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魔法学園のジャンヌ  作者: 奏 音葉
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不公平な世界へようこそ

 力があればと何度も思った。力があれば、彼を私が救えたのにと何度も考えた。

 でも、私には限界がある。彼にだって。

 だから、あの日、彼の背中を見て安心したのは間違っていたのだ。

 彼の言葉を受け入れた自分が悪い、そう思えば思うほど自分の未熟さが目に見えた。


「大丈夫、俺が守るから」


 怯えた私を助けにきたヒーローは、この世界のジャンヌと呼ばれる存在らしい。



 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・



 近未来、人間の脳が発展し、魔法が使えるようになったこの時代。

 この世界ではヒエラルキーが全てになっていた。

 そんな世界でも有数の名門魔導学園に通うのが佐藤創太(さとうそうた)だ。


「もうこんな時間かよ」


 学園に辿り着くともうホームルームが始まる時間だった。まだチャイムが鳴っていないのがいいことに、創太は早歩きでパックのイチゴミルクを飲みながら教室に向かっていた。


 私立クロニクル魔導学園、魔導学園のなかでも名門と言われており、そのなかでも普通クラスと特進クラスが存在する。

 当然、創太は――普通クラスだ。



「創太、おせーぞ」

 教室に入ると、一人の男子生徒が創太にそう言った。

 彼は、創太の唯一の友人、高坂晴彦(たかさかはるひこ)だ。晴彦は、爽やかイケメンで創太とは似ても似つかない。

「今日、なんかあったか?」

 目にかかった前髪を気にしながら尋ねる創太に晴彦は、呆れた顔をして言い放った。


「今日は、新生徒会長発表の日だろ」


 普通クラスには全く関係のない行事と言ってしまえばそこで終わりだが、この学園にとっては一大行事の一つだ。

 毎年、魔導の成績が最もいい生徒が学園長から生徒会長に任命される。


「なんだよ、特進クラス用のイベントだろそれ、興味ねぇよ」

「そう言うなって、今年の候補のなかには、元普通クラスがいるんだぜ」


 元普通クラス、それは普通クラスのなかでも特進クラスレベルに成績がよかったものが普通クラスから特進クラスに昇格するというもので、創太には全く関係のないものだった。

 創太は、この学園で最も成績が悪い。



「始まるぞ」

 電子黒板に映像が投影された。

 そこには学園長、そして――

「アルカ先生やっぱ綺麗な人だよな、それにおっぱいが大きい」

 学園一の魔導教師であるアルカがいた。

 創太にとってアルカは一番距離の近い存在だ。


「なんで、アルカ先生はお前みたいな残念な男をこの学園に入れたんだ?」

 嘲笑気味に創太は応える。

「俺が知りたいよ」


 創太は正真正銘のコネ入学だ。

 アルカが創太の実力を見込んで学園に入れた。それは創太が学園に入った瞬間に広まり、噂となった。だが、創太は普通クラスに入り、学園一の落ちこぼれとして後ろ指をさされるようになった。



 学園長がついに口を開いた。

「今年の生徒会長は――」

 普通クラスはその名前が出た瞬間一斉に盛り上がりをみせた。

 それは、元普通クラスの明日原葉月(あすはらはづき)だったからだ。


 創太は盛り上がりについていけず、教室を無言で出て行った。


 創太が向かった先は、アルカ専用の部屋だ。

 アルカは元々、魔導士団の魔導士だったのだが、学校の教師にならないかと誘われたことで今は学園の魔導教師として働いている。

 国で働いていた人物なので特別に部屋が用意されているというわけだ。


 三回ノックをして入っていく。

 発表を行った場所にいたので、当然部屋には誰もいない。



「なんで、こんなところに入れたかな」

 アルカへの愚痴を溢しながら部屋の本棚を漁る。


 そのなかでひと際目立つ一冊があった。

「なんだこれ」

 それを手にとり創太は開いた。

 題名もないその本を。


「うぅぅ」

 急に光だしたその本は創太の身体を包み込んだ。

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