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公務員生活も楽じゃない!? ~執筆の魔王は今日も色々振り回されてます~  作者: 宇佐美
一章 僕たち治安維持管理局特務課!
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0頁 ①

 魔王──神に仇なす者、人類の敵対者、常識の破壊者、命の簒奪者……呼び名は数あれど、一貫しているのは悪である、ということ。

 勇者──神の代行者に選ばれし者、人類の救済者、歴史を作る者、導く者…てん呼び名は数あれど、一貫しているのは正義である、ということ。


 本来であれば、対峙した時点で僕の命はない。

 正義が悪を討つ。

 勇者は魔王を滅する者として存在し、決してそれが覆ることはない。

 だというのに、目の前の青年はあろうことか僕にこう言い放った。


「ボクは君を助けに来たんだ」

「……は?」


 何を言っているのだろうか。

 目の前に佇んでいるのは、鮮やかな蒼の髪に金の瞳を持つ、今代最強とまで呼ばれた勇者だ。

 中性的な顔立ちで、淡い笑みを浮かべている。

 腰に刺さる剣は紛れもなく、唯一無二の神遺物(アーティファクト)。斬りつけられただけで──いや、向けられただけで僕は死に至る。

 にもかかわらず、柄に手をかけることすらしていない。


「うーん……まぁ、いきなりこう言われても信じられないか。今の君にはある意味関係ないからね」

「いや、意味がわからないんだが」

「んー、あまり深く考える必要はないよ。僕は君を殺したくないし、助ける術もあるってこと」

「……最強の勇者様が魔王を殺さないでどうするんだ。それ神から授かった使命なんだろ?」

「正しくは聖女様、なんだけどね。授けてきたの」

「聖女は神の代行者だろ。どっちにしろ変わらんだろうが」


 勇者は神の代行者たる聖女によって任命される。

 任命された者はその瞬間から勇者となり、魔王討伐や人類救済の使命を帯びる。

 神々が地上を去って数千年。その神に代わってその言葉を伝えるのが聖女というわけだ。

 故に聖女の言葉は神の言葉に等しく、それに逆らうことは許されない。


「ボク、彼女のこと嫌いだし」

「問題発言だな!?」

「まぁ、それはいいんだ。大事なのはボクは君を殺したくないし、他の勇者に殺させたくもないってことで。そして、君を守る術をボクが持っているってことだ」

「……信じられないな」


 ひょんなことから、僕が魔王になって数十年経つが、その間、様々な勇者や機関、組織に命を狙われてきた。

 中には味方のふりをして騙し討ちをしてくるような奴もいた。

 こいつがそうじゃないとは限らない。

 だが──どうにも嘘を言っているようには思えない。確信があるわけじゃないが。


「聖女に逆らってまで僕を助ける理由があるのか」

「とある人からの借りを返す、とだけ言っておこうかな。君にも関係ある人だ」

「僕の知り合い……いや、関係者か。ってもエイジングも、アミタも、ウィルもお前に貸しをを作れるはずもないしな……」

「まっ、そこは気にしなくていいよ」


 魔王となる前の知り合い、家族も含めて皆死んでしまったはずだ。

 もしかすると子孫がいないこともない、かもしれないが、僕が──クラフトが魔王となっていることは誰も知るはずがない。


「別に君を騙そうなんて思っちゃいないよ。殺そうと思えば、今すぐにでも殺せるんだし」

「でしょうね」


 数いる勇者の中でも、最強と呼び声の高い目の前の青年。誰が呼び始めたか、(しろがね)の勇者とは彼のことである。


「だから、今は僕を信じて欲しい。そう簡単にはいかないだろうけど、任せてみてくれないかな」

「あいつらは……」

「彼女たちは別の場所に隠れてもらってるよ。手を出していないし、誰にも出させはしない」

「なら、いい」


 僕に付いて来てくれたアミタにウィル。

 最初は仕方なしだったものの、力のない僕を支えてくれたエイジング。

 勇者の言葉を信じるなら彼女らは無事だということか。

 だが、既に勇者にロックオンされてしまった以上、僕たちの生殺与奪の権は彼にある。

 もう成り行きに身を任せるしかなかった。


「で、僕は何をすればいい」

「うん。取り敢えず200年ぐらい行方不明になってくれればいいかな」

「……は?」

「大丈夫、多分痛くないから」


 そう言って、腰の剣を抜き放つ。

 陽光に照らされたそれは、銀色に輝く直剣。こいつが(しろがね)の勇者と呼ばれる所以だろう。

 だがあろうことか、勇者はその剣を僕へと向け始めた。


「おい、ちょっと待て」

「大丈夫、死にはしないよ。あ、彼女らのことは任せてくれればいいから」

「待て待て待て待て!」

「時間もないんだ、じゃあ200年後にまた会おう!」


 そう言って、勇者は僕に剣を振り下ろした。


お読みいただき有難う御座います!

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