第13話 ぐーたら
今回は、見ても見なくてもいいです…
朝日に気づき、目が覚める。
「んん〜…………」
時計は、10時になっていた。
昨日は21時に帰ってきて……そのまま寝ちゃったんだっけ。
たっぷり13時間も睡眠とっちゃったわけだ……
髪を解くと……ボサボサ。顔は見れたもんじゃない。
「サイアク……風呂入ろう」
下着と部屋着を持って、1階に下りた。
シャワーを浴び、すっきりしてダイニングへと向かう。
「ふあ……眠ぃ眠ぃ……」
間抜けな声が後ろからしてきて……ビクッとなって振り返った。
「沙彩か?」
爆発頭のゾンビが、髪を掻きながら近づいてくる……
「それとも彩華か?」
ずいっと顔を近づけられ……
「うわぁぁぁぁぁっっっっっ!!!!!」
思い切り後退りした。
って、いやいや、この物体は……
「朝から奇声を上げるな。うるさいし近所迷惑だろう」
部屋に戻り、髪を上げてメガネをかけた……お父さん。
そう、さっきのゾンビはお父さんだったのだ。
「朝からゾンビ化してるお父さんが悪いっしょ……気をつけてよね……もう年いった16歳なんだからさ……」
「俺は何もやっていない。しかも16歳っつったら若い盛りじゃねーか」
大口をあけ、ヤツは肉を一口で平らげる。
「ていうか、なんでここにいるの?」
「お前忘れたのか。盆だよ盆」
ああ、お盆ね、なるほど…
肉を切り、私はちまちまと食べる。
「それより、せっかく帰ってきたんだ。街にでも行こう」
「なんでお父さんと街に行かなきゃなんないの?お母さんと行けば?」
「彩華は今、仕事で忙しいんだ。誘えるわけないじゃないか」
溜息を吐き、ヤツはお米を一気に平らげる。
少し冷めていたお米は、一度に口にいれてもあまり熱いと感じないらしい。
「ごちそうさま」
お父さんは手を合わせ、食器を片付ける。
「そういえばお前、彼氏とかまだできないのか?」
「いないよ」
「はぁ?俺は彩華とは沙彩ぐらいの時に知り合ったんだぞ。お前……売れ残るぞ?」
「うっさいなぁ……お母さんも同じこと言ってたよ」
娘に向かって“売れ残る”なんて言う父親は一体どこにいるのか……
溜息を吐いた。夫婦揃って似たもの同士だね……
「でも、好きな奴はいるんだろ?」
「……いるよ、一応」
それだけ答えると、水を飲んだ。
「ふーん、そっか。そーだよなぁ、華の女子高生たるもの、想い人の1人や2人……って、え、マジ?誰?」
お父さんの声が一気に変わり、信じられないといった疑惑を持った目で見られた。
「誰でもいーじゃん。お父さんが知らない人だよ。当たり前だけど」
それ以上追求されるのがめんどくさい、と思い、さっさと食器を片付け部屋に戻った。
「んー……ダルい……」
ベッドに再び寝転び、寝返りをうつ。
……そういえば去年、夏姫とたっくんがお父さんと遭遇し……
『あの人、さーやのお父さん!?超若くない!?しかもめっちゃカッコよくない!?佐○健みたい!(ルーキーズの)』
『あぁ!一瞬、メガネかけた佐○健って思ったし、マジで!』
いや……佐○健は言いすぎでしょ!と思った……
だって年が10ぐらい離れているし……いや、20だっけ?まぁいいや。
それは置いといて……
「ピアノしようっと」
部屋に置いてあるグランドピアノのふたを開けた。
お母さんの代から伝わる、グランドピアノ。音質は、ピアノの先生の家のピアノよりも抜群だ。
今弾いてるのは、クロード=ドビュッシーの「月の光」
月の光をイメージした、綺麗な叙情曲…
特に中半の盛り上がるところがいちばん好き。
最後のアルペッジョが終わったとき、ケータイの着信音が鳴った。
「誰からだろ……」
すっかり冴えた頭で、ケータイをとる。
……蒼井君からだ。
『昨日、レディースに逆ナンされた(笑)』
思わず、笑ってしまう。
逆ナンって……
『私は無事帰れたよ(・v・)Vそっちは災難だったね』
顔文字って…何日ぶりに使っただろうか…?
送信、と。
すると10秒後に、返信がきた。
『それはよかった^^』
……うーん、返信しにくい内容……
とりあえず、ゾンビのことを送った。
『今朝、ゾンビが出たの!
よく見たら、お父さんだった(^□^;)』
『朝にゾンビは出ないし(笑)
お父さん、いつも家にいないの?』
『海上自衛隊やってて、たまにしか帰って来ない。
だからこそ、リアルでゾンビかと……』
『海上自衛隊……カッコいい!』
……私の場合、陸上自衛隊の方がカッコよく思えるんだが……
『ちょっと出かけてくるんで、しばらく返信できない…m(_ _)m』
『OK(●・v・)b行ってらっしゃい!』
メールが終わった途端、寂しさと同時に嬉しさもこみ上げてきた。
向こうは知らないだろうな……私が、どんな想いでいるのかってこと。
「んへぇぇ……」
妙な奇声を発しながらベッドにうつぶせる。
なんか、キョン化してきてるかも……?
そのまま寝てしまい、7時になっていた。
「何時間寝れば気が済むんだろうねぇ私の体は……」
夜、寝れるんだろうか……という不安に駆られながらも、立ち上がり1階に下りる。
「あ、やっと起きた」
お母さんが料理を並べながら、私の方を見る。
「あんた、今日何時間起きてたの?」
「……多分、1〜2時間ぐらい?」
「ハァ。補習が終わった途端、勉強する気も失せてしまったわね……」
お母さんは、呆れ顔だ。
「ほら、ご飯できたわよ。食べなさい。」
カレーが、おいしそうな匂いを漂わせている。
あんまお腹空いてないけど…無理して胃に詰め込んだ。
そして部屋に戻り、ベッドにうつぶせて……就寝。
……かなり、生活がぐーたらになってきた……かもしれないです。