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公務員生活も楽じゃない!? ~執筆の魔王は今日も色々振り回されてます~  作者: 宇佐美
一章 僕たち治安維持管理局特務課!
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14頁 結界破壊談義

 そもそも今の僕には必要最低限しか魔力がない。

 そうなるとむしろ一般人よりも少なく、そのためかまともに魔法を使うこともままならない。

 能力(チカラ)を使って魔導書を複製するのは殆ど魔力を使うことは無い。それでも、あの能力(チカラ)を使うと極度に疲弊してしまう。こればっかりはどうしようもない。


 生きとし生けるもの、この世の全ての生物は身体の細胞に『魔素体』と呼ばれる器官を持つ。動物であろうが植物であろうが全ての生物に存在する。

 この魔素体が体内で魔力を生成することで、魔法の行使が可能となるわけだ。


 だがこの魔素体の量は個人差がある。故に人によって魔力生成量――魔力量が違ってくる。

 魔力量が多いほど、扱える魔法数は増えるし、身体の恒常性にも寄与している魔力は、その量が多いほど身体的にも優れているとされる。

 こればかりは後天的に増やすことは不可能。生まれ持った才能だ。

 優秀な魔法師や探索者(シーカー)はこの魔力量がずば抜けているとされる。


「お前が無理ならどうする。アミタ、アンタがやるのか?」

「ご主人様如何致しましょう。私が行う分には問題ありませんが……」

「いや、問題ありまくりだから。出来る可能性があるとは言え、流石にアミタに任せられない」


 アミタの能力(チカラ)であれば……手段を選ばなければ不可能ではない。選ばなければ。


積層立体七重封印セブンス・ウォーターツリーなんか相手にしたらそれこそどれだけ魔力が必要か。次こそ完全に消えるからな……最初からその案はない」

「それはウィルの魔力を代替したとしても、でしょうか」

「まぁ、そもそも代替しなくても――」


 僕は指を立てて言った。


「元々ウィルにやってもらうつもりだ」

「それは……」


 得意げに言った僕へ、リチャードは呆れた顔で返す。


「あのお嬢ちゃんが優秀なのは知ってるが……解除式(デコード)が判明していない結界だぞ。どうするつもりだ」

「企業秘密」

「――ッ!」


 リチャードが何かを言いかけるが、寸でのところで口をつぐむ。

 まぁ、流石にこれは安易に教えられないし、言ったところで真似が出来るものじゃないからな。


「取り敢えず、こっちには何とかできそうな考えがあるってことだ。任せてくれればいい」

「チッ……気に食わねぇな」

「別に気に入ってもらうつもりでやってるわけじゃないしな。仕事だからやるまでで」


 あと、報酬のために。


「へっ、勝手にしやがれ」

「そうさせてもらう。ああ、栄光を掴むもの(グローリアス)はまだ現地にいるんだろ?」

「帰還報告は入ってないからな。まだ遺跡にいるだろう。あいつらも探索者(シーカー)だからな。そう簡単に遺跡攻略を諦めたりはしねぇ」


 予想通りである。

 遺跡の調査権が完全に国へと移管されたとしても、そこは探索者(シーカー)である。

 調査結果の引継ぎもあるだろうし、何より探索者(シーカー)という者たちは未踏破遺跡への憧れ、興味を失わない生き物だ。そう簡単に引き上げるということはしないだろう。


「管理局権限で現地協力者として雇っても良いか?」


 いざというときは魔物からの盾になってもらおう。


「本人たちが納得すりゃあな。ギルドとしては構わん」

「じゃあ遠慮なく使わせてもらうか」


 言質は取ったぞ。

 その返事にリチャードは顔をしかめる。


「お前、何をするつもりだ」

「別に捕って食いはしない。単純な肉体労働のお手伝いをしてもらうつもりだ」


 訝しむリチャードへ淡々と返す。

 いや本当に魔物との戦闘とか任せるだけだからな。


「ご主人様?」

「まぁ、使える者は使おうってな」







▽▽▽







 探索者組合(シーカーズギルド)を後にし、帰路につく途中でアミタがおもむろに口を開いた。


「ご主人様、先程はウィルに任せると仰っていましたが」

「言葉の通りで他意はないぞ。まぁ、前々から考えてた、対あのアホ対策なんだけどなー……」


 積層立体七重封印セブンス・ウォーターツリーは強固な結界だ。それこそ誰もが破ったことのないレベルで。

 だが、結界である。魔法である。

 完全無敵の魔法などこの世には存在しない。神域魔法(ディバイン)であっても弱点は存在する。


「しかし、解除式(デコード)は判明していないのでは?」

「まぁ、一から作るとなると、それなりに時間かかるしな。そもそも積層立体七重封印セブンス・ウォーターツリー魔法式(コード)解析から始める必要があるし」


 そもそもどこぞのエリート様が必死になって解析している今でも、積層立体七重封印セブンス・ウォーターツリーは解除されたためしはないのだ。

 僕やウィルがちょちょいのちょいでどうにか出来るわけがない。


 原則として、結界の無力化には二つ方法がある。

 一つは正攻法として、解除式(デコード)でもって無効化する方法。

 これはリチャードのところでも言ったが、解除式(デコード)が判明していれば、後は必要魔力量さえ確保できれば何とかなる。

 だが、魔力はどうにかなるとして、解除式(デコード)の構築が現時点では不可能だ。じっくり時間をかけて結界を解析すれば出来なくもなさそうだが今回は時間が無いようだし。


 二つ目は結界を、維持している魔力源から断ってやることである。

 結界と言えども、魔法に変わりなく、魔法を行使するためには魔法式(コード)と魔力が必要となる。

 積層立体七重封印セブンス・ウォーターツリーに限らず、結界を維持するには魔力源が必ず必要となる。

 その魔力源から結界に供給されている魔力を断ちさえすれば、結界を維持できなくなり、自然と崩壊する。

 ただ、この手の魔力源は結界内部にあって手が出せなかったりする。

 当たり前と言えば当たり前だが、弱点となる魔力源は結界により護られており、外から手を出すには結界を解除しなければならないというジレンマがある。

 よってこの方法も実質不可能だ。


「では……どのように?」

「力づく」

「……?」


 アミタが可愛らしく首を傾げる。

 卑怯というか、ぶっちゃけると身も蓋もない方法なのだが。


「簡単な話……いや、簡単じゃあないけどな。結界の耐久力を上回る力で破壊するってだけのことだ」

「……それは、確かに理屈としては間違ってはおりませんが」


 往々にして結界とは、その場に魔力による力場を発生させ、外界と隔離し一定の空間領域を形成する魔法の一つだ。

 元は清浄なる領域を物理的に切り取り、維持するためのものだったが、いつしか他者を侵入、寄せ付けなくする魔法へと変化していった。


 そう、魔法である。

 詳しくない人間から見ると、魔法というと万能の力のように思いがちだが、実際はそうでもない。

 魔法は魔力で物理作用を引き起こす技術である。

 よって、範囲はあくまでもこの世界の物理現象の範囲に留まる。それが神域魔法(ディバイン)であろうとも、魔法という力はこの世界の法則に縛られる。


 超高度な結界といえども、無限の耐久性を誇るわけではない。耐久力を上回る力で破壊することは理論上可能なのである。


「無理矢理過ぎるか?」

「ふふっ……いえ、言われてみればそうですね。そこに思い至りませんでした」

「まぁ、魔法師からすると外道な方法なんだろうな。でも別に形式に拘る必要はないし」


 僕は笑いながらごちる。

 力には更に強い力をもって叩き潰せばいい、とは誰の弁だったか。

 だが、アミタも納得した様子だ。彼女もどちらかというと脳筋思考である。


「あとは、ウィルと相談だな。……おっと、もうこんな時間か」


 通りがかった広場の時計台は、お昼を示そうとしていた。


「あっ……申し訳ありませんご主人様。ウィルに買い物を頼まれておりました。私は商店街へ向かいますので、先にお帰りになって頂ければと」


 アミタが申し訳なさそうに頭を下げる。

 それに対して僕は少し考える。

 別に急ぎの用事があるわけでもないし、むしろ帰ったら仕事を押し付けられそうな気がするし……。


「付き合うぞ。荷物持ちぐらいはやるし……たまにはいいだろ」

「え……? ――ッ! は、はいっ」


 一瞬驚いた顔をするも、頬を染めて微笑むアミタ。

 頭一つ高いアミタと肩を並べながら、僕らは商店街へと足を向ける。


 ふと目をやると、少し外れた建物の入口に老若男女が数十人集まってなんやら談笑している。

 黒いカソックを着た神父らしき人物が、子供たちに菓子を配っていた。

 その傍らで、神の名を呟き、祈りを捧げている者もいる。


「あの人だかりは……」

「教会で集会があったのでしょう。今日は中祭儀の日ですので」


 よく見ると、確かにその建物は教会だった。

 世界で最も多い信者数を抱かえるネフレーカ教、その教会だ。


「そんな日か……最近どうも日付の感覚が曖昧だ」

「ふふっ……」


 アミタが可笑しそうに笑う。そんな面白い話題を提供したつもりはないんだが。


「神父がいるのは珍しいな」


 主神イーアルーを信仰するネフレーカ教の教会はそこら中に存在する。

 数が多いため、神の家たる協会にはシスターは駐在しているものの、地位ある神父となると全部に駐在できるほどの数がいない。よって、地域担当制として一人の神父が地域内の複数の教会を担当しているという。

 あの神父もその一人だろう。


「こう見ると平和なもんだけどな」


 ちょうど顔を上げた神父と目が合う。

 軽く会釈してきたそれに、僕も会釈で返す。


「はい。教会内部、その殆どの方は純粋な信奉者でしょうから」

「それでも僕は――」

「はい。存じております」


 この国に国教というものは存在しない。宗教の自由を尊重しているからだ。

 だが、この国の殆どが彼の教義の洗礼を受けている。


 僕たちは神々を信じていないので――存在するしないという意味ではなく、信用できないという意味でだが――、そういった行事に参加したことはない。……いや、まだ何も知らなかった子供の頃は参加させられていたか。

 一般的には十日に一度の割合で、教会に祈りを捧げに行くものだ。子供の頃はそれが面倒でよく逃げ出していたが。


「ご主人様……?」

「流石に教会自体どうこう言うつもりはない。結局は大本が問題だろうからな。……ほら、買い物行くぞ買い物」


 彼らはただの敬虔な信徒に過ぎない。

 根源はそのさらに奥に存在する。


「で、何を買うんだ」

「あの娘から頼まれていますのは……卵、セロリ、蜂蜜、エスカルゴ、牛の舌、豚の耳、鶏の肝臓、蛇の皮、サルノコシカケ……」

「何作る気なんだ」

「分かりかねます……少なくとも食べられないものは出てこないとは思いますが」


 確かにウィルが作る以上、食べられないものは出さないだろうし、その味にも一定以上の担保はあるだろう。

 また何か新作料理のレシピ開発でもしているのだろうが、材料名を聞くと一抹の不安を感じる。


「取り敢えず向かうか」

「……そうですね」

お読みいただき有難う御座います!

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