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俺の弟が気持ち悪すぎてしぬ【休止中】  作者: ポール
第1話 俺の弟が気持ち悪すぎてしぬ
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3.ひより生徒会長

 廊下を歩く人影や、慌てて校舎へ駈け込んでいく生徒たちは、誰もが濃紫のブレザーに身を包んでいる。

 紫といっても接点皆無な予備校数学講師が着るようなどキツい色合いではなく、かなりダークで落ち着いた紫だ。市の花であるキキョウをイメージしたものらしい。


 そんなアウェーの地を、ひとり寂しげに灰色ブレザーは進む。異能科と校舎が区別されていたり、制服が鬼ダサモノトーンだったりするのも、異能持ちに自信と優越感を持たせるためだと聞いたことがある。

 異能学園モノはやはり、異能者が主役。……悲しいけどこれ現実なのよね。

 ツグミも進学すれば、秋津洲の金ワッペンも輝かしいあのブレザーを着ることになるのだろう。「一般人」である実兄からすれば、正直なところ複雑な心境だ。


 肩を落としながら、普通科の校舎に向かっていたときだ。

 とんでもない美女がそこにいた。

 お尻のあたりまで、艶やかに伸びる黒髪。

 茶色のヘアゴムでハーフアップにまとめた、いかにも「ザ・清楚」な出で立ち。

 折り目はパリッと、それでいてカッチリと。それなのに、ずにゅんどっぷんと奔放に飛び出る制服泣かせのわがまま美乳。


 俺の唯一認める異能科の素晴らしい要素として、女子のスカートがチェック柄で、自分好みの色をリボンと一緒に選べることが挙げられる。彼女は「青」を選択しており、程よく短いプリーツスカートを形のいいお尻がキュッと持ち上げていた。


 そんな平成最後のかぐや姫は俺の存在に気づき、微笑んでくれた。


「あっ、健介くんじゃない!」

「ども。お久しぶりです先輩」


 彼女は何かビラ配りをしていたところで、束を抱きながらとことこ寄ってくる。

 目の前にやってくるとまず、俺も先輩もその「歴然とした差」にびっくりさせられた。


「健介くん、すっごく背伸びたね? おっきい……」

「そっすか? ははっ」

「ええ! 昔は私よりもちっちゃかったのに!」

「そりゃまだ小学生でしたからね!」


 この方は、大鳥居おおとりいひより先輩。

 秋津洲学園高等部の生徒会長だ。もっと言うと、市内で知らない者は誰一人としていない、有名な異能一族――「大鳥居家」の長女でもある。


 大鳥居家は、小売業を中心とした「クローバーマート・ホールディングス」を経営する地元の異能名家で、この秋津洲学園の創設にも多大な貢献を果たしているのだと確か全校集会か何かで聞かされた。


 そんなスーパーお嬢様が、なぜ俺ごとき一般生徒と接点があるのかというと……。

 ……まだツグミと寮暮らしをしていた頃、ひより先輩が「何度も」俺たちに会いに来てくれて、荒んだ心を癒してくれたということがあったからだ。

 そのときの恩義や、その時に抱いた特別な気持ちは――今も変わらない。


「先輩は何をしてるんですか?」


 と、俺はビラの束に興味を示す。

 するとひより先輩は「あっ、これね?」と一枚を取り出し、俺に手渡してくれた。見てみる。


「今後、私が監修したデザートが発売されるんです」


 それが今日のお昼休みに、高等部の購買で限定発売されるのだという。

 その名も「ひよりんぷるぷるプリン」。

 異能持ちの糖分補給のために企画されたとかいう、どんぶりサイズの巨大スイーツだ。


 いやそれはそうとして、だ。

 どんぶりを使ってプリンを手作りしたのはわかる。

 だからこんもりと、手のひらサイズの丸い山が形成されるのは理解できる。

 看過できないのは、カラメルの位置だ。

 山のてっぺんに小さく、薄く盛られるように焦げ茶のカラメルが乗せられているのだ。

 これではまるで――まるで――――。


「なんかちょっと……、えへへ♡ 変わったかたちですよね……?」


 ひより先輩は両腕を前に出し、「むぎゅっ♡」と自分の双丘を強調しつつ、前かがみになって俺のことを見上げるのだった。

 耳まで赤くして、とっても恥ずかしそうに。


 これではまるで、っていうかぶっちゃけ「おっぱいプリン」じゃねえか――!?



【続く】


※「ボーイズラブ」の表記は、一部分ですが、今後そのような描写が入ることが見込まれるため付けております。


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