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僕の望むままに  作者: ハチ子
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第六話

「はぁ、やっと着いた。私の家からならすぐ着くけどやっぱりたかし君の家からはめちゃくちゃ遠いな・・・」


この真夏の炎天下の中、自転車で全力疾走して汗べっちょりで図書館まで来た。

でもやっぱりここはいつもと変わらず心地いいし、何より冷房が効いてて涼しい。


ここの図書館は利用者が少ない。

多くても一日5人くらい。

そして図書館内はめちゃくちゃ広いので、寝てても少しくらい話しててもまず他の利用者に気づかれない。

もともと弟のゆうのために絵本を定期的に借りに来ていたのだけどそうしているうちに図書館の独特の雰囲気が好きになり私にとって一番の落ち着く場所になった。

ここでうたた寝したり、ゆうに絵本の読み聞かせをしたり、アニメの雑誌を読んだり・・・そんなのほほんとした気分が味わえる最高の場所。

いわば私にとっての隠れ家的なところだ。


「よーし、今日はここにしよ!」


図書館に入って一番左の奥の方に背もたれのゆったりした寝るのにちょうどいい椅子が置いてある。

そして左側には窓があり、外の景色を眺めながらゆったり寝ることができる。

私は少しだけそこで寝ることにした。


「あ、そういえば・・・」


目をつぶったとたんにふと思い出した。


「ゆう・・・大丈夫かな」


いまさらながらゆうの事を思い出した。

きっとたかし君はお母さんに文句言われたんじゃないだろうか・・・

しかもゆうの事となるときっとどう扱えばいいのかわからないってこともあるだろうし・・・

最初からゆうのことしっかり伝えておくべきだった。

今あの二人は何してるんだろうか。


「はぁ、心配してきたら今度は寝れなくなっちゃった・・・ていうか私だけ何の苦労もせず呑気にこんなところでうたた寝なんてだめだよね。しかもこんなありえない状況で・・・」


そう考えるともっと寝れなくなり、仕方ないので帰ることにした。


「久しぶりに自分だけのゆったりした時間が過ごせると思ったのに・・・」


ゆうへの心配よりも自分の時間が取れないことの方が残念だった。

こんな姉、周りから見たらおかしいと思われるだろう。

でも私は今までお母さんに怒られたり、弟の面倒を見させられたり・・・そして私のことを褒めてくれたことなんて一度もなかった。

私は母親からの愛情というものを感じたことがなかった。

少しでも褒めてほしくて私は今の進学校に死に物狂いで勉強して合格した。

でも肝心のお母さんの反応は「ふーん、あっそ」ただそれだけだった。

やっぱり努力は水の泡となった。

でも今はもう母親に愛情を求めること自体しない。

母親には何も期待せず、ただ時が過ぎるのを待ち、いつか絶対この家からこの町からそして母親から離れて、どこか遠い所へ一人暮らしをすると決めている。


「はぁ、早く自由になりたい。」


(この鳥かごから誰か、誰でもいいから出してほしい・・・

早く鳥のように自由に飛びたい・・・)


「はぁ・・・」


あきらめのため息をつきつつ、椅子から立ち上がって歩き出そうとしたとき、こちらの方に近づいてくる足音が聞こえた。

その人物は徐々に近づいてきて複数人いるのがわかった。


「珍しい・・・あんまりここ人来ないのに・・・ってあれ?もしかしてヒロ君たち?!」


私の見た目のたかし君とヒロ君、そしてヒロ君に抱っこされてる男の子がいるけどもしかしてゆう?・・・

何で三人がここにいるのかはわからないけどとりあえずまた2人に会えたことが運命的に感じる!

そして何よりゆうが何不自由なく笑顔で二人に抱っこされてる感じがあってそこがまた私を安心させた。


「おーい!ヒロ君たかし君私だよ!ゆうも元気?」


3人ともさすがに気づいたらしく、こんなに近くにいたことに驚いた様子だった。


「ど、どうしたの??ていうかすごい良いタイミングだよ!」


たかしが興奮気味で話し出した。


「今俺たちゆう君の事をどうすればいいのかわからなくて困ってたんだよ!」


「うーうーおねぇたんどしあの?」


ゆうがお姉ちゃんの話し方がいつもと明らかに違って少し戸惑ってるようだ。


「だ、大丈夫だよ!お姉ちゃんはいつも通りのお姉ちゃんなんだよ~」


たかしはゆうをなだめるような感じで何とかバレないように声やら雰囲気を沼田芽衣子に寄せた。


「キャっキャ!」


「ふぅ良かった…」


ゆうはまたいつものように笑いだして僕たちは一安心した。


「えーと、所で三人はどうして図書館に?」


「実は…」


沼田芽衣子には僕からある程度今までの経緯を話した。


「なるほど…私の母親が失礼しました…でも図書館はゆうもよく来てて好きなところだから図書館来たことは大正解だよ!」


「そっか、それは良かった。しかもここに来て沼田さんいるんだもん。驚いたけど会えて良かった。ゆう君の扱いは沼田さんが一番わかってるだろうし。」


「私もゆうのこと心配だったんだ!たかし君には悪いんだけど、ゆうへの扱い方色々教えるね!逆にたかし君はしてほしいことある?」


「してほしいこと?うーん僕は特に無いかな…じゃあとりあえずゆう君の事を色々教えてください!」


「了解です!」


そのあと俺らは沼田さんからゆう君のことについて色々教えてもらい、ある程度ゆう君の対応方法を学んだ。


「よーしこれくらい教えたらもう大丈夫だと思う!」


「うん!ありがとう」


「いやいやこっちがありがとうだよ!たかし君ありがとう」


「エヘヘ」


たかしは少し照れ笑いしていた。


「そういえば…スマホってどうしてる?」


たかしは鞄から沼田さんのスマホを取り出した。沼田さんの家から持ってきていたようだ。


「私のだ!実は私もスマホ持ってきてるんだ。たかし君の」


沼田も鞄からスマホを取り出してたかしに見せた。


「沼田さんも俺もiPhoneだね」


「うんそうだね。」


「俺からの提案何だけどカバー変えて自分のiPhoneを管理出来るようにしたいんだ。」


人に自分のスマホの中身を見られるのはやはり恥ずかしい。

だから俺は沼田さんに会ったら必ずiPhoneを交換して自分のiPhoneを取り戻すということを考えていた。

幸い沼田さんのもiPhoneだったことで周りにスマホのことでなにか言われることは無いだろう。

カバーさえ変えれば完璧だ。


「そうだね!私もスマホのこと考えてたんだ!たかし君から言ってくれて良かった。」


「あと何かあったらすぐ沼田さんに連絡出来るようにしたいんだけど、ライン交換してくれない?」


「もちろんお願いします!」


二人がライン交換し終わると今度はたかしが僕の方を見てきた。


「な、なに」


「ヒロも何かあったら頼りになるからさグループ入ってくれない?」


「あ、あぁわかった。」


たかしが言うなら仕方ない。

僕は沼田芽衣子とライン交換する日が来るなんて思ってもみなかったが、どうやらそうなってしまったようだ。

これは二人の問題だが、僕もどうやら巻き込まれていくらしい。

最も僕が起こした事だから仕方ないけど…。


「明日はもう学校だね…」


「うん…明日もこのままなんだろうか…」


二人はライン交換し終わってもこれからのことが心配でネガティブになっていた。

さすがにこのまま過ごすのは可愛そうだ。

僕は思わず同情してしまった。


「大丈夫だよ。二人のことは僕がよーくわかってるし、明日戻ってなくてもとりあえずいつも通り過ごしていこう」


「うん、そうだな…」


「うん…」


そんなこんなでその日の1日が終わり、四人はそれぞれ帰ることにした。


「じぁあな!明日、戻ってなくても普通に登校しよう!」


「うん!バイバイ!」


僕たち最後にはポジティブに振る舞い、明日を信じて帰宅した。




「ヒロー朝だよー起きなさい」

母親がカーテンを開けて僕を起こしてきた。


「ふあ~もう朝か」


体を起こして、下に向かった。

まず朝起きると洗面台に行き、まだ寝惚けてる顔に水を浴びせてシャキッとさせる。


「ふぅー冷た」


朝は水が冷たくて気持ちいい。

次はそのままキッチンに向かい、ご飯を食べ始める。


「ごちそうさま」


ご飯を食べ終わると今度は学校に行く支度をし、家を出る5分前に歯を磨いて、時間になると家から出て学校に向かった。


登校中はあの二人が戻ったのかどうか気になりつい、いつもより早歩きになっていた。


教室に着くと一番乗りだったようで、僕一人だけだった。

あの二人はまだ来てない。


「ふぅ、さすがにまだ来てないよな。」


そしていつも通り本を読んで過ごすことにした。

でも、僕の頭の中は本どころじゃなくなっていた。

あの二人に同情はするものの、たかしがあのままだったらそのまま僕の彼女にできるかもしれない。

しかも僕が思うに沼田芽衣子は、たかしである方が笑顔が増えた気がする。

昨日弟のゆうの事を心配してたのに図書館にいたこともおかしい。

思うに何か沼田芽衣子にはたかし以上に落ち込んでないというかむしろ嬉しそうにしてる気がするのだ。

現時点で戻る方法もないし、もし沼田芽衣子が元の姿に戻りたくないとしたら…たかしも一生戻ることが出来ないかもしれない…フフフフ

僕はそれでも構わない。

だってその方がたかしを一人占めしやすいから。

そうやってたかしたちが来るまで僕は秘密の考え事をしていた。

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