二人の公園
「はい……クリス?」
気配だけで、ジェニーはかけてきたのがクリスだとわかってくれた。
「うん。いま大丈夫?」
「ええ。絵が描き終わったの? 私も練習が終わったところ」
「そう」
二人はいつも、互いのタイミングがよかった。とても親しい相手同士というのはなにもかもの息が合ってくるものなのかも知れない。
「食事に行く?」
ジェニーが訊く。
「うん。ホリーおばさんのところがいいな」
「そうね。私もそこがいい」
クリスは、笑った。
「じゃあ、いつもの場所で」
「わかった」
通話を終えて、メディアフォンを元の場所にもどすと、クリスは白いVネックのTシャツに青いカーディガンをはおって、家を出た。
二人のいつもの待ち合わせ場所は、百メートルほど離れた二人の家の中間の、小さな公園だった。
そこは、青いLEDライトで夜も明るい。
小さな噴水が中央にあり、白いベンチが三つおかれ、ささやかな花壇にいつもかわいらしい花が咲いている、緑にかこまれた公園だ。
寂しげで清潔なこの公園に好んで訪れる者は少ない。
大抵の人間は、明るく派手でにぎやかなテーマパークのような場所が好きだ。
二人は、そんな騒々しい場所は大嫌いだった。