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自殺IQ  作者: 星いちる
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クリスの絵

 ニュースの見出しの最後のほうに、昨日の自殺IQの持ち主の死亡者数が出ていた。

 世界で百二十九人だった。

 彼らの多くも特異の才能をもつ若者たちで、一人ひとりへの哀悼のコメントが寄せられていた。

 九歳にして新型ウイルスの抗体を研究していた子もいた。

 十二歳で異星人との言語翻訳の研究をしていた子もいた。

 彼らは生きている苦しさを抱えながら一生懸命自分たちの仕事に務めていたが、とうとう耐え切れなくなってしまった子たちだった。

 クリスは、彼らを悼んだ。

 彼らを惜しむ人々はいるが、自殺IQの者のつらさをわかる人がどれほどいるだろう……

 クリスは、アトリエに行って、描きかけの青い島の絵を見た。

 絵を描いているたびに、この絵を完成させることができるのだろうかといつも思う。

 絵を描き上げると、あと何枚絵を描けるのだろうと思う。

 生きているうちにできる限りのことはしたいとクリスは思っていた。

 しかし生きているただそれだけのことも常に不可能性と戦いつづけることに他ならなかった。

 クリスは、絵の前のイスに腰かけ、パレットに絵の具を出すと、絵のつづきを描きはじめた。

 心にうかぶイメージを、キャンバスの上に丁寧に表してゆく。

 そのイメージとは、ジェニーの言う通り、どこかにある場所の幻視なのかも知れなかった。

 絵は、イメージに忠実にそのまま現出されたものではない。

 そのなかに、クリスという個人の思いや心や魂が混入して、クリスという人間が描いた絵になるのだ。

 ただきれいなだけの絵に価値はない。

 人は絵のなかに描いた人の魂を見るのだ。

 クリスは極限状態の魂を込めて絵を描いている。

 人はそこに高い価値を見出すのだろう。

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