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俺の弟が気持ち悪すぎてしぬ【休止中】  作者: ポール
第1話 俺の弟が気持ち悪すぎてしぬ
8/18

7.そしておっぱいに至る

 異能科、普通教室棟。

 通称「異能棟」だ。

 そこは秋津洲に引かれた、軍事境界線の向こう側――。


 シックなダークパープルのブレザー。

 色とりどりのスラックス。スカート。

 普通科と比較すれば、まさに雲泥の差だ。

 ところどころで異能持ちリア充カップルがキラキラいちゃいちゃ、死なないかなこいつら??


 異能教育を受けた生徒は卒業後、ほぼ全員が難関国公立や私立へと進んでいく。

 この時代、「異能力」(未だ漠然としてあいまいな意味の単語だが、異能の内容や性質・性能・ポテンシャル・異能者としての完成度など)も、れっきとした評価のポイントとなっている。

 俺みたいな一般人には耳の痛い話だが、そのような裏話もあって秋津洲学園の進学実績は非常に良い。

 もっといえば、国家公務員や超一流企業の採用についても同様のことがいえる。

 明るみになっていないだけで、昔から異能者は優遇されてきた。結婚も必ず異能名家どうしでお見合いがされてきたそうで、なんていうかその、俺のような異能無し非モテに救いは無いんですか?


   ◆◇◆


 階段を降り、購買に近づいていくたび「ぐええ」「うおおお」「死ねえ」と血の匂いが濃くなってきた。

 絶叫や閃光、炸裂音。

 校舎はドスン、バリバリと激しく振動している。

 案の定、購買は地獄絵図と化していた。

 たまごサンド、焼きそばパン、コロッケパン。

 人気商品を取り合う青春の一コマは、もちろん秋津洲にもある。


「ぎゃあああああああああああああああああああああああああああああ」


 いきなり女子生徒の身体が飛んできて、ズガァンと遠くの壁に叩きつけられた。

 華やかなはずのミニスカブレザーJKは、コンクリートの壁に大の字になってめりこんだまま――カクリと前髪を垂らして力尽きる。やだ……こいつら怖い。

 欲しいものは欲しいと言え――秋津洲・鉄の掟。

 生命に関わる危険性があるので、異能をむやみに使うのはよろしくはない。

 だが秋津洲学園は生徒の自由な異能行使を、事実上「黙認」している節があった。

 こういった購買部での争奪戦も「競い合い」と小奇麗な表現を使い、暗黙の了解としている。


「あと少しだってのに、バカかこいつら!」


 自分のことは激しく棚に上げ、最後の力を振り絞り人の波をかき分ける。

 誰かが魔法を使えば爆発が起きる。

 不仲の部活動同士が勝手に抗争をおっぱじめる。

 異能や武器や人間そのものが頭上を飛び交うココは、まさにいま日本で最もアツい場所といえる。


 そしてついに、俺はレジカウンターのおばちゃんにたどり着いたのだ!


「おばちゃん! おっぱいちょうだい!」

「あらやだ……亭主にほっとかれて疼いてたところなの……」

「あんたのじゃねえよ!? ひより先輩だよ! ひよりんぷるぷるプリンだってば!」


 おばちゃんは欲求不満そうにジッパーを上げ、着崩したユニフォームを直す。

 そして、こう言った。


「ごめんねえ。生徒会長のプリン、売切れちゃったの」

「は?」


 思わず真顔になった俺を、おばちゃんはこう茶化すのだ。


「お昼休み始まる前に、みんな売れちゃったのよ? あちらから来てくれたのにほんとごめんなさいね。おばちゃんのおっぱいでよければホラ」


   ◆◇◆


 血の涙が収まらない。

 怒りに肩を上下させ、購買を離れた。

 壁に埋まったJKの隣で、おばちゃんが頭をコンクリートに突っ込んだ状態でうずくまっている。前田健介としたことが、ついカッとなってやってしまいました。

 授業をサボって並んでいた異能科の転売屋に、根こそぎ買い占めらてしまった。昼休みが始まった時点で既に完売していたのだから、慎の浅はかな目論見も結局は打ち砕かれる運命にあった。


「ぐすっ……、うう……ちくしょう……っ」


 クズどもが。異能社会の恥部が。


 この件は根深い遺恨と禍根を生んだことだろう。食べ物とおっぱいの恨みは恐ろしいのだ。連中にわからせてやる――そんな闇堕ちする一歩手前の心境でトボトボ異能棟を出たときだ。


 何者かに手首を掴まれ、強く引っ張られた。


「しまっ……!」


 そのまま校舎裏へと連れ込まれてしまう。

 新手の刺客か!? やられた!!


 自らの不注意と油断を呪ったのだが……違った。

【続く】

※「ボーイズラブ」の表記は、一部分ですが、今後そのような描写が入ることが見込まれるため付けております。




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