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海と想いと君と  作者: coyuki
第6章 過去からの蘇生
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第104話 Pre Cristmas Day

それから日々は流れ……冬真っ只中!な今日この頃。

今は4時限目の数学の時間。履修範囲が終わり、ほぼセンターに向けた演習である。

前半問題を解き、後半は巨大先生(久々登場)の熱の入った解説……というこの頃のカリキュラム。

問題をとっくに終えていた私は、窓の外での体育の授業をじっと見ていた。

「えー、それじゃあ、問1(2)は杉浦に板書してもらおう!」

水曜日の4時限目と金曜日の3時限目……蒼井君がいる理系クラス(2年A組&B組)の体育の時間。

彼の姿を探している最中だった。

「くぉらぁ!!杉浦ぁ!!」

「あ、は、はい!」

いきなり耳に届いた罵声に、慌てて教卓へ向かい直した。

「問1(2)をさっさと板書しやがれぇっっっ!!!」

「ラ、ラジャッ!」

ガタッと立ち上がり、ノート片手へ壇上へ。

……その間、笑い声ひとつ起きなかったのは……受験前特有のピリピリ感だろうか。

若干、いやかなり申し訳なく思いながらチョークでノートの文字を書き写した。


「さーや、かなりのKYだったねぇー!授業中に大翔君のこと探してたんでしょ?」

「あ、バレてた……」

「さーやが周り聞こえないぐらい熱中するのって、青井様が絡むときぐらいしかないもんねー」

そして、お昼ご飯。夏姫、杏里(こちらも久々登場)と一緒に弁当をつついている最中、さっきの事件についての話になった。

彼氏についての話題、昨日見たテレビ、噂話……女子同士の昼食のテーマとなる話のベースは、相変わらずコレ。

でも、最近は勉強の話だったりとか、分からないトコの教えあいとかが増えた。

そしてあともうひとつ……何かしら、勉強道具を手に弁当をつつくことも増えたんだ。

実際、夏姫の手には英単語帳、杏里の弁当の横には電子辞書、私は日本史の用語集が膝の上にある。

「……さて!来週の24日はクリスマスイブですが!」

そんなとき、夏姫が単語帳を胸ポケットにしまってそう切り出した。

そして、2人はどんな予定なの?と続ける。

クリスマスか……もうそんな時期か。

最近はずっと、放課後は図書館で勉強して、蒼井君の部活が終わる頃に玄関に行って……彼と待ち合わせして帰って、それからは家で4時間か5時間勉強して……の繰り返しだったから、日にちや曜日なんて、そうそう覚えていなかった。

そんなわけだから、もちろん蒼井君とはどっかデートに行ったりもしていない。

「私は……勉強かなぁ。やっぱなんだかんだいって、勉強は大事だし。彼氏には悪いけど……」

杏里が電子辞書をパタンと閉じながらそう言った。

杏里の彼氏は同い年。一緒の大学を目指しているけど、杏里の方は偏差値が少し足りないらしい。

「さーやは?」

「そーだなぁ……」

久々にデート!といっても、やはり単語帳のひとつは携帯して移動中に見たり……とかしちゃうだろう。

そんな私とデートして、はたして蒼井君は楽しいのかどうか……

うん、とひとつ頷くと、夏姫は興味津々な表情で私の顔を覗き込んだ。

「勉強だ!」

「「えーっ!!!」」

……なぜか、2人同時にそう叫んだ。

「さーや、それはダメ!蒼井様が彼氏でいながら、それはダメ!」

「大翔君2年生だよ!?遊び盛りだよ!?となると他の女の影だよ!!大翔君にその気がなくても、あのルックスじゃあ絶対誰かしかけてくるよ!」

「……んじゃあどうすればいいんだよーっ!!」


―――……


「なー大翔、お前、今年のクリスマスってどーすんの?」

「クリスマス?」

昼休み。購買で購入したパンを食べていると、カイジがそう聞いてきた。

もうそんな時期か……なんか早いな。

デートの後、新人戦があって、沙彩さんが応援に来てくれて、見事優勝して……それからは期末に模試に……と、日にちを気にする間もなかったな。

「そーだなぁ……」

デートに誘う……といっても、沙彩さんは受験生だ。遊びに連れまわして風邪をひかすのもいけない。

たまには息抜きに……っていう誘い文句をかけても、単なるありがた迷惑だろう。

うん、とひとつ頷くと、カイジやユウヤ、シゲオも興味津々な顔で俺を覗き込んだ。

「勉強だな。最近部活ばっかで期末の結果も思わしくなかったし、模試もあまり手ごたえなかったから」

「「「オイオイオイオイ!!!」」」

なぜか、3人同時にツッコまれた。

「部活では県1位、その上彼女持ちでリア充のお前のクリスマスが1人で勉強とか……そりゃねーだろ!」

「お前杉浦先輩のスペック分かってんのか!?裏ではファンクラブできてるほどだぞ……先輩にその気がなくても誰かしかけるぞ!」

「つーか平均90点とっといて思わしくないとは何事だよ!」

「……んじゃあどうすりゃいーんだよ……」

3人は一斉に「先輩と相談しろ」と口をそろえた。


―――……


そして、12月24日。

今日は6時間授業で、いつもより早く学校が終わった。

いつもなら、図書館に直行して参考書を開くのだが……今日は違う。

「「……あ」」

蒼井君の教室に向かおうとしていた途中の廊下で、バッタリ会ってしまった。

「……私、B組に向かう途中だった……」

「俺も、A組に向かう途中……」

……なんという以心伝心。私たちは同時に笑いあった。

「んじゃー、行こっか」

「……うんっ」

今日はクリスマスイブ。帰る途中、いっぱい寄り道する日なんだ。




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