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ジェニーの声
薄れてゆく意識のなか、クリスはジェニーの声を聴いた……
「ごめんね、クリス……私は、死んだみたい。大きな地震が来て近くの建物が崩れて、下敷きになったの……」
「ジェニー……」
クリスのほおに、冷たい涙が流れる。
「怖かったでしょう……痛かったでしょう……」
ジェニーは、ほほ笑んだ。
「寂しかったわ……」
「ジェニー……」
クリスの涙は、止まらない。
「クリス……ひとりにして、ごめんね……ごめんね……」
ジェニーの気配が、薄れてゆく。
「ジェニー……! 待って……!」
クリスは、自分の叫び声で目を醒ました。
クリスが横たわっていた床に、クリスの涙が水たまりになっていた。
「ジェニー……!」
寂しさのあまり、クリスは全身を小さく縮めて、また泣いた。
泣いても泣いても、ジェニーを失った哀しみに、やはり涙は止まらなかった。




