんに見送られ、駅のホームへと向かった。


「さーや!おはよぉ〜!」

電車の中で、ちょっと黒く日焼けした夏姫が手を振る。

「あれ?メイクしてる?」

「うん。どう?」

「めっちゃ大人っぽい!3年生みたい!」

「ありがとう」

夏姫はこの夏、たっくんと旅行に行ったみたい。

とか言って県内らしいけど、いい思い出になったらしい。


電車に乗り込んで、空いてる席に腰を下ろす。

「見て見て!この子!可愛くない?」

夏姫が見せてきたのは、5ヶ月ぐらいの可愛い男の子の写真……!?

「夏姫、あんた……」

「やだなぁ!いとこだってぇ!」

「びっくりした……」

てっきり夏姫が産んだんかと思ったよ……

「あ、あれ、蒼井君じゃない?」

「え?」

夏姫が窓の外を指差したので、私も見る。

あ、ほんとだ。あの黒の無造作……蒼井君だ。

「いや〜、相変わらず白いねぇ蒼井君……名字の通り、蒼白ソウハク?」

「蒼白って……」

入口を見てたら、蒼井君が車内に入るのが見えた。

……途端、入口近くにいた男子生徒の集団が「おぉっ」と声を上げる。

「大翔じゃん!久しぶり!」

「退院したのか。よかったな!」

「え?あ、おー」

……退院?蒼井君、入院してたんだ?

あ、だから1学期は出席日数0なのか。

初耳……しかも何故か、蒼井君、男子生徒に合わせてる……?

「あ、これ、中学の時借りてたCD!お前復帰するだろーなと思って持って来てた!」

「あぁ、サンキュ」

……なんか、顔が、「誰だコイツ」って感じ……気のせいかな。

「……や?さーや?杉浦沙彩っ!」

「へっ!?何!?」

「何ボーっとしてんの〜?大丈夫?」

「あ、うん」

本当は……気になってしょうがない。

けど、夏姫に悟られるのが怖くて……今日の授業について、話題を繰り広げていった。


ふと、思い出す。

補習受けてたときの、行きの電車や帰りの電車……

隣には、蒼井君がいた。

けど今は……他の男子と、笑い合っている。

前と今の違い。そして、今の距離感。

心が、少し痛んだ。


海宮駅に着き、私と夏姫は自転車にまたがる。

危ない……と思いつつも、夏姫と二列で喋りながら自転車を走らせていると……

「おはよ!沙彩、夏姫!」

後ろから、唯の声がした。

そして私の隣に来て……三列になった。

警察沙汰になるな……

「おはよ〜」

「おっ、沙彩、化粧してっしょ?」

「えっ、なんで分かるの?」

「愛の力〜!なんちゃって!」

いつものように、おどけてみせる唯。

……って、私、この人に告られたんだよ……ね?

あまりもの唯の自然さに、その事実すら忘れかけていた。

「朝からテンション高いねぇ唯は」

「だって、夏休み中部活ばっかで超つまんなかったし!」

海でも行きたかったなぁ、と唯は唇を尖らせた。

いや、あんた海宮人(海宮市に住む人)だから海にはいつでも行けるっしょ……

「あ、沙彩!」

視線を向けられ、ギクッとなる。

「俺、あっさり承諾したけど……まだ諦めてねーからな!」

ぶっきら棒に言うと、また笑った唯。

夏姫は「は?」って顔してる。

「何何何?唯、さーやに何かおごってあげたの?唯はその代金を請求してるワケ?」

「あれ?話してなかったっけ、夏姫には……俺、夏休みの最初ら辺に沙彩に告ったんだよね〜」

そ、そんなあっさり言うな唯!

そろ〜っと、夏姫を見ると……声が出ない様子。口をパクパクさせてた。

「えと、それはつまり、唯は、さーやが……いや、さーやを……?」

「そゆこと!んじゃ、俺先に学校行ってる!」

唯は自転車をかっ飛ばして私たちより先に学校へ向かった。

「さささ、さーやっっっ!なんでそんなこと早く言ってくれないのぉっ!?」

「うわっ!夏姫危ない!運転っ!」

走行中にも関わらず、横からガシッと私の肩を掴む夏姫。

夏姫は慌てて、手をハンドルに戻した。


学校に着き、靴箱に靴を入れる。

「唯がさーやを……ねぇ……」

夏姫、しつこいです……

「まぁさーや美人だしねっ!」

「んなことないって……」

そんな話をしてると、1年の男子集団と擦れ違った。

……何かがビビッと来て、すぐ分かった。

蒼井君がいる。

振り向くと、蒼井君も振り向いてこっちを見てた。

私が手を振ると、笑顔で振り返してくれる蒼井君。

「え?さっきの集団の中に誰かいた?」

「……ヒミツ」

「えぇ〜っ!」

夏姫には、まだヒミツ。


あのお祭りで、蒼井君が買ってくれた、りんごといちごとぶどう味のあめ……まだ冷蔵庫に保存してる。

いつ食べようかな……と、ふと考えた。




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