ホリーおばさんの家
クリスが玄関のベルを鳴らすと、ホリーおばさんがドアを開けてくれた。
「こんばんは、クリス、ジェニー」
ホリーおばさんの笑顔は、いつも丸くあたたかい。
「こんばんは、ホリーおばさん。電話しなくてすみません。今晩大丈夫ですか?」
クリスが訊くと、
「ええ、ええ。今日は誰の予約もないしちょうどいいわ。あるものでしかできないけど、なにか食べたいものはあるかしら?」
とホリーおばさんはにこにこしながら訊き返した。
「なにか食べたいものはある?」
クリスはジェニーに訊いた。
ジェニーはちょこっと小首をかしげた。
「鶏肉がいいな」
「ぼくも」
「わかったわ。鶏肉ならあるから大丈夫よ」
ホリーおばさんは笑って請け負った。
「さあ、二人ともお入りなさい。ハーブティを入れるから料理ができるまでそれを飲んで待っていてね」
ホリーおばさんは、ガラスのポットにドライのローズマリー、レモングラス、ラベンダーを入れて、二人分のカップを出してくれた。
ホリーおばさんのハーブティも、おばさんが料理を作っている匂いも、おばさんの家の室内の心地も、いつも二人をやさしく包み込んでくれた。
「今日はどんな絵を描いていたの?」
ハーブティを飲みながらジェニーが訊く。
「うん……青い島の絵だよ」
「きっと神秘的な感じなんでしょうね。でもその島は、どこかに存在するんじゃないかな」