「似てるんだよ」
もっと小説を上手く書ける力が欲しい。
でも願うだけじゃ手に入らないから皆んな努力するんですよね。
さあ、頑張りましょうかね。
「でもどうして俺なんだ?」
「それはお前が俺に似てるからだ」
小原は顔をしかめる。
誰もいなくなった駐輪場は蝉の鳴き声だけが響き渡る。まるで凛太朗の鼓動に反応するかのように。
「なんだよそれ。わけわかんねぇ」
再び自転車に跨り駐輪場を後にしようとするが、凛太朗は自転車の荷台部分を掴み逃がさない。
それはとっさの行動だった。
小原は鋭い目で睨みつけ「はぁ」と溜息をつき、
「サッカーはもう、今日で辞めたんだよ」
無理やり引き止められたせいか、小原の口調は荒くなる。
「ーーえ?」
「だから辞めたって言ってんだろ。二回も言わせんな」
「じゃあ、野球部にーー」
まるでどっかの坊主頭みたいな事を言ってしまう。
「だからなんでそうなんだよ」
苛立ちからか、小原は大きな声を出す。
野球は楽しいからーーなんて、言えるはずもなく下を向く。
「⋯⋯じゃ帰るわ」
「なんで辞めたんだよ」
「ーーッチ」と舌打ちをし、
「俺とあいつらじゃレベルが違いすぎるんだよ。ろくにパスも出せない連中とやってもつまんねぇだろ。しかも、基礎練もしないで試合形式の練習ばっかで上手くなるわけねぇだろ。それで上達すると思ってんだからムカつくぜ」
眉間にしわを寄せ、吐き捨てるように小原は言った。
「どうせ、あいつらも俺のこと邪魔だと思ってんだよ。⋯⋯イライラするだけなんだよ。あんなとこいたら。そもそもサッカーなんてーー」
「逃げてるだけだろ」
「あ?」
ついに堪忍袋の尾が切れたのか、小原は凛太朗の胸ぐらを掴む。
ガシャんと音を立てて小原の自転車は地面に倒れる。それと同時に、蝉の鳴き声は激しさを増す。
「逃げてるだけって言ってんだよ。そうやって全部一人で解決していい気になってんじゃねぇよ。嫌いになったふりなんてしたってなんの意味もないんだよ」
小原がサッカーを嫌いになんてなっていないのは、丁寧にスパイクだけカゴの中に入れているのを見れば、すぐにわかる。
「お前に俺のなにがわかんだよ」
小原は顔を近づける。胸ぐらを握る力は強さを増すがそれを振り払い、
「言っただろ。お前は俺に似てるって」
今度は凛太朗が小原の胸ぐらを掴む。
いきなり初対面のやつの胸ぐらを掴むなんて自分も、小原もどうかしてるなと思いつつも、ここまできたら引き下がれない。
「勝手に自分で邪魔って思いこんで、悲劇の主人公気取ってんじゃねぇよ。一人でいたら全部丸く収まるとでも思ってんのか? なわけねぇだろ、お前から歩み寄れよ、お前を必要と思ってくれる人間はまだたくさんいんだよ」
「じゃあ、俺にどうしろっていうんだよ⋯⋯」
「野球部に入れ。少なくともサッカー部よりもお前を必要としている人間はいる」
目を輝かせる村上や、野球部の面々が思い浮かぶ。
「無理があるだろ。野球なんてやったことないしよ」
小原は胸ぐらを掴んでいる手を払い落とす。
「関係ねーよ。お前ならできるさ」
「なんでそんなことーー」
「言ったろ? お前は俺に似てるんだよ」
「ふっ」と小原が笑みをこぼし、
「お前わけわかんねぇな」
「そりゃどうも」
頭を軽く下げて自転車に跨る。
漕ぎ出そうとしたところで一つ伝え忘れたことがあったことを思い出す。
「それと、野球部に入るんだったら終業式が終わった後、生物教室にこいよ。そこにお前の求める答えがあると思うぜ」
「答え、か・・・・甲子園ってやつに行けたりすんのか?」
高校球児達の憧れの地であるーー甲子園。
野球に無知な小原でも、その場所だけは知っている。
「さあな? 誰かさんが連れてってくれんじゃね?」
凛太朗は振り返らずに自転車を勢いよく漕いで駐輪場を後にする。
取り残された小原は一人、駐輪場で佇む。
初めてだったのだ。自分と向き合おうとしてくれた人間は。
「後悔させんなよ」
全く関わった事のない人間にあそこまで言われて、そんな簡単にじゃあ、野球部に入りますなんて言えるわけない。それでもあいつの言った事は全て正しかった。
自分が求めることーーそれは野球にあるのかもしれない。
わからないからやるしかない。
まだ夏は始まったばかりだーー。
最後まで拝読していただきありがとうございます!
少し駆け足になってしまいました。これは本当に自分の力不足です。不甲斐なさを感じまくってます、、、
次話は切り替えて、西野真帆について投稿しようと思います!お楽しみに!




