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公務員生活も楽じゃない!? ~執筆の魔王は今日も色々振り回されてます~  作者: 宇佐美
一章 僕たち治安維持管理局特務課!
28/42

24頁 ドローン

「な、なん!?」

「な、何の音ですの!?」


 だから絶対はないって言ったろ!

 アミタを除く皆、咄嗟に耳を塞ぐが、不快な警報音と音声は一向に鳴り止む気配がない。

 ウィルとエイジングは青い顔をして蹲っていた。


「……うぅ。この音嫌い」

「クラフト! 何とかせい!」


 エイジングは非難するような目つきで僕を見る。何とかと言ってもな!

 こんな事態は完全に予想外だ。

 栄光を掴むもの(グローリアス)の面々も顔をしかめて耳を塞いでいる。どうやら彼らにとっても予想外だったらしい。


「出来ればとっくにやってる! というか、安全って言ってなかったか!?」

「くっそうるせぇ!」

「何なの!? 私たちが調べた時はこんな……!」

「安全じゃなかったのかよ!」


 エイクに向かってローランの口から非難の声が浴びせられる。


「それはそうなのですが……」


 苦悶の表情で蹲る僕たちを他所に、鳴り続ける警報。

 ふと、エイジングが閃いたかのように顔を上げた。


「アミタ! あの台! あの台に触れるんじゃ!」

「えっ……?」

「早く!」


 理解するよりも、身体の方が反応したのか、アミタは弾かれるように扉前へと駆けつけ、円柱状のオブジェへ思いっきり手刀を振り下ろす。

 いや攻撃してどうする。

 だが僕の思いとは裏腹に、一筋の緑光がほとばしり警報音が鳴り止む。ワンテンポおいて、再び無機質な声が響いた。


『――アクセス権限フォースニヨル再起動ガ実行サレマシタ。広域スキャン開始…………終了。脅威確認、一。ゲート遮断。迎撃ドローン射出。職員ノ皆様ハ速ヤカに退避シテクダサイ。繰リ返シマス――』


 幾度か音声が繰り返されたかと思うと、部屋は何事もなかったかのように静寂に包まれた。

 ウィルは恐る恐る耳の塞いでいた手をどける。


「……止まった?」

「鳴り止んだようじゃの……まだ嫌な予感はするが……」


 ほっと、一息をつくエイジング。

 エイクは首をかしげる。


「先に入った調査隊がそれに触れても何もありませんでしたわ。なのにどうして……」

「エイジングよく分かったな」

「ふん。まぁ、動かすのも止めるのもこの手に限る」


 叩いて直す的な意味なのか。古臭い魔道機器じゃあるまいし……。


「ですが、新しい発見ですわね。この遺跡はまだ生きています。罠か何らかの装置かはわかりませんが、未だ動き続けている完全な状態の遺跡ということですわ! これは歴史に残る大発見かもしれませんわよ!」


 エイクが興奮気味に話す。

 確かに、遺跡というものはその殆どが神々が地上にいた時代、すなわち神代に建造されたものと言われる。

 千年単位で時が経っている以上、どういったものでも風化は免れない。

 だが、この遺跡はそんな中でも未だ遺跡として何らかの機能を保持しているらしかった。


「で、これからどうすんだ?」

「どうするも何も、取り敢えずは当初の予定通りだ。……ウィル、始めるぞ」

「……うゆ。任されたの」


 僕は皆を扉を離れて下がるように促す。

 入ってきたホールの入口ギリギリまで僕らは後退する。


「おいおい、離れてどうすんだ?」

「お師匠様? 積層立体七重封印セブンス・ウォーターツリーはあの扉が最外層なのですが……」

「まぁ、大人しく見てろ。巻き込まれたくないなら後ろに下がってた方が良いぞ」


 ウィルが詠唱を始めようとしたその瞬間だった。


「――ッ!? ご主人様!」


 アミタが叫んで天井を指さした。

 円筒状の物体が、音を立てて僕らの前へと降り注ぐ。その数30ほど。


 囲まれた?


 直立したそれぞれは、2メートルほどの高さを持ち、大体人が一人入れるぐらいの胴回りを持っている。

 そして、その円筒に垂直に切れ目が走ったかと思うと、縦に二つに分かれた。

 中から、全身が金属のような――まるで全身鎧を着こんでいるかのような――角ばった容姿の、人型をした何かが蒸気を纏いながら出てきた。


「何よ……あれ……」

「おい! 入口が塞がってんぞ!?」


 ローランの視線の先。

 このホールに入ってきた、地上と繋がる唯一の入口が影も形も無くなっていた。


「どーなってんだおい――」

「エイジング!」

「うむっ!」


 殆ど、本能的に僕はエイジングを呼んだ。僕の意図を理解したのか、彼女も本能的な反応だったのか――

 一歩遅れて、タイタスが声を荒げる。


「マリーニ! エティ!」

「おいおい、魔物はいねーんじゃなかったのかよ!?」


 茫然としていた二人の魔法師は、タイタスの声で我に返ったのか、エイジングと同じように障壁(シールド)を展開する。

 この魔法は、特に難しいものではなく、一通り魔法を学んだものであれば誰でも使えるような代物だ。

 だが、その展開範囲と持続時間は使い手の魔力量に比例する。


 円柱から出てきた――排出されたと言うべきか――その全てが、一斉に音を立てて動き、腕と思われる部分をこちらへと向ける。

 その先には魔導銃によく似た――腕が上げられ、それら全てがこちらを向いていると認識した瞬間には、既に閃光と炸裂音が辺りを包み込んでいた。

 魔導銃……いや、あの時代には存在しないものだ。それに似た武器だ。

 驟雨の如く降り注ぐ彼らの腕から放たれた弾丸は、本来なら僕らの身体を余すことなく貫いていただろう。エイジングたちが間に合わなければ。


「いや、我も抜けておったわ」

「迎撃用のドローンかこいつら!? エイジング、どれぐらい持つ?」

「ウィルの詠唱に間に合えばいいんじゃがのう」


 ということは、間に合わない可能性があるということか。

 今、僕らの身を護っているものは、エイジングたちが展開している障壁(シールド)だ。

 魔力密度を高めた魔力の壁である。

 単純に密度以下の物理現象――即ち攻撃は通してしまうものの、術者の魔力が切れない限りは展開し続けることが出来る。

 同時に、ローランがゴツい魔導銃で反撃を試みる。この辺りの反応が早い所は流石トップクランの一員というところか。


「ああっもう! 何なのよ!」

「ローランさん! もう少し後ろに下がって! 庇いきれませんッ!!」


 ローランが慌てて僕らの後ろへと下がり、身を伏せる。

 エイジングに加えてマリーニとエティの障壁(シールド)で幾分かは持つだろうが……相手の掃射は収まる気配がない。

 銃弾が弾かれ、火花を散らす。


「ウィル。いけるか?」

「……問題ない、けどご主人。ウィルも手伝わなくていいの?」


 ウィルの魔力量であれば、障壁(シールド)の維持は容易いだろう……が、彼女にはもっと重要な仕事がある。


「いい。予定通り始めてくれ」

「ちょっと! その子も障壁(シールド)張れるなら手伝ってよ!? 私たちだけじゃ……持たないッ!」

「お師匠様、この状況だと調査も何も――」


 エイクは退却を促すが、あいつらがこのまま逃がしてくれるとは思えない。

 そもそもこの掃射に加えて、囲まれているこの状況では安易に身動きが取れないし、入口が塞がれてる今、戻ることも出来ない。


「魔導銃使う魔物なんざ聞いたことねーぞ」

「いや……あれは魔物というより、自動人形(オートマタ)? かな? でも、アレが表に出ると結構厄介だ。上には調査員たちがいるしね」

「正しくはドローンだ。先史文明期の自動人形(オートマタ)とも言うべきか」

「相手の弾切れ……は狙えそうですかね?」

「その前にこっちの魔力が尽きなけりゃいいけどな」


 さて、流石にこの状況を一気に打破しようと思うのならば小手先の対応では難しいだろう。

 ウィルが障壁(シールド)を張って持久戦に持ち込むのもいいが、相手がどれくらい持つか分からない以上、不確定要素はなるべく排除したい。

 ならばアミタに任せるか、という選択肢も思い浮かんだが、この弾丸の壁ともいえる掃射状況の中、障壁(シールド)から出て数十体のドローンを全て破壊するのは、彼女と言えども容易ではない。


「うーん。お手上げですかね」

「全部まとめてぶっ飛ばすぞ」

「ですが……どうやって――」


 幸いと言うべきか、この状況を打破することと、本来の目的は一致している。


 ――《星辰光輝の片翼アストラル・ブレイダー


 ウィルの透き通るような声が聞こえた。

 それは彼女(ウィル)能力(チカラ)


「「――ッ!?」」


 マリーニとエティが驚愕の表情でウィルへと振り向く。

 濃密で異質な魔力が周囲に溢れ広がる。

 魔法師のように、普段魔力に触れている者ならその異常性を感じられるだろう。

 タイタスとローラン、エイクは鈍いのか何が起こっているかすら把握できていないようだ。


「何なんですかこの……」

「昔入ったことのある深淵魔獄も――いえ、その比じゃないわ! 何なのそのおかしな魔力!?」


 ウィルの背中には、青白く光り輝く片翼が現出していた。

 これは彼女の()()な魔力が目に見えるように具現化したものだ。

 ウィルが普段使う魔力とは違う異次元の魔力。その魔力を行使する際に顕現する。

 魔力というものは、それ自体目に見えるものではないのだが。


「……クラフトさん。もしかしてもしかするとなんですけど、全部まとめてって――」

「タイタスさん。(わたくし)も今、同じことを考えていると思います」


 流石は優秀な二人である。これからウィルが何をするか、正解に至ったらしい。


「ウィル、始めろ!」

「……うゆ。任せて――!」


 ウィルは目を閉じ、魔法式(コード)を口ずさみ、全身に魔力を巡らす。

 彼女が指揮者のように指を動かす度、詠唱が進む度、手元や足元――ウィルの周囲に七色の魔法陣や幾何学模様が浮かび上がり、重なり、広がっていく。

 その様子を、僕は少し後ろで見ていた。今のところ、魔法式(コード)には問題はなさそうだ。


 ウィルの能力(チカラ)、《星辰光輝の片翼アストラル・ブレイダー》は彼女の行使する魔法の多重展開を可能とする。

 上限を見たことはないが、本気を出すと50は軽く超えるらしい。

 ちなみに、宮廷魔法師で3つが平均値、ということを踏まえると、どれだけ異常なのかがわかると思う。


「凄いな……魔力もそうだけど、ここまでの規模の魔法式(コード)なんてそうそう見れるもんじゃない」

「おい、タイタス。俺は魔法には詳しかねぇが、大丈夫なのか?」

「僕が思ってる通りだと……まぁ、大丈夫なんじゃないかな」

「何が始まるってんだ……」

「ローラン、結界の解除には何が必要だと思う?」


 タイタスは教師が生徒に問うかのように、ローランへと質問を投げかける。


「んなもん、解除式(デコード)に決まってんだろ。流石に俺でもそれぐれぇはわかるぜ」

「そう、解除式(デコード)で無効化するのが一般的だ。普通なら、ね」


 この辺りは魔法を少しでも齧った者や、探索者(シーカー)には当たり前の知識である。

 だけどね、とタイタスは続けた。


「まぁ、他にも魔力の供給源を断つとか方法はあるけど、魔法式(コード)を無効化するという点では変わらないんだ。でも、もう一つ結界を破る方法がある」

「あん? 何だよ」


 こんな場面でも、爽やかな笑みを崩さないイケメン。


「結界そのものを吹き飛ばしてしまえばいいのさ」

「は? んなこと出来んのかよ。聞いたことねーぞ」

「出来るよ。理論上はね。今、マリーニたちが張ってる障壁(シールド)も結界の下位互換のようなものだし、それが破れるなら結界だって不可能じゃない」

「と言いましても、その結界を構築する魔力の何十倍という規模の魔力量が必要ですわ。確かに理論上は可能ですが、誰もその手段を取らないのは、それが事実上不可能だからですわよ?」


 エイク、タイタス、ローランが一斉に僕へと視線を向ける。

 何だ疑ってるのか。


「お師匠様?」

「まぁ、僕を信じるウィルを信じろ。多分いける」

「多分かよォ! 間に合わなかったらどうすんだ!」

「祈れ」

「チクショウ! 神様、何とかしてくれ!」

お読みいただき有難う御座います!

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