絵の完成
一週間後、クリスの青い島の絵が完成した。
クリスがそれをジェニーに電話すると、ジェニーがクリスの家まで来てくれた。
「メリークリスマス、クリス」
そう言いながら、ジェニーは青い包装紙に銀のリボンの包みをさし出した。
「えっ?」
ジェニーは、ふふっと笑った。
「クリスマスには、まだ早いけど、シャツができたの」
「えっ、もうできたの? どうもありがとう」
クリスは、大事そうに包みを受け取った。
クリスの絵を見て、ジェニーは
「きれいな青……」
と息を止めた。
「吸い込まれそう……」
そうつぶやいて絵に見入るジェニーの魂は、ことば通り絵の世界に没入していた。
「なんだかすごく癒された……心身が清められた感じがする」
絵をしばらく見たあと、ジェニーは心から言った。
「そう? よかった。ありがとう」
クリスは、にっこり笑った。
「クリスの絵、前から素晴らしいけど、さらに描くごとに素敵になってく気がする……」
怖いくらい、ということばをジェニーは慎んだ。
「そう? ありがとう。もしかしたら……ジェニーの演奏も、そうなんじゃないかな」
生きれば生きるほどつらい思いが増す彼らにとって、その表現作はどうしても研ぎ澄まされてゆく。
「お茶を入れよう。なにか飲みたいものはある?」
「オレンジティがいいな」
ジェニーはほほ笑んだ。
「わかった」
クリスも、にっこりほほ笑んだ。
クリスは、ティーポットのなかに茶葉とスライスしたオレンジを入れて、オレンジティを作った。