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公務員生活も楽じゃない!? ~執筆の魔王は今日も色々振り回されてます~  作者: 宇佐美
一章 僕たち治安維持管理局特務課!
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10頁 ピンクの小悪魔来襲②

 それから一時間ほどが経ち、僕らは庁舎の食堂で昼食を取っていた。

 この庁舎食堂で働く皆に食事を作っているのは、何を隠そうウィルである。

 彼女の作るものは値段と味のクオリティのバランスがとれておらず――もちろん良い意味で――、外部の人間もわざわざ食べに来るほどである。

 

 そんなウィルの作った昼食は今日も美味かった。

 今日の日替わりはカルボナーラであったが、卵とチーズのコクとカリカリに焼いたベーコンの旨味が絶妙なバランスで保たれ、そこに粗挽き胡椒がアクセントとして加えられており、非常に美味だ。

 茹でたアスパラガスが甘く、ソースと絡めるとこれまた絶妙な味を醸し出し、またもちもちした麺が味と食感の両方で楽しませてくれる。

 恐らく王都で有名な店とかで出されるものと遜色ないのではないだろうか。むしろ、上流階級の人たちがが口にするような気取ったものでない分、身内の贔屓目を差し引いても僕的にはこっちのほうが良いと思う。

 使っているものは粗悪な素材ではないにしろ、特に高級素材に拘っているというわけではないごく一般的なものだ。

 作っている本人は小食であまり食べはしないのだが……どうも食べることよりも作ること自体が楽しいらしい。

 

「あー……うー……今日も負けたぁ」


 僕の対面、エイジングの隣で不貞腐れながら同じ昼食をとっている、ボロボロになったエーリカ。

 痕に残るような切り傷は見当たらないが、所々に内出血や赤く腫れているところがある。何だかんだでアミタもそれなりに気遣っているらしい。そもそも、アミタが本気になれば、エーリカ相手と言えども、早々に決着がついてしまうのだろうが。

 彼女はアミタとやらかした後、大体いつもここで何かを食べて帰る。

 勝って溜飲が下がったのか、大人しく食事する分にはアミタも何も言わない。

 ちなみにアミタは僕の後ろで、静かに給仕をしている。


「おぬしも懲りん奴だの」

「騎士団っていつもこんな感じなんですか……?」

「だぁーってぇ……何なのよあのまな板強すぎじゃない……? そもそもエーリカちゃんの魔法を斬るとか意味わかんないんだけど」


 僕の後ろから飛んできた包丁がエーリカの眼前に突き刺さるが、気にもせずにパスタをフォークで弄んでいる。


「ねぇねぇ、えっちゃん。どうやったら勝てると思う?」

「200年ぐらい修行すれば、おぬしでも勝てるようになるんではないか」

「いくらこのエーリカちゃんでも、そこまでは出来ないかなー……あー美味し」


 彼女の若さで大隊の副長に就いている時点で相当な実力者ではあるのだが、この世界、上には上がいるものである。


「しっかし、今回はまた帰ってくるのが早かったのう。いつもであればひと月半かふた月はかかっとったじゃろうに」

「そっそー。なーんかねぇ、急に帰還命令が出たんだってー。詳しいことはまだ聞いてないけどぉ」


 エイジングとエーリカが何気ない雑談に花を咲かしている横で、僕は優雅に読書タイムだ。

 二人がちょうど昼食を食べ終えたそのタイミングで、ウィルが四人分のデザートをお盆に乗せて運んできた。一つは自分用だろう。


「……今日はちょっと暑いから、アイスクリームにしてみた」

「おぉ! 良い良い。やはり暑い時は氷菓子よの。我バーニラ!」

「バニラ味しかないだろ」

「やっほーウィルちゃん。おひさー! 元気だったぁ?」


 エーリカがにこやかにウィルへと手を振っている横で、エイジングは破顔しながら奪い取るようにデザートの器を受け取ると、早速口にし始める。

 一口含むごとに、この世の天国かという表情をするのだから安いものである。

 基本的にこのエイジングは着ることと食べることに執着しており、給金の大半もそれに注ぎ込んでいる。

 それに関しては思うところはないが、全力で衣と食を謳歌しているのは些か羨ましくはあった。人生楽しそうだなお前。


 ウィルはエーリカへと器を手渡した後、自分の分を持って僕の横へ腰を下ろし、身体をくっつけてくる。

 基本的に甘えたがりなこの少女は、状況の許される範囲で僕に引っ付きたがる癖がある。

 そんなウィルの頭を労いの意味も込めて撫でてやると、素直に頭を預けてきた。形の良い頭は撫でがいもあった。


「……ご主人。ごはん美味しかった?」

「おう。今日も美味かったぞ」

「……そっか。えへへ」


 抑揚のない声で返事はするが、その声色とは裏腹に、気持ちよさそうに目を細めながら口角をわずかに上げる。頬もどこかしら朱い。

 嫌がる素振りも見せず、頭を預けながらも、ウィルはそのままチビチビとアイスを食べ始めた。

 この少女の調理技術は誰に教えられた、というわけでもない。気が付けば覚えていた。

 完全に独学ではあるのだが、ただただ料理が上手いし美味い。一種の才能なのだろう。

 これに関しては他の部署の人間も一目置いている。


「あー……ほんと美味し。今まで結構いろんな街で食べてきたけど、ここのは頭一つ抜けてるわー」

「……エーリカ姉、帰ってくるの早い?」

「まー色々あってねぇ」


 さて、僕はそろそろ出頭する準備をするか。


「あれ? ダーリンどっか行くのぉ?」

「出頭命令が出ててな」

「ふーん……エーリカちゃんたちのと何か関係あるのかな」

「いや、流石に関係はないだろ」

「あ、ダーリン、ちょっと待ってぇ。一緒にいこっ!」


 エーリカが所属する騎士団は総務省に属してはいるが、命令系統に関しては頭に騎士団長を据えており、総務大臣ですらその権限は及ばず、独立している。

 内務省所属である、僕たちの治安維持管理局とはその内容こそ似通っているものの、ほぼ係わりが無い。

 それ故に、何故このエーリカが僕に固執するのかもわからないが。


「最近特に治安が悪いという話も聞いとらんのじゃがの」

「そうなんだよねぇ。まぁ、エーリカちゃん的には早くダーリンに会えて嬉しいから問題はないんだけどぉー」


 お偉方の気まぐれもあるだろうし、戦略的な何かがあっても僕たちには関係のないことだ。

 僕はアンを伴ってエーリカと共に局長の下へ向かうことにした。

お読みいただき有難う御座います!

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また、ご感想もお待ちしておりますので、ご遠慮なくどうぞ。


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