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公務員生活も楽じゃない!? ~執筆の魔王は今日も色々振り回されてます~  作者: 宇佐美
一章 僕たち治安維持管理局特務課!
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25頁 結界破壊

 ローランが泣きそうな声で叫ぶ。


 僕だって確実に成功すると言いたいところではあるが、本気を出したウィルでも成功率は七割ってところだ。

 そもそも、ざっと計算したところ、930億プラムの魔力量が必要なのである。ウィルが全力でその量を出力できたとしても、それはほんの僅かな瞬間――0.1秒にも満たない。

 だが、その僅かな瞬きにも満たない瞬間であろうと、一度でもその魔力を積層立体七重封印セブンス・ウォーターツリーにぶつけることが出来れば、破壊は叶う――


「あ、クラフト。やばい、もう持たん……!」

「マジか!? 早いぞ!」

「んならお主が代われ!」


 不味いな……。ウィルは準備にもう少し時間がかかる。

 どうもそれまでに障壁(シールド)が持ちそうにもない。

 エイジングの魔力はそれなりの容量があるはずなのだが、僕らの周囲を囲むように展開している障壁(シールド)は思った以上に魔力を消費しているようだ。

 それは、マリーニとエティの二人も同じだろう。

 だが、ドローンたちの掃射は止む気配がない。

 無限に攻撃できるはずはないと思っていたが、どうやら、数十体のうち何体かがローテーションで補給を行っているようだ。

 この勢いはしばらく止みそうにない。


「ご主人様。私が、ある程度引きつけて参ります。障壁(シールド)の消費も緩和されるかと」

「……いけるか?」

「おい、ねーちゃん! 流石にこの雨の中出ていくのは自殺行為ってもんだ。アンタがいくら強いってもこりゃあ……」


 何だかんだでローランも悪い奴ではないようで、人の心配が出来るぐらいの良心はあるらしい。

 だが、そんなアミタの言葉を聞いて、タイタスも立ち上がる。


「じゃあ、僕も行こう」

「おいおい、タイタス……!」

「いくらか分散するから、そこまで危険じゃない。ざっくり見積もっても三分の一になるわけだしね。そろそろ僕もリーダーらしきことをしてかないと。向けられる弾数が減るなら、僕でも避けようはあるさ」


 ざっくり計算過ぎるだろとも思ったが、障壁(シールド)への負荷が減るのであればこの際何でもよかった。

 タイタスは直剣を抜き、右手へと構える。


「アミタ、タイタス、頼む。ローラン、お前もここからでいい、援護しろ」

「てめぇはどうすんだ!?」

「最悪に備える。エイク、こっち寄れ。障壁(シールド)の範囲からは出るなよ?」


 僕は腰のホルダーに手をかける。()()という時には使わざるを得ない。


「チッ……こんなことになるっつーんだったら炸裂弾持って来るんだったぜクソッ。タイタス! ねーちゃん! 魔法妨害弾(チャフ)に合わせろ!」


 タイタスが魔導銃に弾丸を装填し、構える。

 そして、銃口を頭上に向けて引き金を引いた。


「食らいやがれオラァ!!」


 放たれた弾丸は、僕たちの頭上で破裂し、その中身をまき散らす。ちょうど障壁(シールド)を張っている僕らを包み込むように。

 視界を奪う煙幕と、魔法式(コード)の刻まれた極小の金属片だ。金属片の持つ魔力が乱反射を起こし、魔力探知(サーチ)を撹乱させるものである。

 その射出と同時に、アミタとタイタスはドローンたちの側面へと飛び出た。

 効果は幾分かあったようで、弾丸の雨が若干弱まった……ような気がした。


「ふッ――!」


 やはり、一番槍はアミタだった。

 紫電を纏い、文字通り目にも止まらぬ速度で、1体のドローンに駆け寄り、包丁を振るう。

 それに反応したドローンだったが、時すでに遅し。

 気付いた時には、腕と頭が胴体から斬り飛ばされており、それが崩れ落ちる頃にはアミタは既に他のターゲットへと刃を振るっている。

 タイタスも負けてはいない。

 流石にアミタほどの速さではないが、それでもドローンの反応速度を上回るスピードで接敵、右手の直剣で袈裟に斬りつける。

 肩口から腰に掛けて斬り裂かれたはドローンはその機能を停止し、倒れた。

 もう、あいつらだけでいいんじゃないかな。


「二人ともやりおるのう」

「確かアイツの剣って何かの神遺物(アーティファクト)だったか」

「もうあの二人だけでいいんじゃねーか……」


 エイジングは会話するほどには余裕があるらしい。他の二人は歯を食いしばりながら必死に障壁(シールド)を展開しているが。

 まだまだいけそうだなお前。


「一応言うておくが、これでもいっぱいいっぱいじゃからの? 二人のおかげであ奴らの攻撃も小さくはなってきておるが……」


 顔には出さないエイジングと比べ、二人の魔法師はもう悲鳴を上げそうな表情をしていた。これ程の状況もそう経験するものではないだろう。

 ふと、僕の横で魔導銃による援護をしているローランと目が合った。


「あのねーちゃんは何モンなんだ。タイタスよりも強ぇってのもあながち間違いじゃなさそうだしな……」

「ん? タイタスから聞いてないのか」

「……?」


 てっきりタイタスあたりからの説明があったもんだと思っていたが。


「まぁ、それはここを生き延びてからだ。 ウィル、まだか!?」


 振り向くと、ウィルの周囲に展開されている夥しい量の魔法陣や魔法式(コード)が七色の光を放っていた。

 どうにか、完成したようだ。


「アミタ! タイタス! 戻れっ!! ウィル――!」


 アミタとタイタスが、戦闘域から離脱する。

 よく見るとそこらにドローンの残骸が転がっており、数も10体ほど減っていた。やり過ぎだろあいつら。


「おぬしら伏せよ――!」

「このような魔力――下手をすれば遺跡ごと吹き飛ばしかねませんわ!」


 エイクが焦ったように叫ぶが、今は知ったことじゃあない。


「……我、門を知れり。鍵持ちて門を開き、その存在と空虚なる全一を滅却する窮極を、顕現させるもの――――!!」


 ウィルが詠唱しながら、僕らの前へと踊り出た。

 背にあった光の片翼が光の塵と化す。

 手を前方へと突き出し、完成した魔法を放つ。

 同時に、障壁(シールド)が破壊される音が聞こえた。


「……――【十三を超越す窮極の解アルカルブ・アルアサド】!!」


 瞬間、七色の極光が周囲を包んだ。音と視界が消えた。

 普段僕らが目にする一般魔法(パーソル)とは一線を画す、ウィルの魔力によって紡がれた、最上級の神域魔法(ディバイン)をも超える魔法。

 ツーテンポ遅れ、轟音を伴った身体を芯から震わす衝撃が僕らを襲う――――!


「ぬぉぉぉぁぁぁ!」

「なっ――!?」

「…………ッ!」


 それはほんの一瞬だっただろう。知覚できないほどの光の瞬きに過ぎなかったに違いない。

 だが、音も時間も吹き飛ばしたそれは確かに、積層立体七重封印セブンス・ウォーターツリーの防御力を上回っていた。

 純粋な魔力による暴力。それが七層全てを完全に吹き飛ばす。

 現実時間では一瞬だっただろうが、僕らにはそれがとてつもなく長く感じられた。


「ん……っ!?」

「ご主人様、ご無事ですか」

「何とかな……」


 強烈な光によって奪われていた視覚が、落ち着きを取り戻し始め、徐々に視界が鮮明になっていく。

 塵と煙が晴れたそこには――


「げぇっ!? マジかよ……」

「うっそ――」

「あっはは……これは流石に」


 まず僕らの眼に入ってきたのは、辺り一面の瓦礫と散らばるドローンと思われるものの破片。

 その残骸にしても原型を留めていないレベルで歪み、バラバラになっていた。

 光沢を放っていた壁や床が焦げ付き、砕け散り原型を留めていなかったが、どうやら天井は無事の様である。生き埋めは免れたようだ。 


 あの歪な五芒星が描かれた扉とその周囲の壁は完全に吹き飛ばされ跡形も無くなっており、代わりに遺跡の奥へ続く暗い通路が口を開いていた。

 後ろを振り返ると、塞がっていた入口も元来た時と同じように開放されていた。

 あの魔力量であれば、それこそ遺跡ごと吹き飛ばしていても不思議ではなかったが、そうならなかったのは、出力された魔力の大半が、積層立体七重封印セブンス・ウォーターツリーと干渉し合って相殺されたからである。


「何が起きたと……いうんですの」


 エイクがその場にへたり込む。


積層立体七重封印セブンス・ウォーターツリーと言えど結界だ。結界自身、魔力密度の高い障壁(シールド)と変わらないからな。なら、それを上回る密度の魔力をぶつけてやれば、結界ごと吹き飛ばすことが出来るってことだ。厳密に言えば、結界の中和作用を――」

「成功したから良いものの、少しでも魔力位相がずれておれば、全部跳ね返って遺跡ごと我らが吹っ飛んでおったのう……」

「マジかよ……マジかよ……」

「……ぶいぶい」


 全てを出し尽くしたウィルは、力尽きたようにその場へ崩れ落ちる。

 アミタが抱きかかえ、その顔を覗き込むが、どうやら無事なようだ。

 相変わらず眠たそうな表情でその顔色は青いが、両手でピースを作れるぐらいにはまだ余裕があるらしい。


「ふむ、余波で扉まで破壊してしもうたか。まぁ、開ける手間が省けたと思えばいいかの」

「余波!? これが、余波……!? しんっじられない……」

「マリーニさん……僕はもう深く考えないことにしました」

「……うん、そうね……。私ももう気にしないことにするわ……」


 思考停止する二人と、信じられないものを見て、開いた口が塞がらないローランをよそに、タイタスは爽やかなイケメン笑顔を振りまきながら小さく拍手をしていた。

 こいつはいつでもブレないな。


「いや、本当にやってしまうとは思いませんでしたよ! 流石はクラフトさんたちと言いますか。正直、成功するとは……!」


 訂正。こいつも興奮する時があるようだ。


「まさか、本当に七層の全てを完全に吹き飛ばしてしまうとは思いませんでしたよ……アレのせいで遺跡はおろか、扉にすら干渉できませんでしたからね。でも、この解除方法は参考にしようと思っても流石に無理だ。ですよねエイクリー主任?」

「だから言っただろ。参考に出来るならよし、出来ないならそれまでだって――おい、エイク」


 僕とタイタスがエイクへと振り向くと、体を震わせながら顔を俯かせて、何やらぶつぶつと呟いている。


「おい、エイク」

「す……すっ――」

「んん?」

「すんばらしいですわぁぁぁぁぁぁ!!」


 勢いよく顔を上げたエイクは、アミタを払いのけ、勢いよくウィルを抱きしめ頬ずりする。


「……ぁう」

「何ですのあの魔力とあの魔法ああアレは神域魔法(ディバイン)またはそれに限りなく近い魔法ですのねいえ神域魔法(ディバイン)をも超える何かとしか形容できませんわしかも結界との位相を揃えるとは流石お師匠様と言いますかしかしあのような出力を出すには少なくとも魔法式(コード)の4重いえ6重に重ねた積層魔法陣を展開してそれと魔法式(コード)を同調増幅させてかつ出力と消費魔力の再効率化も行わないといけないでしょうしそもそもウィルさんの異質な魔力が関係しているのだとすればもっと違うアプローチがあるでしょうあの光の翼も気になるところですけれどその前に魔力の固定化と可視化なんてそれこそ最先端魔導技術でも研究され始めたばかりですしやはりここは一度持ち帰って詳細な分析をぐへへ――」

「せいッ!」

「あっふん!?」


 壊れたスピーカーか何かのように、捲し立てるエイクの首元へ手刀を落として黙らせるアミタ。よくやった。


「解析癖が出たか」

「……お姉さまの駄目なとこ」

「気持ちは分からんでもないけどな」


 未知に対する探究心、という意味では僕の抱かえる知識欲と似たようなものだ。

 この手の輩は、自身が納得するまでその熱が冷めることが無いから厄介なのだが。


「……ご主人ご主人。ウィル頑張った?」

「頑張ったな。偉いぞ、うん」

「……じゃあ、ごほうびが欲しい」

「帰ってからな」

「……やった……!」

 

 これで一つの難関は突破できた。

 だが僕たちの仕事はこれからである。

 なんかもー疲れたな。

お読みいただき有難う御座います!

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また、ご感想もお待ちしておりますので、ご遠慮なくどうぞ。

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