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自殺IQ  作者: 星いちる
8/21

また明日

「ヨーロッパ公演はいつなの?」

 寂しそうにクリスは訊いた。

「三週間後よ。十二月二十日から。少し早いクリスマス公演という名目なの。二日前の午後にこちらを発つわ」

「そうなんだ……もう、すぐだね」

「ええ」

 来月になるとぐっと寒くなるだろう。

 クリスは寒さが苦手だった。暗くて寒い冬は、悲しい気分をより悲しくする。

 ジェニーがいない寒さが増してゆく日々は、よりつらさが身にこたえることだろうとクリスは思った。

「公演前にできればシャツ、作っておくわね」

「えっ……だって、練習で大変なのに」

「ううん。気分転換になるから。バイオリンを弾くのも好きだけど、服を作るのも大好きだから。いろいろしたほうが楽しいわ」

 ジェニーはにこっとほほ笑んだ。

「そっか」

 自分のためにしてくれるとはいえ、ジェニーが少しでも楽しいのならうれしいとクリスは思った。

「じゃあ……楽しみにしてるね。ありがとう」

「うん」

 ジェニーはほほ笑んでうなずいた。

「じゃあ、おやすみ。また明日、会えたら会おうね」

「うん。おやすみ。クリス。よい夢を」

「ありがとう。ジェニーもね。またね」

「うん、またね」

 二人は、手をふり合って別れた。

 クリスがその夜見た夢に、白い蛾が現れた。

 一匹ではなく、二匹だった。

 小さな白い二匹の蛾は、仲良く戯れ合いながら、清らかなスミレ色の天を目指して高く高く昇っていった。

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