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俺の弟が気持ち悪すぎてしぬ【休止中】  作者: ポール
第1話 俺の弟が気持ち悪すぎてしぬ
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2.秋津洲

「気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い、ああ気持ち悪い!!」


 顔面蒼白。

 眼球を血走らせながらガコガコとペダルを踏み続ける。

 もはや遅刻の危機など頭に無く、一秒でも一メートルでも早くモンスターブラザーから距離を取ることに命をかけている有様だ。


 俺たちは、岐阜県に存在する異能者教育施設――「秋津洲学園(あきつしまがくえん)」に通っている。

 異能者の出生率は年々増加の一途を辿り、とうとう生まれてくる子供の四割が異能を持って生まれるような時代になっていた。とうぜん異能者教育の整備拡充が求められ、秋津洲学園もそのような流れでできた新しい学校だった。

 そしてなぜ、そんな異能者学園に俺たちが通っているのかというと――。


「お兄ちゃん、待ってぇ~~~~~~」


 たった今、背後から聞こえてきた気持ち悪い声の主が「異能者」だからだ。


「……ってツグミ!? ちくしょうあの野郎もう来やがった!!」

「ひどいよお兄ちゃん! 黙って行っちゃうなんて!」

「誰が男同士で風呂なんか入るか! 死ね!!」


 漕いでも漕いでも、あれだけあったアドバンテージが面白いように縮まっていく。残念ながら俺のような「一般人」とツグミのような「異能者」では、根本的な身体のつくりが違うのだ。迫りくる怪弟の笑顔。もう後ろを振り向けなかった。いま振り向いたら絶対食われる。何かが散華してしまう!


「一緒に行こうよぉ、待ってよー、お兄ちゃ~ん」

「誰かッ、誰か助けてくれえ――――――――――――――ッ!」


 必死な思いのままに、住宅地エリアを飛び出していった。


   ◆◇◆


 秋津洲は、かつては巨大住宅地だった。

 南北二ブロックに分かれていて、中心部に小学校や、最低限の商業施設を抱き込む形で住宅街が形成されていた。名古屋方面へのベッドタウン化を目指して開かれたこの土地も、深刻な少子高齢化と、見るも無残なゴーストタウン化を経て、古き平成の遺物として山奥の中に眠り続けていた。


 現在は、俺たちが暮らす北ブロックを「レフトラング・エリア」。

 学校ある南ブロックを「ライトラング・エリア」と呼称している。


 特に後者は最新鋭の異能施設がひしめき合う、華やかな町に生まれ変わった。初等部こと「すみれ小学校」と、中等部、高等部、そして異能総合病院や異能企業による数々の研究所が、ここ新興秋津洲のライトラング・エリアに集中している。


 極めつけは、先日完成したばかりだという超高層ビル「クローバータワー」。

 従来の商業施設は徹底的に作り直され、役所や警察署・消防署は当然のこと、ショッピングモールや通販の拠点まで整備され、学園生の暮らしを支えている。

 それに満を持して六十階建てのスーパートールを追加することで、人呼んで「秋津洲ハートフルヒルズ」は爆誕した。


 岐阜県のド田舎で六本木ヒルズや表参道ヒルズと張り合おうとするあたりが、これがまたいい意味で田舎者根性丸出しだ。何せ陶磁器の即売所を「織部(おりべ)ヒルズ」と改名するぐらいだからね。怖いもの知らず恥知らずな精神には全く恐れ入る。


「んなことより、ココはどこなんだ……?」


 意識が半分飛ぶぐらい足腰動かしていたら、いつの間にか見慣れない区域に迷い込んでいた。

 初めて見かける校舎らしき建物が、俺を不安にさせる。自転車を押しながら片手で、スマートフォンにインストールされた学園アプリを起動する。


「異能棟か……」


 学園マップと、GPSによる現在位置を照らし合わせることで理解した。

【続く】

※「ボーイズラブ」の表記は、一部分ですが、今後そのような描写が入ることが見込まれるため付けております。

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