第九話
「行ってくるからねー」
「はーい、行ってらっしゃい」
いつも通りの朝、母親と弟君が出かけて行ったのを見届けてから俺はさっそく準備をした。
「よし、行くか」
学校には行かず、ネットに書いてあったその謎の女に会うためにネットに上がっていたよく出没すると噂の住宅街や高架下のあたりに行くことにした。
「確かここら辺だよな」
同じ都内とはいえ来たことがないこの場所。
スマホの地図アプリを使ってここまで来た。
「まーさすがに予測で来ただけだしすぐ会えるってことはないだろうな…」
ここは見渡す限り閑静な住宅街。
人気もなく、もしその謎の女が来たら一発でわかるだろう。
コツコツコツ…
どこからともなくヒールの音が…
後ろを振り返るとそこにはこんな朝からクラブにでも行くんすかと言いたくなるような派手な女の人が…
「あら、おはよう」
目が合った瞬間この人だと確信した。
しかもあっちから話しかけてきた。
「もしかして…」
「んふふ。あなた悩ましい顔してるね」
悩ましい顔?人の心を見透かすような特殊能力でもあるのか…
そして特徴は完全にとらえてる。
ミニスカで高いヒールでスタイル抜群で何より美人。
「変わりたいんでしょ?あの人に」
「え、何で知ってるの…」
「あなたのような人間の前にしか現れない。本当に悩んでるような人間の前にしか。んふふ」
どうやら、本当に特殊能力があるらしい。
謎の女は不敵な笑みを浮かべて今度は何かを出した。
「はい、あなたのお望みのモノよ。」
「え?」
その時出てきたのは青いジュース。
何かを渡されるのはネットで把握済みだったが、なぜ青なのか…
「ピンク…じゃない」
「そ、ピンクじゃないのよあなたの場合はね」
「え、人によって違うんですか?」
「あなたすでに入れ替わってるでしょ。しかも元に戻りたいっていうことよね」
「そんなことまでわかるんですか…」
「当り前じゃない!まあただ元に戻りたいって人にはこのジュースはあげられないわ。あなたのように騙されて飲まされたような人間ならっていう条件よ」
どうやらしっかり条件があったようだ。
よかった…って当たり前だ!こんな奇妙なこともうこれでおしまいだっての!
というかまさかこんな早くにしかも一発目からこの謎の女と出会えたことは不幸中の幸いと言えるだろうか…
とにもかくにもいち早くこれを沼田さんと一緒に飲まなければ…
でも今頃学校行っているだろうし、それだけどうにかすれば…
「飲み方はわかってるわよね?」
「え…そりゃ飲まされた身なんで…」
「それじゃわかってないわね。この青いジュースを入れ替わった相手と一緒に飲むまではあってるのよ。ただもう一つ新たな条件がいる」
「え…そうなの」
「それは…」