下-博麗霊夢と幻想郷
こちらは第4話です。第1、2、3話をご覧でない方はそちらからご覧下さい!
「あなたがここに来た理由。それは『人生』への絶望よ」
霊夢は静かな声でそう告げる。
「あなたがあなた自身の人生に絶望してどれくらい経っているかはわからないわ。でも、きっとあなたは今死ぬか生きるかのぎりぎりの狭間で生きていたのよ。」
僕はなぜだか納得してしまった。
他の人が見知らぬ人にそんなことを言われたら、自分の人生を否定されているような気がして怒ってしまうだろう。
「その顔、その表情・・・なんだか昔の私と似てるわ」
僕が、霊夢と似ている?
そんなはずがない。この世界の主人公で、ヒーローで、いろんな人や妖怪に慕われている霊夢と似ているはずがない。
「そんなことないって顔してるわね」
そういうと、お茶を一口飲み、話し始めた。
「あなたたちの世界では、私はこの世界のヒーローかもしれないわ。でも、それは本当にここ最近の話なの」
霊夢は何かを思い出すように目を瞑る。
「私は昔『嫌われ者』だったわ。先代から博麗の巫女としての立場を受け継いですぐの頃は、ろくに妖怪退治だってできなかった。」
嫌なことを思い出したのか、お茶を持つ手に力が入る。僕はいつの間にか背筋を伸ばしていた。
「徐々にみんな私のことを適当に扱うようになっていったわ。神社への嫌がらせが増えたり、最初は信仰してくれていた人も離れてしまった。だから、私は自分の存在が『要らないもの』だと感じるようになったの。」
そこまで話して、厳しかった霊夢の表情がすこし緩む。
「でも、そんな時ある人が私の話を聞いてくれてこう言ったの『お前は強くないかもしれないけど、やさしさっていう強い部分を持ってるじゃないか。それを使えばお前はきっと必要な人になれると思うぜ。自分なりのやり方でやってみたらいいんじゃないか?』ってね。」
少し下を向いていた霊夢の顔が真正面に向けられ、やさしい口調でこう言った
「話を聞いて、あなたも同じかもしれないって思ったわ。私にはあなたの強い部分はわからない。でも、あなた自身の強い部分は必ずあるはずよ。」
僕はあまり納得がいっていなかった。自分じゃ何の取り柄もない。そんな人だと思っていたから。
「自分じゃわからないのは当然よ。でも、あなたの周りにそれを知っている人は必ずいるわ。一歩踏み出せばそれが分かるの」
「でも、そんなこと言う自信が・・・それなら死んで受け入れてくれる幻想郷にいた方が・・・」
また僕は弱音を吐く。すると霊夢は
「幻想郷だってね、すべてを受け入れるわけじゃないの。あなたの知る幻想郷は全てを受け入れてくれるのかもしれないわ。でも、ここはそんな世界ではないの。受け入れてくれることもあれば、受け入れてくれないこともある。そういう世界なの」
霊夢は少し強い口調になってこう言う
「あなたは今死んだらここでもきっとつらい生活になるわ。そして絶対に後悔する。今ならまだ戻れるの」
こうやって面と向かって言ってくれる人に出会ったのはいつぶりだろうか。
今までずーっと一人で生きているような気がしてた。でも、こうして話を聞いてくれる人もいる、アドバイスしてくれる人がいる。
「僕、戻ってみます」
気づいたらそう言っていた。
「もう少し、もう少しだけ努力してみます。」
そう言ったら霊夢は
「あなたなら大丈夫」
そうやってやさしく返してくれた。
ここまでご覧頂きありがとうございました!
残り1話となりました。一生はその後どうなったのでしょうか…最終回にしっかり分かりますのでぜひご覧下さい!
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