「初陣」
ボール回し・・・・本塁、一塁、二塁、三塁の各4ヶ所ベース上に集結し、塁間でボールを回す練習。
今まで連載してきて、やっとまともな試合を書く気がします。
まあ、まともな試合になるのかは置いといて、、、
あ、僕が女子と試合ができるならウキウキですね。
「なあ、今から俺らあんなのと試合すんのかよ」
帽子を浅く被った三嶋が指をさす。その先には女子野球部が華麗にボール回しを行なっていた。
全く乱れないのだから流石は強豪校だ。
ブルペンで投球練習をしている一人の少女と目が合う。小麦色に焼けた肌に、短く切られた髪の毛。
西野真帆だ。しかし、真帆は目が合うとすぐさまそっぽを向くのだった。その行動に思わず呆気にとられてしまう。
ーーなんだよその態度。
凛太朗は首を傾げる。
それからしばらく突っ伏していると、「感心してる場合かよ」と林に背後から頭を叩かれた。
こいつの扱い方は簡単だ。ーー無視だ。
「おーい、いいかー。スタメン発表するぞー」
先ほどまで女子野球部の監督に頭を下げまくっていた山県が、手を挙げて集合をかける。
一見不審者な男が、一丁前に監督ぶってオーダーを発表していく。
そして最後まで凛太朗の名前が呼ばれる事はなかった。
「え、綾瀬じゃないんですか?」
村上の言う「綾瀬じゃない」は、おそらく投げないのかという意味だろう。
「ああ。先発は平川でいく。文句があるか?」
少しだけ空気がピリついたのを感じる。すると村上が申し訳なさそうな目で、見てくるのに気づいた。
「これまでの練習で俺が判断した。綾瀬は状況次第、だな」
山県は強めに「状況次第」と口にした。
ーーいったい、俺が投げなければならない状況とは?
凛太朗はジト目で円の中心に立つ山県を見る。
反対の一塁側ベンチからは、大きな声で返事をしているのが聞こえてくる。
何度でも言おう、流石は強豪校だ。
よく見ると部員全員が肌を焦がしていて、体つきも一般的な女子と比べるとかなりたくましい選手が多いい。その中でも真帆は華奢な方でかなり目立つ。
「ーーよし、いくよ」
村上の掛け声で部員達は、一列に並ぶ女子野球部と向かい合う。改めて近くで見ると、男子が紛れているのではないかと疑ってしまう。
「それでは、桜商女子野球部対男子野球部の練習試合を行います! 礼!」
「お願いします!」と息ぴったりで元気良く挨拶する女子とは反対に、男子野球部の挨拶は全く息が合わず酷いものだった。
ベンチを見ると山県が頭を抱えていた。無理もない。
一番、センター、勝部
二番、セカンド、三嶋
三番、ピッチャー、平川
四番、サード、林
五番、ショート、徳野
六番、ファースト、丸子
七番、レフト、小原
八番、ライト、佐々木
九番、キャッチャー、村上
かくして桜商男子野球部の戦いが始まる。




